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4章6節

 そこから少し進むと、ゴブリンが1匹現れた。


「雷撃」


 エリカが詠唱すると、魔法陣から何かが高速で飛んでいった。

 それがぶつかったゴブリンは、後ろへ倒れた。だが、光らず、石も落ちなかった。


「……実は雷撃って、ほとんど攻撃力がないんだ。せいぜい気を失わせる程度だな」

「だから、全然使ってなかったんですか。というか、さっき飛んでいったのって何ですか!?」

「めっちゃ細くした雷球(サンダー・ボール)だな」


 緋音はエリカの言ったことが分からず、首を傾げる。

 それを見たエリカは雷撃について説明した。


「雷撃って、元は雷球なんだ。雷球を細めて、速度を速くしたのが雷撃。……独創(オリジナル)魔法って、いちから作るだけじゃなくて、すでにある魔法を変えて作ったのもあるんだ」

「なるほど!」

「速度を速くした変わりに攻撃力がほとんどなくなったから、ボス戦とかの足止めで使ってるんだ」



 ◇◇◇◇



 緋音たちは、10階層まで到達し、フロアボスがいる部屋の扉の前で立ち止まった。


「ここのボスはボアだ。動きが素早いから気をつけろよ」


 扉を開けて中に入る。

 中央に巨大なボアがいるが、すぐに動き出した。

 ロカが全体に身体強化(エンハンス)をかける。

 レニアがボアの片足を矢で射抜き、エリカがそこに雷撃で追撃をかける。

 ケイが一瞬でボアに近づき、もう片方の足を切り落とした。


「アカネ!」


 ベルキアは最後の一撃を緋音に託した。

 その期待に応えるように、緋音は杖を構える。


火球(ファイア・ボール)


 ボアの頭上に魔法陣が展開。

 そこから現れた火球により、ボアは焼かれていく。

 やがて、石を落として消えた。


「やったな、アカネ。フロアボスの討伐だ!」

「ありがとうございます!」

「宝箱開けてみな」


 緋音が宝箱を開けると、中から1本の短剣が出てきた。


「前に来たときより、良いアイテム……」

「前は何だったんですか?」


 4人は顔を見合わせ、声を揃えて言った。


「何の装飾もない錆びた短剣」


 緋音は手の中にある短剣を見る。

 宝石のように輝く、小さな赤い魔石が付いた短剣。刃が緋音の顔を写している。


「それ、アカネが貰って良いぞ。アカネが最後にボアを倒したからな」


 ケイがそう言い、他の3人も頷く。

 それを見て、緋音は魔法の鞄(マジック・バッグ)に大切にしまった。



 ◇◇◇◇



「さてと、そろそろ街に帰ろうか」


 ダンジョンの中は常に薄暗く、時間の進みが分かりにくい。


「アカネ。ここに魔力を流してみな」


 下層へと続く扉の前でエリカが手で示したところには、魔法陣が刻まれた石板があった。

 そこに緋音が魔力を流すと、赤く、淡く光った。


「ダンジョンの入り口に同じ石板があって、魔力を流すと転移される。ダンジョン内での階層転移は、セーフエリアからしかできないからな」

「転移は魔力登録した階層だけだからね」

「ダンジョンって、不思議なことだらけなんですねぇ」


 緋音のその様子に、ベルキアはつい微笑ましくなった。


「次は『ダンジョンから出る』って思いながら、魔力を流してみな」


 全員が魔法陣に触れ、魔力を流す。

 魔法陣が、赤色、茶色、緑色、黄色、水色に光った。


 目を開けると、緋音たちはダンジョンの入り口にいた。

 見上げると、空は夕日に染められていた。

お読みいただきありがとうございます。

次回更新は7月4日(土)です。

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