4章7節
緋音たちは街に入り、ギルドに帰る。
「よぉ、ケイの兄貴。今帰りか?」
「あぁ。アカネとダンジョンに行ってたんだ」
ギルドに入ると、冒険者が話しかけてきた。
緋音は彼と話したことなかったが、いつも仲間たちと一緒にギルドにいる。
「良いなぁ。おれも行きたかったなぁ」
「アカネと一緒ってことは、1階層からか?」
「うん。久しぶりの上層階だったよ」
「なら、ロカ姉さんは今回出番なしだったわけっすか」
「たしかに回復師としての出番はありませんでしたけど、その分、後方支援しましたからね」
「今日は10階層まで行ったんだが、フロアボスのところでアカネが魔石付きの短剣を引き当てたぞ」
なぁ、とエリカに話しかけられ、緋音は魔法の鞄から短剣を出して見せた。
「まじかよ!」
「そんな上層階で出たのいつぶりだ!?」
短剣を見た冒険者たちが騒ぎだす。
「というわけで、俺たちは今から短剣と魔石の鑑定をしてもらうから、また後でな」
ケイがそう言い、緋音たちはカウンターへ行った。
「さて、短剣を見せてもらおうか」
先ほどの会話を聞いていたらしいカウンターにいる男性に、緋音は短剣を渡す。
「これは……火の魔石だな。しかも、恐ろしく純度が高い」
男性は短剣を様々な角度から見ながら言う。
「光も綺麗に反射してる……刃自体の切れ味も鋭いな……」
「この短剣って、そんなに凄いんですか?」
みんなが凄いと言うが、緋音にはいまいち分からないため、尋ねた。
「あぁ。この切れ味だけでも十分凄いんだが、それに加えてこの高純度の魔石だ。もちろん魔石付きの短剣なんてどこにでもあるが、これはダンジョンの10階層で出るような代物じゃねぇ。これみたいに魔石が付いた武器は、その魔石の効果を武器に付与できるんだ。例えば、これを使えば魔法を使わなくても、火を使ったみたいに焼き切れるんだ。どうだ、凄いだろ」
男性は一息に言うと、短剣を緋音に返した。
「これ、大事に持っとけよ」
男性のその言葉に、緋音は頷く。
「よし、次だ。今回の魔石はどんなのだ?」
「これだ」
緋音たちはそれぞれの魔法の鞄から魔石を取り出した。
「こっちはいつも通りだな。……大きさも重さも異常なし」
「それじゃあ、今回もオレットさん行きだな」
「魔石はギルドで買い取らないんですか?」
「未精製じゃ、うちでは何もできねぇからな。それに、オレットに渡せば上手いこと使ってくれる」
お前も知ってるだろ、とでも言うように男性は緋音を見た。
緋音は魔法の鞄に触れる。その中にある、丸い魔石の付いた杖。
なるほどこれを作った彼ならば、扱いこなすだろう。
◇◇◇◇
緋音たちは、受付カウンターへと移動した。
カウンターには、フィラがいた。
「ダンジョンでの討伐ですね。こちらにカードをかざしてください」
水晶にカードをかざすと、いつもと変わらず淡く光った。
カードをしまってから、緋音はフィラに尋ねた。
「合宿って、まだ申し込めますか?」
「できますよ。参加しますか?」
「はい、お願いします!」
「では、こちらの水晶にカードをかざしてください」
フィラは、カウンターの下から小さな水晶を取り出した。
緋音がかざすと、今までと違い、蒼く光った。
「参加申し込み完了です。詳しい日程などは、こちらを見てください。当日はここ、ギルドに集合です」
フィラは緋音に、合宿について書かれた紙を渡した。
「なんだ、アカネ。合宿に参加するのか」
「ティア支部長!」
フィラが声をかけたのは、その長い銀髪を揺らしながら歩いてくるフォティニアだった。
「ティアが下りてくるなんて、珍しいな。……もしかして、仕事から逃げてきたのか」
「そんなわけあるか。一段落したから、少し様子を見に来ただけだ。そしたら、面白そうな話が聞こえたのでな」
鑑定場から先ほどの男性がやって来て、親しげに話し始めた。
フォティニアが緋音の方へと向いた。
「合宿参加者の職業は様々だ。参加者たちの動きをよく見て、そこから、戦い方の幅を広げてみると良い」
フォティニアの経験談のような口ぶりに、緋音は大きく頷いた。
◇◇◇◇
それから数日が過ぎ、ついに合宿の日がやって来た。
エリカは「エリカの姉貴」、レニアは「レニア兄さん」と呼ばれています。
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これにて、1幕―始まりの街編―は完結です。
次回更新は7月11日(土)です。
1幕キャラ紹介をします。
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