4章5節
「魔法の実践は後で、通路でするとして……アカネはずっとストリにいるのか?」
「……いえ。もう少ししたら『リケミナ』に行こうかなって思ってます」
「リケミナと言えば『ナルの森』だな」
「ナルの森は、リベア様が冒険者になって初めて戦闘をした場所ですよ!」
エリカの質問に答えていると、いつの間にか近くに来ていたロカが、先ほどのテンションのまま言った。
「アカネなら大丈夫だと思うが、そこは『魔の森』って言われてるから、気をつけろよ」
「魔の森……?」
「ナルの森だと、魔物のランクがひとつ上がるんだ。だから、スライムもゴブリンも強くなってる」
「ランクが上がる!? そんなことあるんだ……ありがとうございます! 気をつけます!」
ケイが教えてくれたことに、緋音はびっくりする。
「それで、リケミナにはどこを通って行くの?」
「……どうやって行こう」
レニアに聞かれるが、考えてなかった、と緋音は固まる。
「ま、まあ、王都かモクレンを通れば行けるよ」
「……『ティオの森』でしたっけ? そこは通れないんですか?」
緋音は地図を思い出しながら聞く。
「あそこは王立学院の森だよ。だから、学院関係者以外は通れないんだ」
「王立学院……合同合宿が懐かしいですねぇ」
「合同合宿?」
緋音が疑問を口にすると、レニアが答えた。
「王立学院の生徒と冒険者が一緒に、合宿形式で訓練をするんだよ」
「この合宿はリベア様が始めたのですよ!」
「そういや、もうすぐ合宿の時期だな」
「合宿、か……行ってみたいなぁ」
「たしか、まだ参加者募集中だったはずだから、行ってみたらどうだ?」
緋音が小さく言ったことを聞きつけたケイが、教えてくれる。
「ギルドに言ったら、参加の申し込みができるぞ」
「帰ったら、早速申し込みます!」
◇◇◇◇
「さてと、そろそろ次の階層に行こうか」
ここがダンジョンの中だと忘れそうなほどに、すっかり会話に花が咲いていたが、ケイのその言葉で思い出した。
十分な休息も取れたので、緋音とベルキアはセーフエリアを出て、階段を下りる。
ブーツが石段を踏む音を反響させながら、エリカが隣を歩く緋音に話しかけた。
「火刃か火壁、どっちを先に試したい?」
「ん〜、火刃にします! 2つとも終わったら、エリカさんの雷撃が見たいです!」
「良いぜ。それと、今から魔法のイメージをしときな」
「分かりました!」
緋音は火でできた刃と壁をイメージする。
「2回角を曲がったら、ウルフが3匹いるよ」
変わらず魔力探知を続けていたレニアが魔物を見つけ、教えてくれる。
やがて、黒がかった銀色の毛をなびかせた狼が姿を現した。
「よし、アカネ。やってみようか」
「はい!」
「火刃」
緋音の詠唱とともに、刀身のような細長い火が現れた。
いつかに見たアニメを思い出しながら、杖を剣のように両手で握り、動かす。
杖と同じ動きをする火刃は、ウルフの首を焼き切った。
そのまま反対に動かし、2匹目の首も両断。
最後の1匹は、垂直に下ろされた刃に胴を切られた。
ウルフは光に包まれて、石を落として消えた。
「……やっぱり、簡単にできたな。よし、次は火壁だ。ってもこれは、あんまり攻撃向きじゃないんだよなぁ」
「それじゃあ、近くに魔物いないからここで試す?」
「そうするか。アカネ、それで良いか?」
「良いですよ!」
レニアの探知で周囲に魔物がいないことを確認して、緋音は火壁を試す。
「火壁」
緋音が詠唱すると、通路を塞ぐ壁が現れた。それは、緋音たちの少し前に展開されたにもかかわらず、あまり熱さを感じることはない。
「壁型の魔法は、ほとんど足止めとかの防御用に使われてるんだ」
「そうなんだ……」
「さてと、次はあたしの雷撃だな」
お読みいただきありがとうございます。
次回更新は6月27日(土)です。
よろしければ、ブクマと評価お願いします。




