4章4節
「ここが、セーフエリア……さっきまでと全然違う」
その開けた場所は、壁が仄かに光っていて明るい。
「さてと、ここで昼飯にするか」
段差になっているところに腰掛け、それぞれが魔法の鞄から昼食のサンドウィッチを出す。
それを見て、緋音は尋ねる。
「皆さんもサンドウィッチなんですね」
「これだと手が汚れないからな」
「しかもロカの手作りだから、美味しいんだよ」
ケイが答え、レニアも一口齧りながら言った。
「ほら、ひとつ食べてみな」
「ありがとうございます!」
緋音は嬉しそうにエリカから受け取って食べる。
「おいし〜い!!」
思わず笑顔になる、そんな味がした。
◇◇◇◇
「アカネって火球以外の魔法は使わないのか?」
「火球以外の魔法があるんですか!?」
「あるに決まってるだろ……」
エリカがどこか呆れ気味に言った。
「……アカネってある意味大物かもしれないね」
「……そうですね」
レニアとロカが何やら呟いている。その横でケイも頷く。
「でも、エリカさんも雷球しか使ってませんよね?」
「あたしはあんまり器用じゃないからな。それでも、独創魔法の抵抗と雷撃は使えるからな」
「独創魔法……?」
「……これも知らないのか。独創魔法ってのは、それぞれが自分で作った魔法のことだ。抵抗と魔力探知も独創魔法だけど、便利だからって広まって、今じゃあちこちで使われてるな」
隣で話を聞いていたロカが身を乗り出してきた。
「独創魔法といえば、氷星のリベア様を忘れてはいけませんよ!」
ロカが桜色の瞳を輝かせながら言う。
「あの大小様々に展開された氷球。それを顔色ひとつ変えずに行える、圧倒的な魔力量。――それはまさに、空に煌めく星を操る氷の女王!!」
「えーっと、ロカさん……?」
見たことない様子のロカに困惑する緋音に、レニアが言う。
「ごめんね、びっくりしたよね。ロカはリベア様に憧れてるんだよ」
「あぁ、一目で良いから会ってみたかったです……」
「まぁ、ロカのことは置いといて。抵抗は使えたら便利だな」
「それってどんな魔法なんですか?」
ロカはそのままレニアに語っているが、構わずに2人は続ける。
「魔力を放出して、それを防御したい場所に集めるんだ。……実際にやってみるか。ケイ頼む」
ケイは鞘ごと剣を外し、上段に構える。それから、ゆっくりと振り下ろす。
「抵抗」
剣がエリカの頭の前で止まった。
ケイが動きを止めたからではない。何かに阻まれたように止まった。
「これが抵抗だ。アカネもやってみるか?」
「やりたいです!」
「いくぞ」
ケイが再び剣を振り下ろす。
緋音は両目を閉じて集中する。
(魔力を集める)
ゴン、と何かがぶつかった音がした。
目を開いてみると、剣が目の前で止まっている。
それを見てエリカが言う。
「……できちゃったな。なんだろ、あたしの常識が崩れていく……」
「俺もだ、エリカ」
当の緋音は何も知らずに、魔法が使えたことを喜んでいる。
「よし、アカネ。他の魔法もやってみようか!」
「はい、エリカさん!」
「まず簡単なのは……火刃と火壁だな」
「この2つも独創魔法なんですか」
「いや、これは違う」
「……独創魔法と他の魔法って何が違うんですか?」
緋音はふと気になり、質問する。
だが、聞かれたエリカは、少し答えに詰まった様子を見せた。
それから、あたし自身よく分かってないが、と前置きしてから言う。
「独創魔法は自分で作ってるから、誰かに教えないかぎり自分以外は使えなくて、他の魔法は……属性と職業によって、使える魔法が違うんだ」
例えば、とケイが続けた。
「俺は剣士だから、雷球も火球も使えない。だが、アカネは火属性の魔法使いだから火球を使えて、エリカは雷属性で雷球が使える」
「教えられた独創魔法は誰でも使えたり、属性によって使えなかったりもするんだよ」
ロカから逃げてきたレニアが説明を加えた。
(つまりは、独創魔法は自分だけの特別な魔法。他の魔法は一般的な魔法、みたいなことかな)
「今の説明で分かったか?」
「はい、なんとなく分かったと思います! そういえば、雷撃ってエリカさんの独創魔法なんですか?」
「あぁ、これはあたしが作った。……後で見るか?」
「見たいです!」
エリカのその言葉に、緋音はぱっと笑顔になる。
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次回更新は6月20日(土)です。
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