4章3節
「アカネは魔法の発動も速い」
「エリカさんの方が絶対に速いです!」
エリカがそう言うが、緋音はすかさず否定する。
「……アカネ。もうちょっと自分の実力を認めたらどうだ」
「俺でもアカネが凄いってことは分かるからな」
ケイが言い、そこにレニアが口を挟む。
「アカネは魔法を感覚で使うから、気づいてないだけかもね」
「それじゃあ、2人が同時に魔法を使えば分かるんじゃないですか」
ロカの提案にエリカは頷いた。そして、緋音の方を向いた。
「じゃあ、壁に向かって魔法を放つ、で良いか?」
「はい!」
2人は壁の前に立って、それぞれ杖を構える。
「それと、条件を揃えるために魔法陣の移動は無しだ」
「分かりました。それじゃあ、いきますよ!」
「火球」「雷球」
2人が同時に詠唱。
そして――緋音の方が僅かに速く、魔法陣が展開された。
緋音の火球が壁にぶつかり、数瞬遅れてエリカの雷球が到達。
「ほらな。アカネの方が速いだろ」
「……そうですね」
緋音はようやく、魔法発動が速いことを認めた。
「エリカさんの雷球、壁に向かって飛んでるときのスピード速くないですか」
「確かにそのスピードは、あたしの方が速いかもな。だから、そこはアカネも慣れが必要だな」
◇◇◇◇
緋音とベルキアはダンジョン内を順調に進んでいった。
そして、大きな扉の前で止まった。
「この扉の奥にはボスがいる。……アカネが倒してみるか?」
「良いんですか!?」
「もちろんだ」
緋音は扉に手をかけ押すと、ゴゴゴと音を響かせながら開いた。
部屋の中に入ると、中央にいるゴブリン――緋音の身長を優に超す大きさだ――がぎこちなく動き出した。
「ボスは動きが鈍いときに攻撃、だからな!」
扉の近くにいるケイが声をかける。
緋音は杖を構え、火をイメージする。
「火球」
ゴブリンの頭上に展開された魔法陣から火球が出現。そのままゴブリンへと落ちていく。
火球がぶつかったゴブリンは光に包まれ、石を落として消えた。
何かが擦れるような音がして辺りをみると、入ってきた扉と反対側の扉が勝手に開いていた。
そして、扉の前にひとつの宝箱が現れていた。
「開けてみな」
緋音は宝箱の前に行き、蓋を開ける。
中には液体の入った小さな瓶があった。
「これは……魔力回復ポーションだな」
「こんな量じゃ全然回復できないね」
左右から覗き込んで、ケイとレニアが言った。
「やっぱ1階層はこんなもんか」
「最初の方の階層だと、良いアイテムは出ないんですか?」
「そうなんですよ……。でも、下に行くほどレアアイテムが出てきますよ」
エリカとロカも小瓶を見ながら言った。
緋音はポーションを魔法の鞄に入れてから聞く。
「ダンジョンの魔物って倒したら石になるんですか?」
「あぁ、魔石を落として、死体はダンジョンに吸収される。その石をギルドが鑑定して、ランクに反映されるんだ」
ケイが答え、それに続けてエリカも言う。
「魔石は加工されて、色んな所で使われてるんだ。例えば、その杖とかな」
「これが……」
緋音は杖を見る。変わらず燦然と煌めく炎の石。
それを見ながらロカが言う。
「でこぼこの石がこんなにも綺麗になるなんて不思議ですよね」
「ちなみに下層の魔石ほど、魔力との親和性が良いんだよ」
レニアも説明を加えた。
ケイが全員を見回して言う。
「それじゃあ、次の階層に行こうか」
開かれた扉の先にある階段を降りる。
その後も順調に進み、5階層のセーフエリアまで到達した。
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次回更新は6月13日(土)です。
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