4章2節
まず最初に、レニアが弓に矢をつがえた。
ケイが剣を抜き走り出すと同時に、矢を放つ。
ロカが杖を地面に打ち付け、ケイが1歩目を踏み込んだタイミングで彼の足元に魔法陣を展開。
「身体強化」
ケイはそのままスピードを加速させ、先頭にいたゴブリンの首を刎ねた。
少し遅れて、レニアの放った矢が別のゴブリンの首へ命中。
2体は倒れる直前に光り、その場に小さな石を落として消えた。
それを確認する間もなく、エリカが片手に杖を構える。
「雷球」
詠唱と共に杖の前に魔法陣が現れ、雷球が飛んで行く。
雷球が直撃したゴブリンは同じように消え、石が残った。
ケイが更に踏み込み、最後のゴブリンの胴を薙ぎ払った。
戦闘後の一瞬の静寂に、石が地面に落ちる、カランという音が響く。
「……凄い……一瞬で終わった……」
彼らの戦闘を1歩下がった所で見ていた緋音は、その圧巻を前に感心した。
「――それより、レニアさん矢をどこから出したんですか!? ロカさんは身体強化を自分以外にかけてたし、エリカさんは魔法発動がめっちゃ速い! ケイさんなんか、最後の攻撃ほとんど見てなかったし!!」
「落ち着け、アカネ」
一気にまくし立てる緋音をケイは落ち着かせる。
「ます、レニアの矢は指輪型の魔法の鞄からだ」
レニアが右手の中指に着けた指輪から矢を出す。
「身体強化は自分にしかかけられない訳じゃない。それに、俺の最後の攻撃は横目で見てただけだ」
「魔法発動の速さはイメージと慣れだな」
ケイに続き、エリカも言った。
「次はアカネの戦闘を見せてくれ」
「丁度良く、そこの角を曲がった所にスライムが1匹いるよ」
◇◇◇◇
角を曲がると、レニアの探知通りにスライムが1匹いた。
緋音は魔法の鞄から杖を取り出して構える。
「それじゃあ、いきます!」
「火球」
魔法陣がスライムの頭上に展開される。
そこから火球が現れ、スライムへと落ちていく。
火球はスライムを蒸発させながら近づき、ぶつかった瞬間に光り、石を残して消えた。
「…………」
「どうかしましたか?」
緋音はベルキアが何も言わないのを不思議に思って尋ねた。
「……いや、アカネが強いのは知ってたけど、ここまで強いとは思わなかっただけだ」
「いやいや、私なんか強くないですよ!」
ケイがそう言うので、緋音は慌てて否定する。
「アカネは強い。まず、魔力消費量だ。ほとんど使ってないだろ?」
エリカに言われ、緋音はステータスを確認する。
「えっと、消費量は3です」
「あたしは杖有りで雷球1発に魔力を5使う。杖無しだと15だ。アカネの杖無しは?」
「たしか……10だったと思います」
「もうその時点でおかしいんだよ……」
緋音はエリカの言うことが分からず、首を傾げる。
「だいたい球型の魔法の魔力消費量は、杖無しで1発につき15から20だ。ちなみにこの魔法は、属性による差は無いからな」
前にも言ったが、とエリカは続ける。
「杖を使えば消費量は半分になる。石と相性が良ければ、もっと少ない。つまり、どういう事か分かるな?」
「私は石との相性が良いって事ですか……?」
「そう! それも、めちゃくちゃ良い! まあ、杖無しでそれだけなら、アカネは元から魔力操作が上手いのかもな」
「そうなんですか……?」
エリカにそう言われるが、実感が無い緋音は首を傾げたままだ。
そういえば、と思い出したように尋ねる。
「さっき、魔法発動の速さはイメージと慣れって言ってましたけど、それってどういう事ですか?」
「まず、魔法の詠唱って何の為にするか分かるか?」
聞かれ、緋音はしばらく考える。
「……魔法を発動させるトリガーですか?」
「近いけど、ちょっと違うな。魔法は無詠唱でも発動できるんだ」
そう言うと、エリカは指先に小さな火を灯した。
「これは燭光だが、小さな蝋燭の火ってすぐにイメージできるだろ?」
緋音は頷く。
それを見て、エリカは火を消してから言う。
「なら、もっと大きな火は?」
「大きな火……」
緋音はイメージしてみるが、実際に見たことが無いので難しい。
「難しいだろ。そこで、詠唱の出番だ。確かにアカネの言った通りトリガーになるが、発動させる魔法のイメージの手助けでもあるんだ」
そこでエリカはもう一度、燭光を出す。
「だから、イメージさえできていれば、無詠唱でも発動できて、それが鮮明であるほどに速くなる」
「じゃあ、そのイメージをすぐにできるまで魔法を使い、慣れるってことですか?」
「そういうことだ。慣れる為に先に進もう……と言いたい所だが」
エリカはそこで言葉を区切り、スライムのいた辺りを見てから言った。
「アカネを強いと思った理由2つ目だ」
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次回更新は6月6日(土)です。
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