決着
レオン視点
「そんなっ⁉ 魔法であたしが後れを取るっていうの⁉」
「セーラさん、落ち着いて下さい。いつも通りにすれば大丈夫ですから‼」
俺は「砂漠の狼」の後衛二人を相手にしている。それも魔法「オンリー」でだ。
いやなに、ふと思いついたのだよ。俺の「魔法使い」としての力量はどの位だろう? とね。
そこで、この二人に実験台になってもらおうという訳だ。
「この程度、ほんの小手調べですよ?」
小手調べ……は言い過ぎかもしれんが、雷魔法の基本とも言える『招雷撃』を連続で放っているだけに過ぎん。
それだけなのだが、それでも彼女達は避けるので必死になっている。どうやら彼女達は、近接戦闘が苦手のご様子。それとも近接戦闘の訓練を積んでいないだけか?
「このぉっ!」
セーラが時折、苦し紛れに「火球」の魔法をこちらに放ってくるが、無理な体勢で放っている為、威力・速度・命中精度、いずれも低レベルだ。この程度なら、愛槍を使うまでもない。回避だけで十分対処可能だな。
「くっ……あたし達には槍を使う必要も無いっていうつもり? 魔法だけで戦ってさっ!」
「セーラさん、落ち着いて!」
こう見てみると、セーラとミランダの性格の違いが良く分かるな。
直情気味なセーラと、冷静なミランダ。中々良いコンビではないか。
それはそれとして、何やらセーラが勘違いをしているみたいだし、先ずはそこを訂正しておこうか。
「確かに私は槍を使い前線に立ちますが、本職はどちらかと言うと「魔法使い」ですよ?」
「「えっ?」」
統計を取っている訳ではないので詳しい数は分からんが、前線で槍を振るうよりも中衛・後衛で魔法を放っている方が多いのではないのかな?
まあそれに関しては、今議論する必要はないか。では、彼女らの実力も分かったので、そろそろ終いとするか。
「これは防げますか? 『雷追球』‼」
頭上に四つの「雷球」を発現させ、目の前の二人へと解き放つ!
飛翔してくる雷球を見て、セーラとミランダの二人は目の前に魔法障壁を展開する。咄嗟の判断力は素晴らしい。だが、それは悪手だぞ?
雷球は魔法障壁に当たる寸前で進路を変更し、二人の背面へと回り込んだ。
「なっ⁉」
ミランダが慌てて背後に振り向こうとしたが、時すでに遅し。
背後から雷球が強襲し、セーラとミランダに直撃した。
「「っ⁉」」
雷球をその身に受けた二人は、悲鳴を上げる事も出来ずに地面に倒れ伏した。しっかりと気絶しているな。
ふむ、こちらは片付いたか。さて、向こうはどうなっているかな?
おや? 向こうも既に決着が付いていたか。フリッツとマイクの二人も、並んで地面に倒れ伏していた。あちらも気絶しているか。
「お疲れ様でした。そちらはどうでしたか? レオン殿」
「そうですね……そこそこ、と言ったところですかね。そちらは?」
「こちらも、そこそこ……ですかね」
手合せを終え、ルセリアと合流する。そこで今回の手合わせについての意見を交換することに。
結論としては、それなりの実力があり、今後の見込みあり。であった。
その後は、ほぼ雑談となったが……十分くらいかな? お喋りをしていると「砂漠の狼」の面々が意識を取り戻し、起き上がるのが見えた。
意識を取り戻した「砂漠の狼」達は……まあ、一言で言うと「お通夜」状態だな。手合わせ前の威勢の良さは完全に消え失せている。
「お疲れ様でした。怪我等は大丈夫ですか?」
「……ああ、お陰さまで、大した怪我はしていない」
俺に返答したのは、フリッツではなくマイクだった。フリッツは、先程から俯いたまま微動だにしていない。先程の戦闘の結末にショックを受けているようだな。
「それは良かったです」
当初の目的も達成できた事だし、そろそろお暇するかな……。
「……君は、Aランクなんだよな?」
その時だった。目が覚めてから一言も口にしていなかったフリッツが口を開いたのは。
「ええ、そうですが?」
「……同じAランクで、どうしてこうも差があるんだ?」
ああ、その事か。
「それは、私が冒険者登録をしてから日が浅いからですね。半年くらい前ですかね? 登録したのは」
俺の言葉に、「砂漠の狼」の四人が唖然とした顔をして俺を見た。俺の言葉の「真意」を理解したのだろう。時間さえあれば、俺のランクが『S』に届くのだと。
「……世界は……広いな……」
フリッツがそう小さく呟くと、ゆったりとした足取りで、ギルド支部へと歩いていったのだった。
「済まないな。アイツは故郷の国では負け知らずでな……周りからは「天才」だなんだと言われて、あっという間にAランクまで進んだんだ。その所為で、随分と「鼻」が伸びちまったがね」
まあ、良くある話だな。それが彼にとって良い事なのかは、別の話だが……。
「それで、流石にこのままではマズいと思って、この町に来る事にしたんだ。まあ、当の本人は渋っていたけどな」
典型的な「井の中の蛙」だな。それも仕方ないか。彼に「才能」があったのは事実だからな。
「新しく『特級ダンジョン』が出来たってのは風の噂で聞いてな。そこならば強い奴が集まるだろうと踏んだわけだ」
その強者をフリッツにぶつけようと考えたのか。
「だが……まさか『Sランク』が居るなんてな。そこは予想外だったがよ、はっはっは!」
そう言いながら、高らかに笑うマイクだった。ふむ、思った以上に話しやすい男ではないか。
「そうですか。それにしてもフリッツさんは大丈夫でしょうか? 少々やり過ぎたかも……」
「なぁに、あれくらいで丁度良かったのさ。それに、アイツはこれで潰れるタマじゃねぇよ」
このマイクの言葉を聞き、優しい笑顔で頷くセーラとミランダ。ふふふ、信頼されているな。
「二人には世話になったな。オレ達はしばらくの間この町にいるつもりだ。何かあれば声を掛けてくれ、喜んで力になるからよ」
ふむ、噂のAランク冒険者にちょっかいをかけたら、何故か感謝されたでござる……といった感じか。
俺としては感謝される謂れはないのだが……まあ、他者の好意は受け取るべきだろう。
俺とルセリアがマイクと握手を交わすと、三人はフリッツの後を追う様に、ギルドへと向かったのだった。
「さて、ルセリア殿はこの後どうなさいますか?」
「自分は練習場に残りますよ。何人かから技術指導をして欲しいとの嘆願を受けまして」
そう言われ周りを見渡して見ると、こちらを見ている冒険者がちらほらと。成程、彼等か。
「そうですか。私は家に帰ろうと思います。それではまた」
最後にルセリアと別れの挨拶をして、俺は我が家へと帰る事にした。うん、今日は色々と収穫のあった良い一日だったな。




