目指すは『北』
さて……次は何処にいこうかな? そうだなぁ……ギルドにでも寄ってみるか。
ふらりと立ち寄ったギルドだが、中は閑散としているな。それはそうか。今の時刻は昼を過ぎた辺りだからな。皆仕事に出掛けているのだろう。
少し前までは、昼間から酒浸りの阿呆がそれなりに居たのだが……今は大分減ってきた。
まあ、今やこのギルドは、周辺国で最も注目されている場所だ。理由は勿論、「特級ダンジョン」だよ。
アレのお陰で、周辺国から優秀な冒険者が集まってきているからな。昼から飲んだくれているような輩は、早々に居なくなったよ。彼等のような優秀な冒険者に囲まれれば、居心地も悪くなるだろうさ。
極めつけは、世界最強の呼び声高い「S級冒険者」様が来訪した事だな。彼女達がギルド内に姿を現すと、場の空気がピリッとと引き締まる感じがするからな。
あの空気に耐えられる不良冒険者は皆無さ。
折角ここまで来たのだ、何か有益な情報は無いものか。俺は丁度良く手の空いていた受付嬢のハンナに声を掛けた。
「そうですね……ここ最近の事ですと、『特級ダンジョン』の噂を聞きつけて、遠くの国からも冒険者がやって来ていますね」
との事らしい。ハンナ曰く、聞いたことも無い国の冒険者も居るみたいだ。提出されたギルドカードに書いてあったそう。
それにしても、改めて思う。ギルドカードとは摩訶不思議な技術だ……とね。遠く離れた地でも効力を発揮するのだから。まあ、その恩恵を受けた俺が言うのも何だがね。アークレント王国では本当に助かったよ。
その遠い国からの来訪者達は、ギルドの許可を得て『特級ダンジョン』に挑戦している最中らしい。一目見てみたかったのだが、残念だ。
ついでだ、ギルドの訓練場も見て行こうかね。
訓練場では、数名の冒険者が鍛錬に精を出していた。その中に見知った顔を発見、声を掛けてみるか。
「調子はどうですか? ルセリア殿」
「これはレオン殿。調子は上々、と言ったところですね」
俺に気付いたルセリアは、笑顔で挨拶を返してきた。手には彼女の得物である「連節剣」が握られている。そして彼女の周囲には、大の字になって地面に倒れ伏している冒険者の姿が複数確認できるな。
「彼等の指導をしていたのですか?」
「ええ。「是非とも手合わせをお願いします」と言われてしまえば、断れませんからね」
そりゃあ「世界最強」と手合わせ出来る機会なんて、そうそうある訳ないからな。ここぞとばかりに申し込んでいるのだろう。
「そう言えば、遠い国からわざわざこの町に来た冒険者をご存じですか?」
「ああ……今朝、ギルドの入り口ですれ違いましたよ。そこで一言挨拶をしただけですが、中々に「デキる」方達でしたね」
ほう? ルセリアがそこまで言うとはね。ますます会ってみたくなったよ。
「朝にあった時、カルディオスのダンジョンに向かうと言っていましたね」
「それなら、明日にでも会えそうですね」
また明日も顔を出してみるか。そう言えば、
「メリッサさんが見当たらないのですが……」
「ああ、メリッサなら、王都に買い物に行っていますよ。以前、レオン殿に頂いた「チョコレート」を買いに行くとか」
メリッサは余程チョコレートを気に入ったのだな。チョコレートは、今だと王都にあるジャックの店でしか買えない。しかもとんでもない値段の超高級品なのだが……メリッサには関係ないか。S級冒険者の稼ぎなら、その程度は大した出費にもならんさ。
俺はルセリアに別れの挨拶をして、家に帰る事にした。今日も色々とあった一日だったな。明日もまた頑張ろう。
更に翌日。俺は今日も忙しく動き回る事になる。朝一でソニアを伴い、北のアークレント王国・プレイナールの町に向かった。
目的は、領主のグリーン男爵に会い「交易路」復活に向けての協議をする為だ。
何故、俺が外交官の真似事をしなければならないのか? こういったと事は、本来ならば賢者殿の仕事なのだが、あの方は今別件で忙しいのだ。
例の「魔石買い占め」の件を追っているそうで、とてもじゃないがこちらの件を担当する余力など皆無である。
世の中が平穏無事であるのならば、賢者殿の手が空いた時に手を付ければ良いのだが、今の情勢ではそんな悠長に構えている時間は無い。
仕方ない……これも「仕事」のうちだと割り切って頑張ろうか。




