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『嫁』が増えても変わらない日常

「リコリスであります。これから宜しくお願い致します」

『神域』から戻ってきた俺達。早速他の妻達にリコリスを紹介する為に、全員をリビングに集めた。

 リコリスの丁寧過ぎるあいさつを受け、妻達が大きな拍手で迎える。そしてそのまま流れる様に、中庭へと誘導されていくのであった。

「夕飯までには戻って来て下さいね」

 中庭へと向かう面々にそう一声かけるマリー。うむ、我が家は今日も平和だな……。

「では、俺達は夕飯の用意を始めようか」

 俺は残った妻達と一緒に夕飯の準備を始める。我が家は人数が多いからね。夕飯の準備も一苦労なのだよ。まあその分、手伝ってくれる人数も多いから、そこまでの重労働では無いのが、せめてもの救いだよ。

 そして夕飯の時間になり、中庭で「あれこれ」していた面子が戻ってきた。その表情は晴れやかだったな。

 全員が食卓に着くのを確認し、「いただきます」の掛け声を発する。すると皆も「いただきます」と返してきた。これも我が家で大分浸透してきたな。

「それで、中庭でのやり取りはどうだった? リコリス」

 和やかな雰囲気の夕食が終わり、食後のティータイムを満喫中のリコリスにそう質問を投げかけた。質問の内容は、先程中庭で行われた「あれこれ」についてだ。

「そうでありますな……皆様方の強さに、只々驚くばかりでありましたよ」

「あら、随分な謙遜ね。格闘戦ならオリーブにも引けを取ってなかったわよ?」

 そう言いながら、ヴェロニカがオリーブへと視線を向ける。

「そうですね。私は打撃が主な攻撃方法なので、リコリスさんの戦い方は非常に参考になりましたね」

 更に詳しい話を聞いてみるとだ、リコリスの近接戦闘技術レベルに関して、打撃は勿論の事、投げ技・寝技・締め技。果ては関節技まで使い熟しているそうだ。そしてここにナイフを使った戦闘や、銃を使った戦い方も出来る。

 うん、何だろう……この「段ボール」の中に隠れてスニーキングミッションをやりそうな感じは。まあ、頼もしいのは間違いないがね。

「では、武器はナイフと拳銃で良いのかな?」

「はい。色々と考えましたが、やはり慣れている物を使うのが良い、という考えに至った次第であります」

 ならば、後の細かい仕様についてはルピナと相談して決めようか。

 夕飯が終われば当然、次は風呂の時間だな。

「……物凄い広さでありますね……」

 リコリスがポカンと口を開けたまま、風呂場の入り口で呆然と立ち尽くしている。ふふふ、良いリアクションを見せてくれるじゃあないか。それでこそこの風呂場を造った甲斐があるというもの。

 風呂場の使い方は分かるとの事で、リコリスはテキパキと自身の体を洗い、ゆっくりと湯船に身体を沈めるのであった。

「ふぅ~……お風呂に入るなんて、随分と久しぶりでありますよ」

「それはどういう事だ?」

「小官が行う任務の特性上、頻繁にお風呂には入れないであります。それに任務が終わって基地に戻っても、直ぐに次の任務が待っているでありますから、シャワーを浴びるのが精々でありましたね」

 理由を聞けば納得しかない。潜入が主な任務の彼女が、のんびりと風呂に入れる訳が無い。そんなリコリスには、存分に風呂を漫喫して欲しいな。

 とは言え、いつまでも湯船に浸かっているのはNGだ。のぼせてしまうからな。何事も程々が一番良いのだよ。

「これからは何時でも自由に入れるんだ。今日の所は上がろう」

 風呂場を未練がましく眺めていたリコリスにそう告げると、彼女は驚きの表情の後に、満面の笑みとなった。そう、これからは君の好きな時に好きなだけ入って構わないのだからさ。

 そして……風呂の後に待っているのは、リコリスとの「初夜」だ。

 俺とリコリスは、寝室へと続く廊下を仲良く手を繋ぎながら歩く。ちなみに、二人共仲良く「全裸」だったりもする。

 現時点で彼女の持っている服(?)は、例のぴっちりスーツ一着しかない。しかも一度着ると、脱ぐのが面倒な仕様だ。風呂に入る時も、マリーが手伝って脱がせた程だ。当然……なのかは分からんが、下着も未着用だった。

 そんな事情もあり、わざわざぴっちりスーツを着て寝室まで行くのも面倒、という彼女の言を尊重し、全裸となった次第だ。

 彼女だけ全裸で歩かせるのもアレなので、俺もそれに付き合う事にしたのだ。二人共全裸ならそんなに気にならないだろう、という俺なりの気遣いさ。

 寝室の中へ入ると、リコリスは入り口付近で歩みを止め、立ち止まってしまった。その顔には不安の色が見て取れる。ならば、

「……えっ?」

 俺は彼女の傍まで近付くと、少し強引にリコリスを抱きかかえた。お姫様抱っこでね。抱きかかえたリコリスの体は、緊張で強張っていた。

「何も心配は要らない。俺に、全て任せてくれ」

 その言葉を聞き、リコリスの体から力が抜けたのが分かった。俺の言葉で少しでも緊張が緩和したなら何よりだ。

 ベッドの上を歩き、枕がある位置まで移動する。そこでリコリスをゆっくりとベッドの上へと横たえた。ベッドの上を歩く……か。決して普段使いしない言葉だな。それだけこのベッドが大きいという訳だ。

「それでは……始めるぞ?」

「……はい。夫殿に、全てをお任せするであります……」

 俺はその言葉に頷き、リコリスに優しく口付けをした。そして、彼女の脚を開かせ、ゆっくりと腰を進めた……。




「はぁ……はぁ……はぁ……」

 俺の隣で荒い息を吐いているリコリス。それ程に激しい情事だったのだ。かく言う俺も激しい疲労感と脱力感に襲われている。激しく高鳴る鼓動を静める為、大きく深呼吸を何度か繰り返す……よし、多少は落ち着いてきたな。

 ふと隣のリコリスに視線を向けると、俺の顔を真剣な眼差しで見つめている事に気がついた。

「どうしたんだい?」

「……小官は、正しく「お役目」を果たす事が、出来たでありますか?」

 深刻そうな顔をしているので何事かと思えば……そんな事を気にしていたのか。

「大丈夫だ。何も問題は無かったよ」

 そう言いながら、リコリスの頬を優しく撫でる。ありがたい事に、踏んだ場数だけは多いからな。流石に慣れたよ。色々とね。

「これから何百回、何千回と繰り返すんだ。いずれそんな事は気にならなくなるさ」

 リコリスに優しく口付けながら、励ましの言葉を送る。すると、ぎこちないながらも笑顔を見せてくれたよ。

 さて、このままリコリスとピロートークを楽しむ……、

「うん、そうだよね。何千回もするんだから、時間は有効に使わないとね」

「……えっ?」

 隣にいるリコリスが驚きの表情に変化する。そりゃあ俺達の他に誰もいない筈の寝室で、第三者の声が聞こえたらそうもなるか。

 さて、その侵入者の正体とは……健康的に日焼けした小麦色の肌を、惜し気も無く全て晒しているカトレアだった。

 そのカトレアだが、俺達に一声かけると同時に俺の腰の上へと飛び乗ってきた。勢い良く飛び乗った筈なのに、大した衝撃を感じなかったな。一体どういう仕組みなのだろうか? カトレアの技術の一つなのだろうが……。

「……成程、夫殿の「戦い」は、ここからが本番という事でありますか。小官、無事の帰還を祈っているでありますよ」

 ベッドの上には、カトレア以外の妻達も既に全員集合している。その様子を見たリコリスは、全てを察したのだろう。俺に向かって無事を祈る言葉を口にしたのだった。

 ああ。祈っていてくれ。俺が無事に明日の朝日を拝めるようにね。

 そんな俺の覚悟を知ってか知らずが、腰の上のカトレアが、ゆっくりと腰を上下に動かし始める。さあ、今夜も気合を入れて頑張ろうか……。


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