合流
転移魔法で我が家の門の前に到着した。ここまで送ってくれた賢者殿は、さっさと転移魔法でとんぼ返りしていったよ。忙しない事だ。
「お帰りなさいませ、旦那様」
中に入って休もうとした時、家の中からマリーが出迎えに来たのだった。おや? ちょっと待てよ?
「未だ昼過ぎだぞ? この時間は「東」にいる筈では?」
そうだ。マリーを含む「リラ班」は、東へ向かい色々な事を調べているのでは?
「それが……少々問題が発生しまして、今日は自宅で待機となりました」
「問題? 詳しい話を聞きたいな」
「はい。その為に皆様がリビングでお待ちです」
そうか。ならば俺達もリビングに行き、事情を聞くとしとうか。
こうして俺達は、約三日ぶりに全員集合する事となった。
「先ずは、皆が無事にこの家に戻って来られた事を祝おうではないか」
という事で、感動の再開を祝しワイングラスで乾杯……といきたい所だったが、今が昼過ぎという時間である事を考慮し、紅茶でという仕儀となった。
優雅な午後のティータイムか。この至福の時間……愛しの我が家に戻ってきたと実感出来るな。
「さて、そちらで何か問題があったとの事だが、具体的な内容を報告して欲しい」
「はい、では僭越ながら「リラ班」を代表して私が報告申し上げます」
そう声を発したのはローリエだ。うむ、では彼女の報告を聞くとしようか。
「初日。私たちはファムグリア王国を東に向かい、国境を越えて「リュウ国」に入りました。その後、更に東へ移動し目的地である「天都」へと到着。既に日暮れの時間が迫っていた事もあり、多少の聞き込みをして初日は終了しました。
二日目。この日は試験的にダンジョン内を探索。その後、町での本格的な情報収集を開始。その終了時に複数の人間から襲撃を受けました。その者たちは、「天都」を治める十人の商人――『十天商』。その者たちから依頼されたと、襲撃者を尋問して判明しました。
それを受け、全員で協議をし、三日目も襲撃が継続して行われる可能性が高い、と結論付け危険を避けて家にて待機する方針にいたしました……以上で報告を終わります。我々が得られた情報はこれで全てになりますね」
ふむ。幾つか気になることがあったな。
「ふ~ん……それでさ、その「十天商」とか言う商人の詳しい情報は無いの?」
どうやら疑問を持ったのは妻達も同じだったようだ。俺より先に質問したのは桔梗だった。
「その事を調べるのは三日目の予定でしたので……申し訳ありません」
「なに、自分達の安全を第一に考えるのが最良だ。それで問題無い」
ここに居る妻で、「自分がどうなろうとも……」なんて考える者は存在しないさ。だから謝る必要は無いよ。
「次に「天都」に行く時は、その辺りの事を重点的に調べるとしよう。楽しみが増えたとでも思えば良いさ」
何事も前向きに捉えるのが重要なのさ。後ろ向きでは、そこから「先」の意見が出づらいのだ。
「次は俺達の報告か。プリムラ、頼んだぞ」
「ええ、お任せを」
こちらの報告はプリムラに任せた。これも良い経験になるだろう。頑張って務めて欲しい。
「こほん……それでは報告を始めさせていただきますわ。ワタクシ達の一日目は、上級ダンジョンの五十一層目から探索を開始し、その日の内に、六十層を踏破いたしました。
続く二日目。ダンジョンに現れる魔物の対処に苦慮しながらも、七十層を攻略し上級ダンジョンを制覇いたしましたわ。攻略後、ギルド支部にて諸々の報告を致しますが、事が事だけに本部にも直接説明をしに行く事なりましたわ。
ですが、日が暮れるまで時間が無かった為、その日は王都へ移動し王都の宿屋で一夜を明かす事となりました。
そして三日目。ワタクシ達はギルド長トーマス様や賢者様、そして王国の学者様の方々お相手に、報告をいたしました。その後、賢者様の「転移魔法」でワタクシ達は家へと戻って参りましたの。そして今に至りますわ」
報告を終えたプリムラが一礼をした。うむ、上出来だったよ。
「二人共、ありがとう。さて、この報告を踏まえた上で、今後の予定を決めようと思うのだが、皆の意見を聞きたいな」
「あら? 次にやる事なんて決まっているでしょう?」
「そうでござる。拙者らを襲ってきた「十天商」なる連中に、目にもの見せるのが先決でござろう!」
そう息巻くのは、ヴェロニカと椿か。過激な発言だな。しかし他のリラ班の妻達も、言葉には出さんが表情で同意を示しているよ。余程腹に据えかねていたのだな。
確かに、それは重要な要件には違いない。このまま何もせずに舐められるのは、戦略的にもよろしくないからな。
「それも良いが、俺としてはここら一帯で買い占められた「魔石」の行方も気になるな」
魔石が買われ、運ばれた先が不明との事。だが、俺達には「その先」に心当たりがあるのだ。
「ふむ。我達が戦った「人形兵士」。恐らくアレを造るのに使われたのではないか?」
そう発言したのはネリネだ。ああ、俺も同じ意見だ。
「だがよ、買い占められた「魔石」の中には、等級の高い奴もあったんだろ? そいつは何処にいったんだ?」
そこから更に疑問を口にしたのはルピナだ。
「うむ。「騎士型」や「巨人型」を造るのにも使っただろうが、それでも数が全く合わん。等級の低い物はクライン王国のシムートの所に、等級の高い物は別の誰かの所に……そう考えるのが自然だ」
「でもぉ、それだけの魔石を手にしてぇ、何をしようとしているのかしらぁ?」
そう、ソニアのその疑問が一番問題なのだ。大量に手に入れた――いや、恐らく今でも買い漁っているだろう。その魔石を「何処」で「何を」する為に集めているのか……それが重要なのだ。
最近になって急に集め出した訳ではないだろう。そうなれば、既にかなりの数を保有していると思われる。そんな多量の魔石、一体何に使おうというのだ? 魔石と言えば「魔道具」だろう。
「ルピナ。君の意見を聞きたいな」
「う~ん……アタイにも良く分かんないけど……それだけの魔石を使うんだ、相当大掛かりなモン造るつもりなんじゃねーか?」
大掛かり……か。連中の「目的」を考えると、朧気ながらその正体が見えてくるな。
「俺の考えでは、恐らく……『竜種』に対抗する為の何か、と推察する」
確証は何一つ無いが、俺の心の中では……これで間違いないと、確信している。何故だかは分からんがね……。
「でもさ、結局その「魔石」がどこに行ったのか……」「それが分からないと、どうしようもないですよね?」
リアスとリリスの言葉に、俺は静かに頷く。
「そうだ。結論としては、買い占められた「魔石」が何処に消えたのか……それを調べねばならん。その為に必要なのは……世界各国の協力に他ならない」
魔石を購入した者の足取りが掴めない。だが事実として、クライン王国に魔石は届けられていた。
この事実を鑑みるに、一番可能性が高いのは……どこか遠くの国に運ばれた、そう考えるのが自然だろう。
それと、仮に俺の考えが正しかった場合、対竜種用の兵器。パッと思い付くのは「超大口径の大砲」かな?
集めた無数の魔石をエネルギーとして撃ち出す。単純にして明確な答えだ。イメージとしては『コ〇ニーレーザ―』かな?。
いかに「竜種」と言えど、直撃すればただでは済まないだろう。
そんな物が、人が集まる「都市」に向かって撃たれれば……この先は言う必要無しだな。
今の所は、俺の考察による予想でしかない。この予想が外れてくれるなら、それはそれで良い。
だが……万が一、予想が当たってしまったら……まあ、そうならない様に動くだけさ。
「世界各国の協力、その手始めに『北』の問題を解決するのが良いと思うのだが、どうだろう?」
「それってさ~、あの「お山さん」の事だよね?」
「桔梗の言う通りだ。あの山道を使えるようして、北との交流を再開させる。そうなれば国家間の交流も自然と進むだろうからな」
つまり、今後の方針としては、「天都」での情報収集、及び「北」のノーザンブレード山脈の問題を解決。この二つの問題を解決する事だ。
北の問題……それは「ワイバーン」だ。連中が「巣」を作り人々の往来を妨げているのだ。
ならば、そのワイバーンの群れを討伐すればよい。実にシンプルだな。
だが、ここで一つの問題が発生する。
東の「天都」における情報収集は、桔梗の力無くしては不可能なミッションだ。
そして北の「ノーザンブレード山脈」でのワイバーン討伐。敵は空中から襲い掛かって来る狩人だ。その索敵にはやはり桔梗の能力が欠かせない。マリーの能力でも大きな問題は無いだろうが……万全を期すならば、帰郷の能力は必須。
とすると、桔梗が一人しかいない以上「東」と「北」の問題を同時に対処するのは不可能……普通ならばな。
「つまり~、新しい「お嫁さん」を呼ぶ……という事よね~?」
ふふふ、エリカは鋭いな。その通りだ。俺達には普通ではない手段を取れるのだからな。




