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識字率0%の辺境で、元教師の無能転生者が学校を作ることになった件  作者: 菊池まりな


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第74話 二人の行方

 手紙を読み終えたミアの手が、かすかに震えていた。


「レオ……この二人は、まだ生きているの?」


「分からない。でも、生きている可能性を信じて動くしかない」


 村長は木箱を大事そうに抱え直しながら、深いため息をついた。


「あの二人の名は、ダニエルとフィン。幼馴染で、村では兄弟のように育った仲だった。フィンの母親は今も村にいる。もう何年も、息子の帰りを待っている……」


 その言葉に、レオの中で何かが固まった。これはもう帳簿の不正を暴くだけの話ではない。二人の若者の行方──もしかしたら命そのものに関わる話だ。


「ノア、この徽章、見覚えは?」


 ノアは徽章を手に取り、灯りにかざしながら顔をしかめた。


「見たことない意匠だ。でも……この裏、何か刻んである」


 裏側には小さな文字で「W.G.」と刻まれていた。


「W.G.……」ミアが呟く。「ヴォルフ子爵の紋章とは違う。グリンウォードとも違う」


「別の組織、ってことか」


 その時、納屋の外で乾いた足音がした。全員が息を潜める。戸の隙間から外を覗いたエマが、小声で告げた。


「カーライルの部下……多分。馬車の方に戻っていく」


 しばらく息を潜めた後、足音が遠ざかったのを確認して、ようやく皆が肩の力を抜いた。


「まずいな」ノアが低く言う。「こっちが帳簿の改ざんに気づいたこと、もう向こうに勘づかれてるかもしれない」


「だとしたら、迂闊に動けば村長やフィンの母親に危険が及ぶ」


 レオは木箱の中身をもう一度見つめた。手紙、徽章──これだけでは、まだ足りない。だが、確実に何かの糸口ではある。


「村長、フィンのお母さんに、話を聞かせてもらえますか。もちろん、無理にとは言いません」


 村長は少し迷った後、静かに頷いた。


「……分かった。だが、朝まで待ってくれ。夜更けに訪ねれば、要らぬ勘繰りを招く」


 その夜、レオは眠る前に、もう一度手紙を読み返した。震える文字の奥に、二人の若者の恐怖と、それでも仲間を守ろうとした覚悟が滲んでいる。


 ──知は、人を守る力になる。だが時に、その力を得ようとする者自身が、危険に晒されることもある。


窓の外、月明かりの下で、馬車の影がまだ村外れに留まっているのが見えた。


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