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黄金剣のギィロ 〜好きってどういうことだかわかる?  作者: ぷるお


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第3話 壊さないでほしい

 気温を冷ます雨の降る日、マーニャさんと衛士さんが、男の子を雪灯院に連れてきた。

 ボロボロの泥まみれは鋭い目つきをして、腰には短い武器を帯びていた。


「ここが雪灯院か?」

「そうだ、ここで学べ。人は一人では生きていけないんだからな」

「そんなことないと思うけどな」

「マーニャさん、あとはよろしくお願いします」

「はい、よろしくねギィロくん」

 

 名前はギィロ、9歳で私の一つ下。

 髪など切ったことがないような無造作なブラウンの髪を、適当に束ねている。

 姿からしてひどい環境にあったのだろうと思う。


 雪灯院に居ればこれからは大丈夫だよ。とその時は思った。

 けどその子は違った。


 聞くとギィロは黒羅旅団の一隊を一人で壊滅させて、その後衛士さんに保護されたのだという。

 黒羅旅団はミケウを拠点としたはみだし者の組織で、ミケウの自由が産んだ腫瘍の一つ。

 地方街報をたまに賑わせている。

 賭博、強奪、騙し、人攫いなど、ミケウの闇に関わる非道な組織で、ミケウにきた初めてさんなんかがキョロキョロしていると目をつけられる。

 つまり嫌な奴ら。

 子どもが一人で相手にできるものではないはずなのに、ギィロはその一隊とやりあったという。

 壊滅ってなに……?


 話を聞いたとき、私はこの子は大丈夫なのだろうかと思った。

 その答えは、すぐに分かった。



 新しい風といったら聞こえはいいけど、ギィロは嵐だった。

 毎日マーニャさんの苦労の声が響いてくる。


「どこへ行くの?」

 勉強には関心がない。


「やめなさい!やめなさい!」

 気に食わないと喧嘩をするし、他人の喧嘩も暴力で止めている。


「外はダメよ!」

 勝手に外を出歩く。



 私だって、洗濯物を干してるとき邪魔をされた。

 

「なにしてるの?」

「俺のがあるはずなんだよ」

 と、干してる人のことなんか目に入ってないように、籠にまとまったこれから干す洗濯物をゴソゴソし始めた。

 

「濡れてるでしょまだ」

「乾くだろすぐ……」

「あ、ねえちょっと……」

「これこれ」

 ギィロは目的のものを見つけたようだけど、他の洗濯物は籠をひっくり返したように外に放り出されていた。

 

「他のは籠に戻しといてよ?」

「どうせこれから干すだろ?」

 悪びれることなく言って顔を上げる。

 

「さいてー」

 そこで、初めて目が合った。

 

「あ、なんだお前かわいいな」

「え、か……」

「これも洗っといてくれよ」

 と、結んでコンパクトにされていた外套をスルスルと解き、強引に渡してくる。

 

「なにこれっ、どうすればこんな汚れるの!?」

 それは広げれば乾いた土だか砂だかがザラザラと落ちてきて、濡れていただろうところはパリパリになっている。

 泥水で半身浴でもしてから乾いたかのようだ。

 破れも目立つ。

 

「頼んだ」

「はあ?なんなのもう!」

 まだキレイに見えるところを表にして一回雑巾にしてやったけど、それを洗うのも私だった。なんでなの?


 たぶん夜の間に食材がなくなったりするのもどうせギィロがやってるに決まってる。絶対そう。


 優しいマーニャさんは困り果てていて、ルールなんか無視のギィロはすぐに一人部屋になった。



「エリナが居ればねえ……」

 マーニャさんの愚痴る独り言が聞こえた。


 エリナさんのことは覚えてる。

 私が雪灯院に来て間もない頃、落ち込んでた私に「一人が集まってみんなになってる。助けてあげれば相手だけじゃなくて自分も一人じゃなくなる」って教えてくれた女の子。

 エリナさんの大人っぽい匂いのする部屋で一緒に寝たりもしてくれた。


 入れ替わるようにすぐに卒業してしまったのだけど、面倒見が良い優しい人だった。

 そのエリナさんの部屋は今は私が使ってる。


 私は、せっかくみんなで助け合って生活を送っている雰囲気を、せっかくみんなで一生懸命作り上げてきたものを壊されるのが嫌で、悔しくて、ギィロの目に余る行動に口を出し、喧嘩の仲裁にも入るようになった。

 仲裁というか、言っても無視されるからケモノだと思って抑えつけるように止めた。


「暴力はダメでしょ!」

「おまえだろ!」

「助け合えば一人一人がみんなになるの!」

「なにいってんだ」

 代わりに喧嘩になることが数回。


「うっ、うぅうぅぇ〜ん……」

「泣くならやめろよ……」

 わかってもらえないのが悔しくて泣いて、マーニャさんをもっと困らせるのも数回。


 ギィロの素行はなかなか直らなくて、ため息が増えた。

 マーニャさんはたぶんもっと増えた。


 でもギィロは女の子には手を出さない。

 それどころか口説いている。

 なのに私は別で、喧嘩になると手をあげられる。

 私が力を使うから同じように力で返される。そんな感じがした。

 だって口で聞かないならしょうがないでしょう?


 強い信念を感じる目に気圧されることも、喧嘩に負けてうずくまって泣くこともあったけど、わかっていないなら、ダメなことはダメだと教えないと、引いたらダメだと思って、私は諦めず、睨むことをやめなかった。


 言うことはなかなか聞かないけど、次第に私のことを見たら、"またお前かよ"みたいな顔で気まずそうに立ち去るようにはなって、少しはおとなしくなった。

 でもギィロが女の子を口説いてるときは、しっしって逆に追い払われる。

 なんか悔しい。

 それにちょっとモテてる。

 あいつの何が良いわけ?なんなのあいつ。


「リゼが居てくれて良かった。でも無理しないでね」

 マーニャさんから感謝されるのは嬉しかったし、正しいことをしてる確信になった。

 でもギィロを相手にするのは、身体的にも精神的にもきつかった。

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