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黄金剣のギィロ 〜好きってどういうことだかわかる?  作者: ぷるお


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第20話 モデルになる!

 それからしばらく経ったある日の昼。

 庭でギィロと体を動かしていると、あの絵描きのおじいちゃんが来た。

 マーニャさんと大柄ヘルトンも一緒だ。


「おお、おったおった、あの子らじゃあ」

 ギィロとお互いに"なんでここにいるの?"という顔をぶつけ合った。


「こっちに来なさい」

 私たちは剣を下ろし、大きく手招きするマーニャさんに従った。


「こんにちはぁ?」

 探るような挨拶をして様子を伺う。


「こんにちは、お二人とも。ロビーにこの間の絵が飾ってあったのでな、まさかと思うて、雪灯院の子だったとはのう」

 おじいちゃんは、ほっほっほと笑顔を向けてくる。


「こちらはローレオール様です。雪灯院の設立に協力してくださった……」

「ローレオールじゃ、こいつはヘルトン、おぬしらはリゼアノートにギィロじゃな?マーニャから聞いたぞ」

 ローレオールと紹介されたおじいちゃんは、マーニャさんの言葉を遮って自己紹介を始めた。


「はい、雪灯院を作った方なんですか?」

「わしは手伝っただけよ」

「そうなんですね。私ここが大好きです。雪灯院を作ってくれてありがとうございます、ローレオールさん」

 詳しくはわからないけど、大変な人だと知り、改めて丁寧にお辞儀した。


「そんな硬くなることはない。おじいちゃんでええよ、かわいいリゼアノートちゃん」

「いいんですか……?」

 完全に私たちの頭が上がらない方な気がするけど、おだてられると綻んでしまう。


「ちょっとギィロ……」

 ギィロの態度が良いとは言えなくて、小声で促すもギィロは視線を外さない頷き程度の会釈しかしない。


「「すみません……」」

 マーニャさんと言葉が被って顔を見合わせた。


「悪気はないんですけど、こういう奴なんです……」

 私はギィロに手をかざして苦笑を送った。


「かまわんかまわん、芯のある目をしとる。己のルール

があるんじゃろう。それにしてもギィロよ、訓練でも枝を持っとるのか?」

 ローレオールおじいちゃんは達観した態度でギィロにあたり、ギィロの手に握られた枝を、不自然だと指摘した。


「俺は真面目にこれをつかってるんです。別にヴァーミリオンゴッコをしてるわけじゃない」

 ギィロはお気に入りの枝を見せるように振りながら答える。

 ヴァーミリオンは五大英雄の一人で、"ザイレルの騎士と龍"という創作物語のモデルにもなっている人物。

 英雄の代表みたいな存在だ。


「なに?」

「ホントです。おかしいんですよギィロは……」

 怪訝な顔のローレオールおじいちゃんに、私は簡単なフォローを入れた。


「ほっほー、はるか昔にそういう者が居たという記録を読んだことがあるが、見せてもらえんか?」


「いいですけど……」

 と言いながら動かないギィロの腕を軽く引く。


「ギィロ……」

 連れて行こうとするがやっぱり動かない。


「ヘルトンさんとやらせてもらえませんか?」

 ギィロは枝をヘルトンさんに向けた。


「ギィロくん……」

「ちょっと失礼でしょ……」

 マーニャさんと共に唖然とし、遠慮がないギィロに肝を冷やす。


「ふぁっはっは、というとるがヘルトン、どうじゃ?」

 笑ってくれるローレオールおじいちゃんにホッとする。


「構いませんが……実力がわからない。少しずつ上げていく感じで良いかなギィロくん」

 一歩前に出て応えるヘルトンさん。

 近くに来ると壁みたいに大っきかった。



 ギィロとヘルトンさんは庭の中央で構え、見合った。

 少しずつと言ったのに、剣を交えることなく互いに威圧し続けている。

 徐々に険しい顔になっていくヘルトンさんから溢れる纏いには、ギィロと同じ土纏いの揺れを感じる。

 緊張感が高まって、見てるだけなのにツバを飲み込んだ。


 ヘルトンさんが腰を落とし、模擬剣を両手でグッと握った直後、ヘルトンさんは打ちに行った。

 当てる目的ではなさそうだけど、重そうな一撃だ。

 ギィロはそれを正直に枝で受ける。

 私はギィロに剣をまともに受けられると弾かれてしまうのだけど、ヘルトンさんとは鍔迫り合いになっている。


「ふおおぉ……」

 ローレオールさんが目を見開いている。


 二人は力比べをしているように見えた。

 ぐりぐりと押し合う状況が続いたが、ついにギィロはヘルトンさんの剣を押し除けた。

 体の大きなヘルトンさんの重そうな剣と押し合うだけでも異常なのに、押し勝つのは信じられない。

 ヘルトンさんはすぐに隙を見せないよう下がり、ギィロは追撃に前進する。

 ギィロの振った枝を払い落とすようにヘルトンさんの剣が入ると……


ボキッ


 枝が折れた。


「あ……」

 二人は折れた枝を見て動きを止め、短い模擬戦は終わった。


「信じられんな!」

 ローレオールさんは興奮している。


「私もですよ……この歳で、そんな枝で、このような……」

 ヘルトンさんは驚きを隠せない様子だ。


「……俺も驚きました。リゼ以外にこんなにすごい人がいるなんて、抜かれると思ってなかった。……あーあ、良い枝だったのに……」

 ギィロは真ん中からぷらぷらになった枝を上げ、もったいなさげに見つめる。


「というとリゼアノートちゃんもギィロくんほどに凄いのかね?」

 ローレオールおじいちゃんは興味ありげにこちらを向く。


「え、私ギィロには勝てませんよ?」

 両手で無理無理を作り出してアピールした。


「せっかくなんだ、面白そうだからやらせてもらえよ」

 ギィロがニヤニヤしながら勧めてくる。


「じゃあ、良い、ですか……?」

 私はちょっとやってみかった気持ちを抑えられず、恐る恐る尋ねる。


「見せておくれ」

 おじいちゃんからの許可がおりて、ギィロと場所を交代した。


「ヘルトンさん、よろしくお願いします」

「ん、いつでも構いません」


 私は少しずつ上げていくというルールを守った。

 体格差がすごくて剣が高いところにあるのは、ギィロとでは体験できない感覚だった。

 安定したブレない剣は、柱が倒れてくるような重みがあって、受け続けるのは厳しく、流し避ける方にシフトした。

 私たちは互いに加減をし合いながら打ち合い、徐々に上げていった。

 ヘルトンさんは纏いの強度もさることながら、剣技の技術そのものが高い。

 纏い無しで戦ったらまず勝てない。

 ギィロはどちらかといえば防御型だが、ヘルトンさんの剣は攻撃に特化している。そんな印象を受けた。

 

 お互いの力量が、打っても大丈夫だとわかってきた頃、


「じゃあいきますね?」

「いいですよ……」

 ギィロのニヤニヤが見えたけど無視した。

 

 これだけ充分な間があって集中すれば問題なく打てる。

 

『霞』


 私は一呼吸置いて、呟きと共に勢いよく前進した。

 ヘルトンさんに虹がかかる。


「!?」

 ヘルトンさんは実体剣と初めの纏いの塊には反応して防いだ。

 でも残りの二つは両肩を捉えた。

 怪我のないように撃ったけど衝撃はある。

 ヘルトンさんは倒れはしなかったが後ろによろめき片膝をついた。


「ふおおぉぉお!!」

 ローレオールおじいちゃんの興奮した声が聞こえた。


「すみません、大丈夫でしたか?」

 ヘルトンさんに近寄るが、身長差がありすぎて差し伸べる手はない。


「なんだあああ!!?」

 急にヘルトンさんが目の前で大きな声を出すのでビクッと驚いてしまった。


「あっはっは」

 ギィロは嬉しそうに笑っている。


「……?」

 剣の心得のないマーニャさんはよくわかってなさそうだ。


「……たのむ、たのむ、もう一回やってくれないか……」

 ヘルトンさんは人差し指を立て、ギィロみたいなことを言い始めた。


「いいですけど……」

 私はもう一度お見舞いし、またしても命中させた。


「ふぁっはっはっは!ヘルトンが負けるとはのう!どうじゃった?どうじゃった?」

 楽しそうにするローレオールおじいちゃん。


「……ダメです。わかっていても間に合わない。複数属性の揺らぎがほとんど同時にきます。ローレオール様、そちらからも見えていましたでしょう?初見で対応するなんて無理だ……」

 ヘルトンさんは首を横に振りながら、独り言交じりに言った。


「うむ、美しかったぞ!だが戦場では常に初見じゃろうが!負け惜しみを言いおって!」

「はい……すみません」

 ヘルトンさんの負けといっても、私は技を受けてないので不公平な戦いだ。

 照れ笑いするしかない。


「おい!三人でやろう!」

 ギィロはノリノリで、拒否する選択肢などないように庭に出る。

 正直私もやりたい、ギィロ以外の強者の剣は楽しい。

 私たちは遊ぶように剣を交え合った。



「ふぁっふぁっふぁっ」

 ローレオールは幸せそうに三人を眺める。

 一度スケッチブックを開きかけたが、今ではないと思案し閉じた。


「すみませんローレオール様、元気な子たちで……」

 マーニャは礼儀正しく声をかける。


「よいよい。真面目なヘルトンの顔がほころんでおる。ところでマーニャよ、わしゃミケウリリアに宮殿にこいと呼ばれておってな、あの子らを貸してもらえんか」

「ミケウリリア様にですか?あの子たちが行くと言えば構いませんが……」


「そうか、すまんの。二人には後でわしから聞いておこう。なに、ちとミケウリリアの前で絵を描くだけじゃ。来月、迎えに来るからお主も一緒に宮殿までいこうではないか」

「はい」


「ああそれと、わしが誰なのかは言わんでおいてくれ。これ以上かしこまられてもやりづらいのでの」

「承知しました」


 ローレオールは先代ミケウリリアの夫であり、現ミケウリリアの祖父である。一族でも一番の年長者であるため頭の上がる者は少ない。

 15年前に探究の神器の継承が行われたあと、しばらくして長い旅に出ていたが帰ってきたのだ。


「凄まじい子を育てたのう……」

 ローレオールは顎を触り、二人を見ながら呟いた。

 


 やってやられてでひとしきり遊び、心も身体も満足して戻ってくると、おじいちゃんから宮殿に誘われた。

 ミケウリリア様の前で絵を描く。そのモデルという話だった。


 宮殿なんて行く機会はない。

 ミケウリリア様にお目にかかれることなんてもっとない。

 行きたいやりたいということで、宮殿行きが決まった。


「勉強になりました。ありがとう二人とも」

「こちらこそですヘルトンさん」

「面白かったな」

 お礼を言い合い、ヘルトンさんは定位置であるローレオールおじいちゃんの後ろに戻った。


「迎えに来るからの、体調に気をつけて過ごせよい」

「はい、おじいちゃんもお気をつけて」

「んむ、ありがとう。ではなマーニャ、行くぞヘルトン」

 私たちはお別れの挨拶をして、マーニャさんとお辞儀して見送った。


「なあ、ミケウリリアって街で一番強いんだろ?宮殿に行ったら戦ってくれるかな?」

「ギィロ、それだけは絶対にやめて?」

「なんでだよ……ヘルトンのおっさんは良かったろ……」

 宮殿は楽しみだけど、不安が拭いきれない……

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