第12話 牙を見せぬケモノ
「どうだったか?」
「とても良い子でした。ボクはあの子が欲しいです」
エルネスト・ファーレインは、広い敷地を持つ白護会の一室で、父であるゲーマン・ファーレインに報告を行っていた。
「そうかそうか、はっはっは!大層気に入っていたものなあ?」
「はい、初めて見た時からかわいらしいと衝撃を受けましたが、あの小さな土台に一生懸命立とうとしている姿が余計にたまらなかったんです。良いですね孤児というのは。紹介してくださったカレイド伯には感謝しかありません」
エルネストは人には決して見せない、溶けた笑顔を浮かべ父に語った。
「お前の趣味は理解できんが、剣の腕もあるのであれば業務上問題はない。私はお前を応援しよう。何か必要なものはあるか?」
「情報が欲しいです。彼女の過去について、調べられませんか?」
エルネストは即座に答え、強い意志をもった目で父へ要望する。
「可能な限り調べておこう」
「ありがとうございます父様」
ゲーマンは頷き、エルネストは優雅なお辞儀をした。
「それで、リゼアノート嬢を具体的にどうしたいのだ?目標はなんだ?」
「結婚です」
エルネストは返事に迷うことなく、当たり前のことのように真顔で率直に述べた。
「ふむ、そうか、二人目になるな」
パートナーは一人の方が良いと常識的にはされているが、それを強制する法は世界のどこにもなく、実際に複数人の異性と生活している者はいる。
ただエルネストにとって人数や回数などはどうでもよかった。
「結婚など何度してもいいです。ニコも言っているではないですか、欲望に忠実であれと」
エルネストは結婚という制度そのものを愛していた。
それは正しいことなのだと、自分の価値観と、昨今の教義ではない古い神の教えとの一致に確信を見る。
「二人目として迎えるのか?」
「いいえ、面倒ですからうまくいったら先の者とはあらかじめお別れいたします。大丈夫です、お別れもうまくやれますよ」
その言葉は自らの能力への信頼と実績が自信の発生源となっていた。
「うむ、お前のことだ、心配はしていないが注意しろ。私は嫁で失敗しているからな。恐ろしいぞ?後がなくなった女性というのは。ニコと言ったが、結局神々は両者敗北だったのだろう」
「今の妻はまだ若いですよ父様」
エルネストは自分と父とでは状況が異なることを柔らかい笑顔で返答する。
「私のような苦労はしてほしくなくてついな、はっはっは。若いといえばリゼアノート嬢はいくつだったか?」
「14ですね」
エルネストは人差し指を頬に当て言った。
「なに?まて、未成年ではないか?だとするとすぐにとは行かんぞ?それはまずい」
「はい、わかっています。1年もあるのですよね?1年あれば充分に仕上げられます。その過程を見られるのは悪くない体験です。あの子からどれだけの好意を浴びる事ができるのか、今から楽しみです」
エルネストは自分にしか見えない虚空の先を見つめる表情をした。
「そうか、なら良い。息子ながらお前の欲望と才能には私ですら脱帽する。10年もすれば白護会はお前のものだ、それまで期待に応えてくれよ」
「はい父様」
エルネストはゆっくりと頷いた。
「ああそれとな、日程は決まっていないが、中央街の展開に際してニコ教会からの要求で極秘の護送がある。彼らはこちらの都合など考えん、いつでも対応できるようにしておけ」
「かしこまりました」




