第3章 第10話 大人にならないといけないんだ
「リゼ、メイドをやってみなさい」
「え、あ、はい……」
雪灯院の孤児たちは、15歳の成人付近でだいたいの人が卒業する。
年長になればなるほど、世話をされる側からする側になり、やることは絶えないし、適性のある職への紹介などで考えることも増える。
「がんばってね……」
「うん、リゼもがんばってね、今までありがとう」
私は14歳になって、同年代の友達の多くが卒業していった。
卒業というのは別れだ。
関わりがなければ会うことがなくなる。
自分のことで忙しくなって、戻ってくることもない。
だから別れだ。
みんなを応援して送り出して、寂しくもあったけど、内心すこし焦っている部分がある。
私の進路は決まっていない。
自分の未来が想像できなくて、不安になる。
人の助けになることは好きで、これまで率先して行なってきた。
喜ばれはするけど、それは自分のためになっていただろうか。
私は何がしたいだろう……
ギィロと共に街で数々の依頼を受けてきた。
"サイドの活動は日曜"という制限もいつのまにか曖昧になり、空いた日はしょっちゅう街に行った。
けど受けれる依頼に制限がかかった状態では、毎日やっても収入は不安定なもので、仕事かと問われると胸を張って答えることはできない。
依頼は楽しくてやっているだけで、半分遊びみたいなものだった。
ギィロほどではないにせよ散財もしていた。
お金に関しては自分もギィロのことをバカにできなかった。
「リゼは真面目なくせに、遊び人みたいな見た目してるよなあ?」
「かわいいの間違いでしょう?」
雪灯院の仲間と比べてみても、自前での収入があるにも関わらず、有意義な使い方をしているとは言いがたいかもしれない。
依頼に出かけるのに必要な道具や、剣を振るための装備品をある程度そろえたあたりまでは良かった。
でもその後お金を自由にできるようになったら、身に着けるものや化粧品、部屋を飾る置物などに費やし、大きな目的を持って貯めるなんていうことはできていなかった。
着飾るのもお化粧もとっても楽しくて、自信がついて強くなった気分になる。気づいてもやめられなかった。
ギィロは茶化していたけどいつか持論を言っていた。
「すっぴんなんかどうでもいい、完成されたときが女の子の本来の姿だ」
ナンパ師の軟派な意見だけど、私はそれに同意する。
マーニャさんにピアスの穴をいっぱい開けたのが見つかったときには驚かれた。
「あなたは本来しっかり者です。今はいいけど、ちゃんとした格好もできるようになりなさい」
正直何がいけないのかよくわからなかったし、ちゃんとした場面ならちゃんとすると思った。
私はでも、ボーッとして何もしていなかったわけではない。
雪灯院からの紹介でいくつか職業体験はしてきた。
芸術や特殊技能はからっきしなので、メイドさんとかの生活方面や、お店のお手伝いとかを紹介されてきた。豪邸の警備なんかもやった。
料理は好きだし、家のことなら大抵できる。子どもの世話だって好きだしできる。
警備までできるメイドとかすごいと思う。
どの職場もルールを覚えるのは大変だったけど、仕事自体は問題なくこなせた。コミュニケーションだって問題なく取れていたと思う。
だけど、面白いかと言われると面白くはなかった。
・
「リゼ、俺が叱られたぞ」
ギィロはマーニャさんから「リゼに変な影響を与えないでほしい」と言われたそう。
私の格好についてだ。
私は自分の今の格好を見て、別にギィロはミニ履いてないでしょ。って言えもしない主張を思いついた。
確かにギィロもチンピラとまでは言わないけど、初めから変に破れてる服を着ていたり、自由を象徴するような格好になってきている。
お互い自由な開拓者ルックであり、端からみれば影響されていると見えなくもないかもしれない。
けど私は私の意思でやっているだけで、別にギィロから影響されているわけではない。と思う。
ギィロがとばっちりを受けるのは理不尽だけど、なんだか悪いことをしたかもって思った。
「うーん、ごめんね?マーニャさんって、こういうところちょっと堅いよね……」
「まぁな」
ギィロは全然気にしてない様子だ。
「そうだリゼ、こっちにこいよ」
「なに?」
突然部屋まで案内された。
途中なんなのか聞いても、「いいから」とか言って教えてくれない。
ギィロの部屋はごちゃごちゃしてて汚いからあまり行きたくない。一度片付けたら怒られたし。
部屋までつくと、私の目の前に無造作に袋を差し出してきた。
「ほら、欲しがってただろコレ、やるよ」
その袋から出てきたのは、私が欲しがっていたトルマンというお店の白のマフラーだ。
「えっ!うそ!?えーー!!」
私は目が飛び出るかと思った。
それはほんのり熱を蓄えるケデラ草から取れる粘液で作る錬成糸で編まれていて、大きさがまばらなポンポンがいっぱいついててかわいくて、肌触りが良くてあったかくて、あー!とにかく信じられない!
私はマフラーを受け取り、広げて感動した。
「巻いていい??」
「そのためのものだろ」
ギィロも嬉しそうな顔をしてる。
「うわぁ……あったかい……ほら触ってもいいよ?」
すごい。巻き心地がよくて、暖かい。
すごいのを共有したくて触らせた。「良いものだな」とか言ってる。
「いいの?これもらってもいいの?」
「いいよ」
ギィロは、私が興奮しているからかちょっと得意げな態度だ。
でも許す。
「ありがとうギィロ!へへっ、どう?」
「まあまあだな」
「なにそれ、もうちょっと感動してよ、でもなに?何かあったの?これ安くないでしょ?」
「臨時収入だ、リゼが忙しくしてる間にちょっと、まぁ」
そんな気遣いできる奴だった?ギィロってたまに分かんないときがある……
「悪いことしてたんじゃないでしょうね?」
冷静に考えると何したのか怪しくて聞いてみた。
「違うよ。これだ」
ギィロの手には開拓者組合の個人札があって、そこには黒のリングが付いていた。
黒のリングは重大な討伐依頼をこなすと付けられるものだ。そう簡単に手にはいるものではない。
「えっ?!うそ!なに?なに討伐したの?」
丸くなった目は札にかかるリングにくぎ付けになった。
驚きの連続でテンションがおかしくなりそう。
「東のアーレン峠が通れなくなっていたの知らないか?」
「あー、うん、知らないかも」
少し視線を外して答える、
忙しくて情報に疎くなってきてた。
「そこにいた雪を吐いてたカエルだな。水のエレメントを食ってたみたいだ」
何気なく言ってるけど耳を疑った。
ヤバい。かなりヤバいことをしてる。
エレメントって言ったら遭遇しても逃げの一択で、破壊的な自然現象を起こす浮遊してる塊だ。
それを取り込んだケモノなんて常識外の存在。
そんな何をしてくるか分からないような相手を討伐するなんて常人のできることじゃないし、下手したら命を落とす。
「うそでしょギィロ……」
ギィロの変人さを示す比較対象が自分くらいしかなくて、その自分でも測るのに足りなくて、どこまで変人的に強くなってるのかよくわからない。
目が点になった。
・
ある平凡な普通の日。
ギィロといつも通り庭で剣を交えていた。
ギィロと剣を振っているときは、目の前の圧倒的な存在をどう打ち負かすかだけを考えればよくて、他のことを忘れられた。
変わらない日常。という感じは心の開放感があって心地よかった。
ギィロは元々異常だったのに、どんどん成長してほんとに手が届かない。
差は開く一方で、手加減の度合いも強くなっているのがわかる。
剣を持ってる時間が違うのだから、仕方ないのかもしれないけど。
「はぁ、はぁ……もう、どうすればいいの……」
疲れて膝に手を置き、前かがみになって聞いた。
「良くなってる、言ったことはできてるよ。身体に染み込んでないから一拍遅いだけだ」
「そう……?はぁ……」
つまり反復あるのみってことかな……よしっ。
「リゼ、お客様です」
マーニャさんからの呼び出しがかかった。
また……
いいところなのに、その言葉で集中力が切れた。
「ごめんギィロ、ちょっと行ってくるよ。どうせまたつまらない仕事」
「うん、いってこいよ」
模擬剣をギィロに任せ、私はマーニャさんについていった。
・
「リゼ、白護会・柊さんです。身だしなみを整えますよ」
「ヒイラギ?」
格式が高い護衛会できちんとしてるところ。
だからちゃんとしろ。
後で説明を受けろ。
今はとにかく急げ。
という風なことを言われた。
部屋までの通り道、ロビーで待っている二人組みをチラと覗きみると、確かにきちんとした格好をしていた。
「こら」
小声で叱られて、扉からひっぺがされた。
着替えに部屋に戻ると、マーニャさんも部屋に残り、私の世話をし始めた。
「アクセサリーは全部外すのよ」
「はぁい」
「まだついてます。はやくなさい」
「はぁい……」
「なんでそんなに短いのを履いてるの。そんなので座ったら……もう」
「中に履いてますよ〜?」
「ほら、これになさい」
「髪もまとめ直しますよ」
「せっかく朝に編んだんですよ?」
「やってあげますから、はやく後ろ向きなさい」
「え、かわいい……マーニャさんこの結び方教えて?」
「はいはい、今度ね」
私は身ぐるみ剥がされ、言われるがまま、薄茶のジャケットとそのセットアップである幅広のパンツスタイルにコーディネートされた。
これはこれでまあまあかわいいけど、私の口はいつの間にかとんがっていた。
「ではいきますよ。待たせてしまっています」
「はぁい」
空き時間がなくなっちゃうなあ。という不満を表情に転がして、ロビーまでふてくされながら歩いた。
「顔」
ロビーの手前で、最後の注意を受けた。
目をつぶり一度深呼吸。
ギィロから"薄ら笑い"と評される笑顔をつくってから入室する。
「お待たせいたしました」
「失礼いたします」
マーニャさんに続いて、作った声で挨拶を行う。
お客さんの二人の男性は即座に立ち上がる。
「お忙しい中、わざわざありがとうございます」
お客さんはスマートな会釈と挨拶で応えてくる。
一人は40歳前後のお髭を蓄えた方、一人は若く背の高い、青みがかった髪の方。二人とも高そうな衣服に身を包んでいる。
自分の格好が釣り合っていなさそうで気になって、少しもじもじしそうになった。
もじもじの"もじ"くらいまでいってしまったかも。
「こちらがご指名いただきました、リゼアノートでございます」
指名?なにそれ聞いてない。
ちゃんと言ってよと思い、一瞬マーニャさんを見た。
「リゼアノートです。よろしくお願いします」
けど気を取り直し、一歩前に出て、笑顔笑顔と気をつけながらゆっくりと挨拶をした。
「私は白護会・柊を取り締まっている、ゲーマン・ファーレインです。こちらが……」
髭おじさんが簡単かつ柔和なトーンで自己紹介をして、若い男性の方を手で示した。
「エルネスト・ファーレインです。主に護衛監督をしております。既に私どもの仕事にふさわしい佇まいをされていると感想を抱いております。リゼアノートさん、よろしくお願いします」
若い男性は、髭おじさんからの紹介を遮るように自ら前に出て、まっすぐな目でハキハキと話した。
髭おじさんは隣で小さく頷いている。
それから向かい合って座り、白護会・柊についての説明を受けた。
『白護会・柊』
聞くと領主や商人の取締、そのお客さんなど、身分の高い人たちの護衛を請け負っている護衛会なのだという。
開拓者組合に張り出されるような護衛ではない。専属だ。
だけど護衛だけでなく、お客様が快適に過ごせるようエスコートするのも大切な仕事だという話をされた。
「あの、ご指名いただいたとお聞きしましたが、私は心当たりがございません。どういった経緯で……」
私は気になったことを尋ねてみた。
「これは失礼しました。リゼアノートさんは以前、カレイド領の治安維持活動に参加されていますよね。開拓者組合の公共依頼です」
若い男性の方が応える。
「あっ……はい」
確かに、カレイド領にいた盗賊団の拠点を一斉に攻める作戦に参加した。最近の話だ。
参加期限が張り出されたその日までだったおいしい緊急依頼で、気づいたパーティはみんな札を貼っていた。
「そこで素晴らしい剣技をもって数人を捕縛したと、私どものお得意様から聞き及びました」
「ああぁ〜……」
やったかも……勢いだけで凄い弱かった奴ら。
「その時、身の上を尋ねてきた方がいたはずです。誰だったのか私から申し上げることはできかねますが、その方からの推薦になります」
「そうだったのですね。その時のことは覚えております」
確かに聞かれて雪灯院のことを話した。現場で指揮してた小綺麗なおじさんだ。
「ちょうどそれについて、私も見せていただきたいと思っておりまして」
髭おじさんが割って入ってきた。
「息子、エルネストと剣を交えてみていただけませんか?」
「えっ?」
「こう見えても、息子は剣技に精通しております。息子のことですから親バカのように聞こえてしまったら恥ずかしい限りですが、ザイレルの闘技場で3回戦まで行ったことがあるんですよ?お相手させていただくのに充分な実力をもっていると自負いたします。いかがでしょうか?」
「えっと……」
体を動かすことになるとは思ってなかったので、不意を打たれ反応に困ってしまった。
「リゼ……」
しっかりしなさいと言われてるようなマーニャさんの呼びかけに姿勢を正す。
「……はい、ではお願いいたします……」
護衛なら実力は必要だし、確認したいということだよね。と納得した。
「リゼ、ご案内してあげて」
「あ、では、ご案内いたします」
私たちは席を立った。
――
歩きながら考えた。
ザイレルの3回戦って強いのかな……どうしよう、本気でやって良いんだろうか……
私はこれまでギィロとかいう規格外の剣士と剣を合わせ、追いつこうと努力し、助言までもらって日々を過ごしていた。
私の動きが改善されれば、今度はギィロがまた先へ行く。
その繰り返しで知らぬ間に私の剣の腕は変に向上していた。
人とそんなに差が出ているなんて思ってもいなかったのだけど、そのことをサイドとして活動し始めた時に、周りや相手と比べることで気がついた。
そしてその日常を繰り返すことで更に差がついていったことも自覚している。
お二人の言っていたこの間のカレイド領治安維持活動でもそれは感じていた。
――
・
私が先頭で庭まで案内した。
ギィロがこっちを見てる……
「模擬剣を用意しますね」
言い訳がてらギィロに近寄った。
「ちょっとなんで居るの?」
文句を言うように小声で言った。
ギィロは私の格好を上から下まで軽く確認するようにして口をひらいた。
「なんでってずっと居るだろ」
そうだった。
どうしようって考えてて、ギィロと庭で別れたことなんて頭からすっぽり抜けていた。
「剣貸して?」
「え?やるのか?」
「そう」
ギィロが私の肩越しに柊さんたちを見る。
「ちょっとじろじろ見ないでよ、はやく」
「面白そうだな」
ギィロはニヤケながら模擬剣を渡してきた。
「もう一本は?」
「そこに置いてあるだろ」
立て掛けてある模擬剣に小走りで向かい、柊さんのところへまた小走りで戻った。
少し離れたところでギィロがマーニャさんから何か言われてる。
指さされてるので、あっち行けとかそういうことだと思う。
ギィロがそんな言う事きくわけない……
「では、こちらをどうぞ」
私は既に上着を脱いでいるエルネストさんに模擬剣を渡した。
礼を言われ、庭の中央へと向かう。
「手加減しなくて良いですからね」
歩きながらエルネストさんからそう言われた。
まだ構えてもいないけど、剣を持ち慣れてるのは感じ取れた。
庭の中央で観客の方に一度視線を送ると、やっぱりギィロは覗き見るようにまだそこにいた。
「では、お願いします」
私から挨拶を交わし、剣を構える。
エルネストさんはとても落ち着いた構えをしている。
こっちからの打ち込みを待っているようだ。
立場的にそうしなければならないだろう。
初めから本気であたることなんてないんだ、私は小手調べで先に剣を振った。
弱く。
カッ、と音が鳴り、剣は振り払われ、型のような流れで反撃される。
私は身を翻してかわし、牽制の剣を突きだして一度距離をとった。
「遠慮しないでください」
落ち着いた態度のままそう言われた。
身のこなしや速度、力の入れ方や攻撃の仕方を見て、大体実力がわかった気がする。
「はい、わかりました」
私はできるだけ単純な軌道で剣を振った。
連続すると危なかったので、いちいち一拍置きながら受けさせるように続けた。
「私からもいきますよ」
エルネストさんの、"手加減をしています"というような自信が乗った剣を、ギリギリ防げたとなるようなタイミングで防ぎ続けた。
それが3回繰り返されたあと、私はめんどくさくなって被弾した。
私は、接待した。
「あ、ありがとうございました……」
「大丈夫ですか?」
「慣れていますから」
心配させないように応え、模擬剣を返してもらい、髭おじさんとマーニャさんのところまで戻る。
「悪くはなかったな。エルネスト、どうだったか?」
「安定した迷いのない剣でした。ちゃんと訓練すればもっとよくなります」
「そうか!期待してしまうな!はっはっは」
髭おじさんは自分の息子のカッコいいところを見たからだろうか、ご機嫌になって少し緩くなっているように思えた。
「では一旦ロビーに戻りましょう」
とマーニャさんが言ったため、私は模擬剣をギィロに返しに近寄った。
「わざとらしい」
剣を受け取りながら、ギィロがニヤケ顔で囁いてくる。
そんなことない。
演技は上手かった。
いや違うそこじゃない。
「やめてよ、聞こえるでしょ」
私はチラッと見ただけでギィロに背中を向けた。
そのままマーニャさんの段取りにより、私たちはロビーまで戻った。
「いいものを見させてもらったよ。リゼアノートさん、柊でやってみてほしいのだが、どうですかな?」
「私からもぜひ、まずは体験という形でお願いしたいです」
「は、はぁ……」
お二人は会った時よりリラックスしていて、顔が明るくなっている。
「リゼ、とても良い機会です。勉強にもなりますから、お力を借りに行きなさい」
「はい、わかりました……よろしくお願いいたします」
特に断る理由もないので、とりあえずやってみることにした。
「そう言ってくれると思いました!父さん!」
エルネストさんはとても喜んで、それを髭おじさんと共有している。
オーバーな気はするけど、そんなに喜んでもらえると気分は悪くない。
「うむ、よろしくお願いしますよリゼアノートさん。体験の間は息子に付いて学んでほしい。日程はまたお伝えしましょう」
「一緒に働けるのを楽しみにしています。よろしくお願いします、リゼアノートさん!」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
エルネストさんの出された手を取った。
被せるようにもう片方の手も添えられて、とてもさわやかな笑顔も付いてくる。
グッと握られた手は熱く、期待が込められているのを感じた。
柊のお二人は、私とマーニャさんに挨拶を行い、帰っていった。
「リゼ、素晴らしい機会に恵まれました。しっかりやるのですよ」
「はい」
もう行っていいということなので、すぐにロビーから出てその足で庭まで行った。
さっきの手合わせの不完全燃焼感がすごくて、思い切り振りたかった。
庭まで行くと、ギィロが待っていた。
「お願い、付き合って」
「いいぞ」
模擬剣を投げ渡され、本気でやってもあてることのできない相手に向かって思い切り振った。
「ははっ、安定した迷いのない剣だな!」
「ふざけないでよ」
私はスッキリするまで振り続けた。




