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エピローグ エドとマリア

 ――そして、数か月後。


「おはようございます、エドさん」


 アステの店のドアを開けると、チリンとベルが鳴るとともに、エプロン姿の金髪少女がエドを出迎えてくれた。


「こちらへどうぞ」


 人の座るテーブルの間を縫って、エドはカウンター席に座った。

 ほどなくして、少女がコーヒーを持ってくる。

 そのままエドがコーヒーカップを手に取り、口に運んでいくのを、少女はじっと眺めていた。


「あの、そんなに見つめられると飲みずらいんだけど」

「あら、なんのことかしら。私の淹れたコーヒーに、何の感想も言わなかったらどうして差し上げようか、考えていただけですわ」


 そう彼女が言い訳する間に、エドはコーヒーを一口飲んで微笑んだ。


「――とても美味しいよ、マリア。また一段と腕を上げたね」

「ふふ、ありがとうございます」


 マリアと呼ばれた少女は、エドの前で花のような笑顔を見せた。


 ――あの日、ティアーネ・フィア・レイシャは洞窟の崩壊事故で死んだことになった。

 それから死んだはずの王女は、マリアという偽名を名乗り、アステの店で働いている。


 マリアが働き始めるようになってからというもの、アステの店はそこそこ繁盛するようになった。

 今日だって、全部とはいかないまでも、過半数のテーブルが客で埋まっていた。

 ……正直なところ、以前の静かだったこの場所が懐かしい気もするが。


 外からドタドタと騒がしい足音が聞こえ、勢いよくドアが開いた。


「やっべ遅れるとこだったわ! すまんエド!!」


 店内中に響く声は、ファインのものだ。

 王女がいなくなったことで養子の話も白紙に戻り、彼はまた元の家から騎士学校に通っている。ちなみにまだ彼女はいない。


 テシャーナについてだが、王女の呪いを国王に隠していたこと、独断で婚約者を決め、死なせてしまった後も適切な対応をしなかったことなどをファインの父や、その兄から告発され、結局王妃の座を降ろされた後に国を追放されたそうだ。

 その時にナビスの契約も解いてもらい、ナビスは今アステの店に住みながら、普通の子供としての生活を送っている。


 ――もう、彼女を縛るものは何もなくなったのだ。

 アステと一緒にコーヒーを淹れたり、ランチを作ったりと忙しそうなマリアを眺めて、エドは一人感傷に浸っていた。


「――で、今日はなんのためにみんなを呼んだんですか~?」


 そんな声が聞こえて、エドは我に返り後ろを振り返った。

 先ほどのわざとらしい声は、大通りのはずれにある雑貨店の店主、スイだ。

 一緒のテーブルに座る、リトスライト家のメイド、レトと共にニヤニヤ笑っている。


 この店に来ている知り合いは、彼らだけではない。

 実はエドの両親もいるし、スティア家の執事のテトラにファインの父もいる。

 ほとんどが、エドたちが呪いを解く中でにお世話になった人たちばかりである。

 さすがに遠くてここに来れなかったパラノには、あとで手紙をしたためて今日のことを報告しようと思っている。


 スイの一声に、だんだんと期待の目がこちらに寄せられはじめ、エドは仕方なく立ち上がった。


「ちょっとこっちに来てくれるか?」


 エドが頼むと、マリアはエプロンを脱いでエドの方へ来てくれた。

 まだ何が起こっているのか理解していないマリアを店の中央へ連れて行き、エドはその前でひざまずく。


「――マリア」


 青と緑の目をまっすぐに見つめ、エドはマリアの名前を呼ぶ。

 ようやく状況を察したのか、ティアーネは一瞬頬を赤らめてから、小さく微笑んだ。


「はい」


 その唇の動きひとつ、瞬きのひとつに至るまでが、永遠に感じられるほど鮮明で、とにかく愛しい。


「本当に、ここまで色々あったよな。転生したり、呪いを解いたり……」


「おい、御託がなげーよ! 早く言えって!」

「そうですよ! みんな帰っちゃいますよ~」


 エドが自分の想いを語ろうとすると、周りからヤジが飛んできた。

 ……やっぱり二人だけの時の方がよかっただろうか、と後悔しながらエドは咳払いする。


「とにかく、ずっと待たせて……ごめんな、マリア」


 ポケットから指輪を取り出し、ティアーネの左手の薬指にはめた。


「俺と――結婚してくれないか?」


 それを聞いたマリアは、今にも泣きそうな笑顔を浮かべ。

 はにかむように、そして噛みしめるように、言った。


「――はい、これからもよろしくお願いしますね、エドさん」



 繋いだ手に、もう決して、離れ離れになることはないようにと祈って。

 二人は、最高の笑顔で皆からの祝福を受けた。





――――――――――――――――――――――――――――




 そこは、すべてが始まった場所。晴れ渡る空の下、無限に続く海は、きらきらと輝いていた。


「――で、僕の世界から二人も転生させて遊んだ感想は?」


 その声を聞いて、人魚の姿をした神様はそうね、と口を開く。


「最高だったわ。――やっぱりラブストーリーは、ハッピーエンドじゃなくっちゃね」


 幸せそうな二人が映る海面に、赤い花を添えて。

 神様は、嬉しそうに目を細めた。



 -完-

終わっ……ちまいましたわ……

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます!!

初めての長編、みさなんいかがだったでしょうか?

良かったよ! という方、クソだったよ! という方、どうか正直に評価してくださると今後の参考になりますので是非。

(ちなみに、一か月後あたりにイラスト付の後書きとか人物紹介が追加されたり、もしかしたら後々物語を修正したりするかもしれないので、ブクマ登録しておいてくださったらなー……とか言ってみたり)

評価・ブクマ登録していただけると作者が次の長編に取り組みます。

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