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元ネナベの俺と呪い持ちの王女~ネナベしてたら男に転生したので、呪い持ちの王女をナンパしてきました~  作者: 某人間S
第七の信託:得られたものから失ったものを差し引き、残されたものがすべてである
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53. ティアーネとファイン

「お母さま……」


 どうやら、王妃はエドの遺体を引き取りにきたようだった。

 王妃の他にも、側近らしき人物が何人か来ている。


「エド・ウィリアム・リトスライトの遺体はどこかしら?」

「――エドさんは死んでませんし、ここにはいません」


 ティアーネがはっきりとそう言うと、王妃は首を傾げた。


「それはおかしいわね。……あの報告は嘘だったの、ナビス?」


 王妃はティアーネの後ろからついて来ていたナビスの方に目を向ける。


「いえ、エド様の体は、確かにこの場所にありました。でも……」

「でも、なんなの?」


 嘘のつけないナビスを問い詰める王妃に、ティアーネは思わず間に入るように前に出た。


「――いなくなってしまったんです、突然」

「そう。――別にそれならそれで構わないわ。とにかくあなたの呪いが解けたのだもの。それを先に喜ばないとね」


 エドがいないことより、呪いが解けたことの方が王妃にとって重要だったようだ。


「それでは帰りましょう、ティアーネ。実はね、私新しい婚約者を探しておいたのよ」


 そう笑う王妃にぞっとした。

 しかし、昨日見た神様に比べれば、どうってことはない。


「――嫌です。私は、エドさんを探さなければなりません」


 初めての娘の明らかな反抗に、王妃は眉をひそめる。


「あなたに、拒否権はないの」


 王妃が手を上げると、後ろで待っていた側近がティアーネを囲む。

 ティアーネは男たちを睨みつけるが、到底敵いそうもないのは明らかだ。


 アステの店で魔法を使うわけにもいかず、ティアーネは大人しく王妃に連れていかれるしかなかった。




 王城に帰ってきてすぐに、婚約者と引き合わされることになった。

 憂鬱な気分だ。いくら新しい婚約者と言ったって、ティアーネはさらさら結婚する気はない。


 前に着ていたような仰々しいドレスに着替えさせられ、中庭のテーブルで婚約者が来るのを待っていた。


 少し離れた所に立つナビスを見る。

 婚約者と会っている間、近くにはナビス以外の監視を置かないという約束は取り付けたので、隙を見て逃げようと、そう思っていた。


 しばらく待っていると、王妃が新しい婚約者を連れてやってきた。

 正装に身を包んだ、藍色の髪の青年。


「こちらは、ファイン・アーデリッヒ・スティア。この前の婚約者――カインの弟よ」


 その顔を見て、ティアーネは息を飲んだ。

 

 この人は――エドの親友ではないか。


「初めまして、ファインさん。私はティアーネ・フィア・レイシャと申します」


 驚きを悟られないようにしながら、ティアーネはドレスの裾を掴んで頭を下げた。

 こういうときばかり、ずっと悪女を演じてきて良かったと思う。


「――それでは、あとは2人で」


 王妃は満足そうな顔で中庭を後にした。


 テーブルの向かいに座った二人に、少しの間沈黙が流れる。

 ファインがため息をついた。


「おい……エドはどうしたんだよ」


 当たり前の質問だった。


「それは……」


 一度ティアーネが言いよどむと、ファインは立ち上がってテーブルに勢いよく手をついた。


「エドはどうしたって言ってんだよ!!」


 ファインが怒鳴る。


「落ち着いてください、ファインさん」


 ファインが焦っているように、ティアーネも心の中では焦りを感じていたが、膝の上で手を握り、静かな声でファインをなだめる。


「……あなたは、どこまで知っているのですか」


 そうティアーネが続けると、ファインは手をついたまま答える。


「一昨日、あいつが話をしにきたんだよ……第六の信託の話だ」


 そのときのことを思い出して、ファインは表情を険しくする。


「俺は反対したんだが……絶対に帰ってくると約束して、エドの野郎はお前さんのとこに行ったんだ」

「そう、だったんですね……」


 なら、ファインはほとんど知っているということだ。ティアーネはファインを椅子に座らせ、その後の話を淡々と話した。


「――そして、エドさんが突然いなくなってしまったんです」


 そこまで話したティアーネを、ファインが睨む。


「――で、お前はそれでのこのこ、こんなとこまで来たってのか?」


 さすがに、その言葉には腹が立った。


「そんなことはありません!」


 今度は、ティアーネが立ち上がってファインに怒鳴る。


「私だって何かしなきゃいけないのは分かってるんです! ずっとずっと、エドさんのことを考えて……それでも……」


 ――何も出来なかったんです!

 心の中の自分がそう叫ぶのを聞いて、ティアーネは泣きそうになってしまった。

 そうだ。自分は何も出来ていない。このままでは、ただの――

 何も言えず、ティアーネはただ肩を上下させる。


「…………悪かった」


 そんなティアーネの様子を見て、ファインは後悔するように首を振った。


「そうだよな。仮にもあいつが愛した人だ。当然悩んでるに決まってる」


 そう言われると、少し恥ずかしい気もするが、不思議と心が落ち着いた。

 ティアーネは何度か深呼吸したあと、背筋を伸ばして口を開いた。


「まだ終わりではないと、私は考えています。――だから一緒に、エドさんを取り戻す方法を探してくれませんか」

「――おう」


 ファインは、力強くうなずいてくれた。

え、6話投稿するには遅すぎる時間だって? まさか

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