51. 失踪と来訪
「ナビス!」
ティアーネが駆け寄っていくと、ナビスが抱き着いてきた。
なかなか帰ってこないティアーネを心配して、ここまで探しに来てくれたのだ。
「よかった……探したんですよ」
「わ、私はここにいます。大丈夫ですよ」
泣きそうな声でつぶやくナビスの頭を撫でる。
ティアーネが無事だったことに安堵したナビスは、ティアーネに抱き着いていたことに今更気づいたのか、恥ずかしそうにしながら離れた。
「そ、そうでした、姫様」
何か伝えたいことがあったのだろう、それを思い出してナビスが口を開いた。
しかし、先にスイに止められてしまう。
「ごめんなさい、話なら、奥でやってもらった方がいいと思います……もうそろそろお客様も来るので」
そうだった。ここは店先だ。
スイに謝りながら、二人はバックヤードまで通してもらった。
「それで、どうしたのですか、ナビス」
「その、エドさんが……」
ナビスは迷うように一度口を閉じた後、まっすぐにティアーネを見た。
その先は聞きたくない。そう一瞬のうちにティアーネは思ったが、ナビスはそう待ってはくれなかった。
「――エドさんが、いなくなってしまったのです!」
「――え?」
予想もしなかった言葉に、ティアーネは目を丸くする。
「そ、れは――どういうことですの!?」
ティアーネはナビスに詰め寄る。そんなティアーネの様子に少しおびえながらも、ナビスが状況を話してくれた。
ティアーネと別れた後、しばらくアステの店の部屋にいると、エドの体が突如として消えたらしい。
それは瞬きした一瞬のことであり、何が起こったのか、まったく理解できなかったという。
とりあえずティアーネが帰ってくるのを待っていたが、一向に帰ってくる気配はない。
だから、頑張ってティアーネを探しに来たという次第だった。
「ごめんなさい……僕、せっかく任されていたのに……」
消え入りそうな声のナビスの肩を強く握っていたことに気づき、ティアーネは手を離した。
「私こそ、怒鳴ってしまってごめんなさい。……でも、エドさんが消えたのはあなたのせいではないわ」
そう言って、ナビスを慰める。
突然のことで焦る気持ちはあったが、そのおかげで、思考の負の連鎖からは立ち直れた気がする。
”彼消えたのちに”というのがこのことなのだとすれば、まだエドが死んでいない可能性がある。
当然、意識を取り戻したのなら真っ先にティアーネに会いにくるはずなので、無事というわけでもないはずだ。
エドはどこに行ったのか、一体何が起こっているのか。
まだ何も手がかりは掴めていないが、”エドが生きているかもしれない”という希望が、ティアーネの心に光を灯す。
……まだ、すべてが終わったわけではないのだ。
「まずは、一度帰りましょうか、ナビス」
ナビスの手を引いて、ティアーネは部屋を出た。
「本当に、ありがとうございました、スイさん。今は何も話すことができなくて、すみません」
「別に構いませんよ。まあ、扉がなくなってしまったのは残念でしたけど――代わりに、今度またウチの店に来てくださいね」
「――はい、もちろんです」
最後まで優しかったスイにお礼を述べ、二人はアステの店に向かったのだった。
アステの店に着いた後、念のため二階のベッドを確認するが、やはりエドはいなかった。
「ドアが開いた音もしなかったのですよね?」
ティアーネが尋ねると、ナビスはこくりとうなずいた。
となると、やはりエドはなんらかの魔法か、神様の力によって消えてしまったのだ。
どこかに、エドを取り戻す手がかりがあるはず。
そう信じて――信じざるを得ない――ティアーネは、必死に考えを巡らせた。
――その時だった。
下の方から、チリンとベルの鳴る音がする。
誰だろうと思いながら、ティアーネは部屋を出て階段を下る。
アステが帰ってきたのか、それとも――
店の中に入って来た来訪者は、ティアーネの方を見て笑みを浮かべた。
「――あら、もう呪いは解いてしまったの? 早いわね、ティアーネ」
【悲報】こっから結構長い
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