表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元ネナベの俺と呪い持ちの王女~ネナベしてたら男に転生したので、呪い持ちの王女をナンパしてきました~  作者: 某人間S
第七の信託:得られたものから失ったものを差し引き、残されたものがすべてである
56/66

50. 終わりと再会

 花冠が枯れて、ばらばらに海にばらまかれる。波が、花冠の残骸をさらっていった。


「――まだ早いけど、これでお別れね、ティアーネちゃん」


 神様の笑う声が、やけに頭に響く。


 神様が手に持っていた角笛を落とす。それはティアーネの足元に落ち、海水に溶けて黒い水がティアーネの足にからまった。

 同時に、体が沈み飲み込まれていく感覚。


「本当に、美しい顔をするわ、貴方」


 溺れていく視界の中で、そんな神様の声が聞こえた。




 気が付くと、それは最後にティアーネがいた場所に戻っていた。

 あの扉があった場所だ。

 しかし今は、最初から何もなかったのかのように、さびれた空間があるだけだった。


 海水に濡れたはずの靴も服も髪も、すべて乾いた状態に戻っている。

 ただほどかれたままの金髪が、先ほどまでの体験が嘘ではなかったことを証明している。

 自分の手を見る。何も持っていないその手は、わなわなと震えていた。


「これで――終わり、なんですか?」


 そう呟いた自分の声は、酷く小さかった。



「――ど、どうしたのですか!?」


 呆然としていたティアーネに、誰かが声を上げて駆け寄ってきた。

 その人物には見覚えがある。


「………スイ、さん」


 名前を呼ばれた彼女は一瞬首を傾げるが、すぐにティアーネに会ったことがあると気付く。


「あなたは――あのときの! 一体、何があったんですか?」

「それは……」


 答えようとするティアーネは、よっぽど顔色が悪かったのだろう。


「聞いてしまったところごめんなさい! 先にこっちに」


 と、スイはティアーネの肩を抱いて向かいの建物に連れていった。

 スイはティアーネを中に入れると、扉にかけられていた看板を裏に返す。

 建物は雑貨店だったようで、食器から玩具まで、様々なものが所狭しと置かれていた。


 スイは奥の方までティアーネを連れて行き、バックヤードまで行くとそこにあった椅子にティアーネを座らせた。


 パサリと毛布を掛けられる。


「ちょっとそこで待っててください」


 そう言ってスイはさらに奥の部屋にいくと、しばらくして一つのカップを持って帰ってきた。


「こんなものしかなくてごめんなさい。よかったら飲んで」


 手渡されたそれは、温められたミルクだった。


「本当に何があったのかは気になりますけど――」とスイはティアーネを見つけた経緯を語ってくれた。


 聞けば、スイは朝起きた後、扉が光輝くのを店の中から見ていたそうだ。驚いてこちらに来たはいいものの、もうそこには何もなかったらしい。

 どうしたものかとうろうろしながら歩いていたら、突然そこにティアーネが現れたのだという。

 青ざめた表情のティアーネを心配し、スイはとりあえず店にティアーネを上げることにした……ということだった。


「とりあえず、落ち着くまで休んでてくださいね」


 そう言って、スイはティアーネのことを一人にしてくれた。



『得られたものから失ったものを差し引き、残されたものがすべてである』


 何度も何度も、ティアーネは頭の中で信託を反芻(はんすう)する。


 確かに、ティアーネの呪いは解けた。けれど、エドが言っていたようにはならなかった。

 神様の告げた最後の信託が、すべてを決定づけてしまっている。

 嘘だと思いたかった。せっかく告白してくれたエドは、失われてしまったのだ。


 自分が弱かったからこうなったのだろうか。神様に何か言い返していたら、こんな結果にはならなかったのだろうか。


「私、何を間違ってしまったのでしょう――」


 何を後悔すればいいのかも分からず、ティアーネは肩を震わせることしかできなかった。


 どうしたらいいの、と心の中で何度も繰り返す。

 こんなところで絶望している場合ではないと、頭では分かっていた。


 しかし焦りが募っていくばかりで、脳は思考しようとはしてくれない。


『俺は、そんなティアを信じてる』


 エドの顔が脳裏に浮かびあがり、また涙が零れる。

 

「エドさん…………」


 そんな風に言われたのに、何もできなかった自分が情けなくて。


 結局、その日はスイの店に泊まらせてもらうことになった。

 事情を知らないはずのスイは、そんなティアーネを迷惑がることもなく、親身になって世話をしてくれた。

 本当はアステの店に帰るべきだったのだろうが、そこで死んだエドが待っているかもしれないことを考えると、恐怖で足がすくんでしまうのだった。


 ごめんなさい、とティアーネが謝ると、スイはいいんですよ、と笑った。


「商売柄、礼儀は一番大切にしてるので。困ったときはお互い様ですよ」


 何があったのかは気になるはずなのに、スイはあれから一切ティアーネに事情を聞いてくることはなかった。


 

 次の日。ティアーネが起きると、入口の方でスイと誰かが喋っている声が聞こえた。

 聞き覚えのある、少年の声。


 ティアーネはベッドから飛び起きて、声のする方へ向かう。

 バックヤードの扉を開けると、声の主はティアーネにすぐに気づき、声を上げた。


「――姫様!」


 そこには、焦った様子のナビスが立っていた。


記念すべき50話目!! まだまだ話は終わらねーぜ!!!!

評価・ブクマ登録していただけると作者が授業中眠らずにすみます、たぶん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ