43. 大切なものと親友
しばらくして、ファインの家に着いたエドは、深呼吸してからドアを叩いた。
「……エドか。どうした? また何かあったか?」
そう出迎えてくれたファインに、「大事な話がある」と言うと、ファインは表情を変える。
「分かった。とりあえず上がれよ」
またいつものように、エドはファインの自室まで上がらせてもらった。
「……で、大事な話ってなんだ? 何か、その……分かったことがあったとか、か?」
その言葉には、少しだけ動揺の色が見えた。何故だろうとは心の中で思いつつ、エドは口を開く。
「分かったのは次の信託についてだよ。昨日――」
それから、エドは昨日起こった出来事と、それで判明した信託の真実をファインに話した。
始めこそファインはいつも通り真剣に聞いていたが、話が進むにつれ、次第に血の気が失せていった。
ファインは、もうエドの言わんとすることに気づいているのだろう。
「おい、まさかお前…………」
そうすがるようにこちらを見るファインを見て、エドはこの時が来た、と思いながらも迷わず言葉を発した。
「そうだ。俺は信託に従って、扉の前でティアに告白するつもりだ」
ファインはがくりと肩を落とすと、静かな声でエドに尋ねた。
「なあエド、本気なのか? それは……」
「本気だよ。悩んだ末に出した結論だ」
「なんでだよ、エド……そもそもお前、王女様のことは好きにならねえって言ってたじゃねえか……」
ファインの言っていることはもっともだった。しかし、消え入りそうな声で吐かれたその言葉を、エドは首を振って否定する。
「あのときの俺が間違ってたんだ。……でも、ようやく気づけたんだ」
「……そうかよ。なあ、参考までに聞いていいか? お前がどうしてその結論に至ったのか」
ファインの問いに、エドは昨日の夜と今日の朝に考えていたことを答えた。
「俺さ、この前お前に自分を大事にしろ、って言ったよな?」
「覚えてる。ちゃんと自分の気持ちを最大限に尊重した結果だ」
エドの態度と、その言葉を聞いて、ファインは椅子を倒しながら立ち上がった。
「そういうことを言ってたんじゃねえ!」
目の前に座るエドの襟を掴む。
「一番大事なのは自分の命だろ!? 死んだら自分の気持ちも何もかも無駄だ!」
感情のまま叫ぶファインに、エドと負けじと言い返す。
「じゃあお前は、俺に自分のために一番大切な人を見殺しにした罪を背負いながら、一生苦しんで生きろとでもいうのか?」
「それは王女様も同じだろ! お前が死ねば、そいつはお前を殺したことになるんだぞ」
「ティアは悪くない! 悪いのは呪いをかけた神様だ」
「それで王女様が納得できると本当に思ってるのか?」
「納得できるように、最初に説得しておけばいい」
自分の主張を曲げようとしないエドに埒が明かないと思ったのか、ファインはエドの襟を掴んでいた手を緩めた。
ファインは覚悟を決めるように息を吐き出す。
「お前、それで呪いが解けたとして、王女様がどうなるか考えたことはあるか?」
「当然だろ。俺のせいでティアが悲しむのは忍びないけど、さっきも言ったように最大限悲しませないように努力はする」
「それだけじゃねえ。もうそいつには、新しい婚約者がいるんだよ」
「それがどうしたんだ―――というか、なんでお前がそれを」
ファインの口から吐かれた言葉に、エドが目を見開いてそう言うと、ファインはその答えを――残酷な真実をエドに告げた。
「……しばらく前に、俺の従兄が死んだんだ」
――その言葉だけで、エドはすべてを察してしまった。
なおも、ファインは続ける。
「俺はその家の養子になることが決まったんだよ――理由は、従兄が婚約していた人の、次の婚約者になるためだ」
ファインは、怒りと悔しさの交じった表情でエドを見た。
「王女様の次の婚約者は――俺なんだ」
大事な場面なのに語彙力くんが息してません。オワタ
評価・ブクマ登録していただけると作者が蘇生魔術を使えるようになるかもしれせん。




