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41. 迷いと手紙

 ――エドは迷っていた。


 明かりを消した自室で、月明りの差す窓に寄りかかりながら、祭りの一夜目を終えた街を眺める。


 どうにか、二人とも生き残る道を考えようとはした。


 呪いを解かずに、二人で遠いところへ逃げるか? ――王妃がどこまで執着して殺しにくるのかも分からないし、呪いを解かないまま二人で過ごしたとして、呪いが発動するリスクを抱えたまま一生を過ごすのは、お互いにとって辛いだろう。


 扉の前での告白をどうにかはぐらかして、呪いだけ発動しないようにするか? ――やってみる価値はあるが、成功する確率は極めて低いだろう。


 それならいっそ、ティアーネだけがここから逃げて、お互い金輪際関わらないようにするか? ――ティアーネはもちろん、もしかしたらティアーネが呪いにかかっていることを知ってしまったエドも、命を狙われ続けることになるかもしれない。

 

 何度考えようが、確実な方法はエドには思いつかなかった。


「前世は26歳で、今度は16となると……合わせて42か」


 もし、自分が死ぬとしたら――――という想像をして、エドは呟く。

 それくらいまで生きられたのなら、十分かもしれない。

 しかし二度目の人生は前世に比べればずっとずっと幸せで、それを手放してしまうのは惜しいと思う自分もいる。――しかも今度は、自分が死んだら悲しむであろう人たちもいるのだ。


「もしそうなるとしたら、周りの人にどう説明するかも考える必要もあるか」


 何も言われずに残された人がどうなるのか、エドは十分に知っている。

 真っ先に思い浮かんだのは、ファインのことだった。


「――あいつ、不器用だけど優しいやつだからな……」


 エドがティアーネのために死ぬなんて言ったら、全力で反対しにくるだろう。

 もし自分が死ぬという決断をしたなら、彼に反対されてでもその決断を押し通さなければならないのだ。


 ……このままでは、答えなど出そうもない。

 誰かに相談でもするか?


「明日、アステさんにでも話に行くか……」


 少し迷ってからそうすることにして、エドは寝ることにした。




 次の日。エドはティアーネに鉢合わせないことを祈りながら、アステの店の扉をそっと開いた。

 ……暗い。


 いつもなら、この時間にはアステが店の準備をしているはずなので、これはおかしい。

 そう思いながら店内を見回して、驚きのあまり声を出しそうになってしまった。


 ティアーネが、隅の方のテーブルに座っていたのだ。

 しかし、よく見てみればテーブルの上に突っ伏したまま眠っているようだ。

 まだ気づかれてはいない。エドは胸をなでおろした。


 それにしても、何故アステがいないのだろう?

 何やら店内も普段よりきれいにされているし、もしいたのなら、寝ているティアーネに毛布の一枚くらいかけているだろう。

 

 もう少し探してみれば、カウンターにある一枚の紙が目に入った。

 どうやらそれは手紙のようで、既に開かれた状態だった。

 エドは手紙を手に取り、その綺麗な文字で書かれた文章を読み始めた。



 これを読んでるみんなへ


 突然いなくなっちゃってごめんね。何があったかっていうと……詳しくは言えないけど、話をつけなきゃいけないやつがいてね。たぶんこの一件が終わるまで帰れないかも。

 店に置いてあるのは何でも使っていいから。まあ壊さない程度に使ってね。

 あとは特に書くことないかなあ。あたしのことは特に気にしなくていいってことで。

 なんで今更いなくなったのかについては――今までみんなには色々言ってきたけど、もう大丈夫だと思ったから。

 答えはもう、みんなが知ってるはずだよ。


 アステ



 読み終わった手紙を、エドはそっとテーブルの上に置く。

 アステに話が聞けないのは残念だったが、あちらはあちらで事情があるのだろう。

 エドはため息をついて、これからについて思案することにした。

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