表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/66

40. 信託の真実と逆光

 スイに連れられて行った先には、扉を模した古めかしいオブジェが建っていた。

 ところどころ苔が生えていたり、ツタがはっていたりするが、よく見れば美しい装飾が施されている。


「すごいでしょう、これ」

「そうですね……街にこんなものがあるなんて知りませんでした」

「私もです。本当に――」


 エドとティアーネが感嘆の声を上げる。オブジェの装飾にではなく、これが信託にあった”扉”かもしれない、という期待感にだ。


「それで、その"お願い"というのは何ですか?」


 早く話の先を聞きたいエドが聞く。

 そうでしたね、とスイは得意げに語りだした。


「私も存在は知れど、これが何なのかは全くわかりませんでした。……しかしですね、最近になって調べてみたら、この扉にまつわるすごい話があったんですよ。――お二人とも、建国神話についてはご存知ですか?」

「ええ、確か今の王家の祖先にあたる、初代の王と王妃が二人で建国したと――」


 ティアーネが答える。大正解です!とテンションの上がっているスイが拍手した。


「――実はこの扉、その当時からあったものらしく……なんとここ、その初代王が王妃と()()()()()()()()()()()()()()()()()場所なのです!!」


 何故今までこの事実が知られていなかったのでしょう!とスイは更に続ける。


「きっとこれは新たな恋人たちの聖地として人気になりますよ! ――ということで、お二人にはその宣伝のためにちょっとそこで……あれ、(わたくし)……何かまずいこと言っちゃってますか……?」


 ようやく、エドとティアーネの顔面が蒼白になっていることに気づいたスイが、遠慮がちに尋ねた。

 しかしなおも黙り続ける二人に、何も知らないスイは困惑の色を浮かべる。

 先にティア-ネが我に返り、慌ててスイに頭を下げた。


「――あの、ごめんなさい。少し、こちらにも事情があって……」

 

 呆然とする彼女を置いて、ティア-ネはエドの手を引っ張って逃げ出した。




「――もうやめにしましょう、エドさん」


 人気のない路地まで来たところで、突然立ち止まったティアーネはエドにそう告げた。


「でも――」

「やめにしましょうって言ってるんです!」


 泣きそうな声で、ティアーネはそう叫んだ。


「私のせいでエドさんが死んでしまうなんて……そんなの耐えられません……」

「ちょっと落ち着けティア! まだそうだと決まったわけじゃないだろ! それにそんなことしたら今度はティアが……」


 エドはティアーネの肩を掴む。ティアーネの震えが、手を通して伝わってきた。


「じゃあなんだって言うんですか……教えてくださいよ……」


 スイの話を聞いて、二人が同時に考えたこと――信託にあった”新たな真実”とは”エドがティアーネのことを恋愛的に好きになったこと”であり、その真実をティアーネに伝えれば”扉は答えを”示すということだ。


 ――そしてそれは、エドがティアーネの呪いにかかって死ぬことを意味する。


 それ以外に何があるのかと聞かれ、エドは答えられずに押し黙ってしまった。

 遠くから聞こえる、祭りの喧騒だけが二人を包む。


 はあ、とティアーネが久しぶりにため息をついた。


「……たしかに、少し焦りすぎていたかもしれませんわ」


 その眼には、平静さを装うための冷たさを宿して。

 ティアーネはエドの手をそっと押しのけた。

 エドも肩を降ろし、大人しく手をどける。


「じゃあ――」

「今話し合っても、きっと無駄でしょう。私たちに必要なのは、きっと一人で考える時間です」

「……そう、か」


 エドがそう言ったのを聞き届けたティアーネは、背筋を伸ばして大通りに向けて歩き始めた。


「もともと集まるはずだった明後日の日に、また会いましょう」


 最後に、エドの方を振り返る。


「――今日は、本当に楽しかったです。私のわがままに付き合ってくださり、ありがとうございました」


 逆光の中でなお眩しく見えるその微笑みに、どれほど複雑な思いが宿しているのだろう。

 ティアーネが祭りで賑わう人々の間に消えていくのを、ずっと眺めていたエドは、下におろしたままの手を固く握りしめた。

三連休ブーストで完結の目途が立つといいのですけど。

評価・ブクマ登録していただけると作者の精神力がUPするかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ