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39. ダンスとお願い

「ところで……ナビスはどうしたんだ?」


 てっきり来るものだと思っていたものだから、気になっていたエドはティアーネに尋ねた。


「せっかくの休みなのに、働かせるのはかわいそうでしょう? 私から説得して休んでもらってます」

「え、じゃあ俺は……?」


 一応、名目上はティアーネの護衛として来ているエドが自分を指さす。


「さあ。あなたに人権があると思って?」


 ティアーネが口元に手を当てて返した。まあ、あくまで冗談であることは知っているが。


 そんなやりとりをしながら進んでいくと、大通りにはたくさんの出店が並んでいるのが見えた。


「エドさん、あそこ見てください」

「あれはもしかして――俺らが初めて会った日の店の」


 ティアーネが指さした先には、初めて会った日、エドとティアーネが食事をした店の出している出店があった。


「夕食、あそこで買って食べるか?」


 そう言うと、ティアーネは首を振った。


「まだ夕食には少しだけ早いでしょう? それに、まだまだ出店はたくさんありますから、ゆっくり見て回りましょう」


 ほらあそこ、人がたくさん集まってますよ、とティアーネが街の中央の広場に向けて足早に進み始める。

 色々思うところはあったが、ティアーネが楽しめているならそれでいっか……とエドは思いながらティアーネに着いていった。


 広間では、国の合奏隊が奏でる音楽に合わせて、人々が楽しそうに踊っていた。

 エドはティアーネの方を向いて手を差し出す。


「俺と踊っていただけますか、お姫様?」

「……足など踏んだら許しませんよ」


 ティアーネは口の端を上げて、エドの手を取った。


 ゆるやかに曲調を変化させていく音楽に合わせながら、エドたちは人々に混ざって踊り始めた。

 お互いに社交ダンスはある程度たしなんでいたので、足がもつれることもなくスムーズに歩を刻んでいく。


 暗くなっていく空に、暖かい色の街頭がぽつりぽつりと点いていった。

 自分たちが少しずつ大衆の目を惹き始めていることにも気づかないまま、二人は踊る。

 この時間がずっと続けばいいのにと、ティアーネは――エドでさえも、そう強く願った。


 とてもとても長く、しかし一瞬に思えた時間は、演奏の休憩と共に終わりを告げた。

 手に触れる暖かさに名残惜しさを感じながら、二人は向かい合ってお辞儀をする。


 周囲からの拍手が自分たちに向けられていることにようやく気付き、エドとティアーネは逃げるように広場から抜け出した。


「まさか、あんなに注目されていたなんて……」


 息を切らしたティアーネが恥ずかしそうに手で顔を覆う。よく考えてみれば、顔の良いお似合いの男女があれだけ楽しそうに踊っていたのだから、人が集まってくるのも当然だった。


「呪いを解いてるうちは命は狙われないって言っても、あんまり目立つのは良くなったよな……」


 エドはうかつだったなと心の中で反省する。ダンスに夢中になっていただけだったので恥ずかしい限りだ。

 気まずい雰囲気が二人の間に流れる。

 エドがわざとらしく咳払いをした。


「そういえば、あそこの出店、ティアも気になってただろ? ちょっと買いに行こうか」

「……は、はい。そうしましょう」


 気を取り直して、二人は先ほどの出店に向かって歩き出す――が、後ろから呼び止められてしまった。


「あのーすみません、お二人さん」


 二人同時に振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。

 長い髪はきっちりとまとめられており、服装もシンプルなものだった。おそらく祭りを楽しみに来た人ではなく、どこかの出店で働いている人なのだろう。


「はい。どうしましたか?」


 ティアーネがそう尋ねると、女性はほっとしたように話し始めた。


「先ほどのダンス、とってもよかったです! 本当にお上手でしたし、皆さん見惚れてましたよ」

「それは……ありがとうございます」


 苦笑いしながらエドが返した。勢いのまま、女性は手を合わせて詰め寄ってくる。


「そんなお二人に、ちょっとお願いがあるんですよ」


 何のことだろうと二人が顔を見合わせていると、女性は話を聞いてくれそうな気配を察したのか、更に話し続けた。


不躾(ぶしつけ)な質問だとは心得ていますが――お二人は、その、恋人同士……でしょうか?」


 エドがせき込む。


「いえ、別にそういうわけでは……」


 ティア-ネも慌てて両手を振りながら否定する。

 「それは失礼しました」と女性が頭を下げた。

 一度直りかけていた雰囲気が、また元の状態どころか、より気まずくなる。


 そんな様子のエドたちを見て女性はなにやら「これはいける」とでも思ったのか、申し訳なさそうな雰囲気を装って口を開く。


「別に恋人同士というわけでなくても、ちょっとお手伝いしていただきたいことがあってですね……。本当にすぐ終わりますので、どうか」


 しかしエドたちとしても、どうしてもこの場を切り抜けたかったので、彼女の思惑に乗ることにした。

 女性はあからさまに顔を明るくさせ、ありがとうございます!と微笑んだ。


「――申し遅れましたが、(わたくし)、スイと申します。どうぞお見知りおきを」

「俺はエド、です」

「ティアです」

「エドさんとティアさんですね。――とりあえず、お二人に見ていただきたいものがあるので、こちらへ」

あれ、寝る前(二時くらい)に投稿したはずなんだけどな……

評価・ブクマ登録していただけると作者の睡眠時間が伸びます――いや……伸びちゃダメか……???

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