26. Phiisとエド
marriaが告白した、あの日。
千里は驚きながらも、実はチャットでちゃんと真実を話していた。
あれから、一度でもログインできたのなら……とティアーネは思った。
しかし、あの日のことを思い出してやはり無理だったことに気づき首を振る。
……それから鏡に映し出されるものを、ティアーネは目をそらしたくなるのを必死に堪えて見ていた。
marriaがログインしなくなってからしばらく、千里はずっと落ち着かない様子で日々を過ごしていた。
会社から帰ってすぐゲームを開き、marriaから何も返事がないことを確認しては落胆していた。
気にしすぎてもダメだろ、と千里が自分に言い聞かせているのを見て、余計に胸が痛くなる。
少しの間は他のフレンドとも遊んでいたが、次第にゲームを開くことも少なくなり、しばらくは時折ログインするのみに落ち着いた。
当時のmarriaは自分だけだと思っていたが、確かにPhiisにとってもゲーム内でのあの関係は大きなものを占めていたのだ。
そんなことに今更気づいて、嬉しくなってしまう自分を殴ってしまいたい。
千里が仕事のみに熱中する期間が過ぎ去り、ようやく少しずつだがゲームにも復帰するようになった。
でもやはり、時折思い出したようにフレンド欄を確認しては、まだ気にし続けている自分に呆れたように苦笑いをこぼしていた。
「――全部、私が悪かったのに……」
あんときは自分も悪かったのかな、なんて独り言をつぶやく千里に、思わずそう言ってしまう。
しかも、ティアーネの考えが正しければ、この後千里は……
鏡に、千里が死んだ日に見た夢が映し出される。正体の分からない”神様”との会話。
神様と直接会話をしているのにも驚きだったが、それよりも――
『――一人、どうしても会いたい人がいます。大切なことを、何も伝えられなかった人が』
その言葉に、思わず涙が出そうになってしまった。
男に転生したことへの驚きは想像に難くない。
しかし、心なしか前世より楽しそうな気がした。
普通に恵まれた家庭に生まれ、学校では親友もできて、前世では経験できなかった青春を謳歌している。
わざわざ、自分に会うために頑張る必要なんかなかっただろうに。
そう思うと、複雑な気持ちになった。
自分に初めて会った日、まさかナンパ勝負をしていただなんて笑ってしまった。
今回は、彼を支えてくれる人がいる。
それが分かって安堵するのと同時に、エドの親友――ファインの姿を見て、少しだけつらい記憶を思い出してしまった。
ティアーネの呪いで死んでしまった婚約者の彼も、似たような藍色の髪だった。
自分がここまでのエドの記憶を見たということは、彼もまた、”あの記憶”を見てしまっているだろう。
ティアーネのついていた嘘が、これですべて知られてしまうのだ。
これからどうしようかと悩む。ここへ来るとき、馬車でエドが言おうとしていたのは前世のことだったのは分かった。自分の早とちりに恥ずかしくなる。
まあ、ここまで悪女のようなものを演じてきて、今更なような気もするが。
しかしエドが呪いの内容をほとんど分かった上でそれを言おうとしてきたのなら、もしかして呪いについてはもう心配しなくていいのだろうか?
ティアーネがこれまで一人で頑張ってきたのは全部無駄だった……というより、もう大丈夫なんだという安堵が勝つ。
エドがティアーネのことを好きになることはない――その事実が明らかになったから。
「これで終わり、ですか」
そう呟くと同時に、鏡に映っていた景色が消え、代わりにティアーネの姿が映る。
そこに映った自分の表情を見て、逃げるように目をそらした。
「もう何も心配することはないのですから……本当によかったですわ」
早く書かないと締め切りが……うっ(絶命)
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