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13. 牡牛と宵闇

 数分後。


「――なんでこいつ、私しか狙わないのよ!?」


 ティアーネが真横に走り去った後を、魔獣がいきおいよく横切っていく。


 何故か魔獣は最初から他のものが目に入っていないかのように、ずっとティアーネばかりを追い続けていた。


 ティアーネが走りながら手を上げると、魔獣の上空に無数の氷の刃が出現する。

 手を振り下ろせば、刃は突進してくる魔獣に向かって襲いかかる。

 しかし魔獣は器用にそれら全てを避けると、またティアーネの方へ一直線に走り始めた。


「エドさんも早く助けてください! 突っ立っていても何の役にも立ちませんわ!」

「さっきから攻撃はしてる! こいつ、こっちに見向きもしないんだ!」


 エドが石を投げるが、魔獣の肩に当たって彼方へと吹き飛ばされてしまう。魔獣は気にも止めていない。

 既に火妖精と風妖精も使ってはいるが、ほとんど効果はなかった。そもそも妖精を操るのはむずかしく、あんなに俊敏に動き回る魔獣に対して上手く当てるのは難しい。


 魔獣は、ティアーネとさらに距離を詰める。


「――姫様!!」


 つい先程離れさせられてから、なかなかティアーネに近づくことのできなかったナビスが叫ぶ。


「もうっ!!」


 ティアーネが怒りながらも自分の目の前に氷の壁を立てると、魔獣が一瞬足を止めた。

 しかし、すぐに方向転換して走り出してしまう。


「どうしたら……」


 エドは悩むが、このままではティアーネが魔獣の角の餌食にされてしまうのも時間の問題だ。


「せめて動きを封じることが出来れば――」


 あのスピードでは、正面から剣で立ち向かうことすらできない。


 魔獣の動きを見る限り、ティアーネの氷魔法ならいくばくか効果がありそうである。


「氷……魔獣……角……牡牛――真昼の宵闇」


 "真昼の宵闇は娘を抱く

  牡牛の角が届いてしまわぬように"


 ふとあの詩を思い出して、エドは1つの可能性に気づいた。

 泉の方へ走りながらエドは叫ぶ。


「ナビス! ティアをここまで連れて来れるか?」

「――? わ、わかりました!」


 ナビスはすぐさま返事をすると、思い切って走りだし、ティアーネを抱えてこちらに向かってきた。

 走る速さだけでいえば、魔獣よりナビスの方が速い。


 当然、魔獣もこちらに走ってくる。


「――ティア、ごめん!」


 隣に降ろされたティアーネの腕を掴み、引っ張る。


「な――」


 突然引っ張られたティアーネが体勢を崩し、泉に尻もちをつく。

 バシャリと水が跳ねて、エドにも黒ずんだ水がかかる。


「――エド様!?」

「本っ当に何してるんですか!? 嫌がらせなのでしたら――」


 二人から叱責の声が飛んでくるが、今はそれを気にしている余裕はない。

 どうか自分の予想が的中していてくれと願いながら、エドは剣を構えて魔獣のほうを見る。


「――――よかった」


 魔獣はいまだティアーネの方を睨んではいるが、数メートル先で立ち止まって地団駄を踏んでいる。


「これ、どういうことですの――?」


 ようやく異変に気付いたティアーネが、目を見開きながらエドに尋ねる。


「あいつ、たぶん水が苦手なんだ」


 エドはそう答えながらティアーネに手を差し伸べる。


「ティア、俺とあいつの周りを囲うように氷の壁を立てられるか?」

「――それくらい簡単ですわ」


 少しだけ不満そうな顔をしながら、ティアーネは手を取って立ち上がる。


「じゃあ、俺が合図したら頼む」


 ティアーネがうなづいたのを確認すると、エドはティアーネと魔獣の間に立ち、距離を縮める。

 ようやく、魔獣がエドの方を向いた。


 緊張が走る。エドは負けじと魔獣を睨みながら、腰のポーチに手をかけた。

 じりじりと距離を詰め、魔獣まで、残り3メートル。


「――ティア!」

「――しくじったら許しませんよ!」


 魔獣とエドの周りをぐるりと氷の壁が囲む。

 同じタイミングでエドはポーチから残りの妖精をすべて取り出すと、魔獣に向かって放った。


 ポーチの中に残っていたのは、火妖精が二匹と風妖精が一匹。

 エドがパチリと指を鳴らすと、一斉に妖精が力を放出する。

 火妖精が放った炎を、風妖精が放った風が広げていく。炎が氷の壁を撫でると、そこから氷が溶けていき、水滴が滴り始めた。

 魔獣の怒りの咆哮が聞こえた。


 ……何かされる前に、角を切り落とす!


 エドは躊躇することなく足を踏み切り、炎と氷に囲まれ動けなくなっている魔獣の角をめがけ剣を振り上げた。

 剣が禍々(まがまが)しい角をとらえる。しかし思ったほどの手ごたえはなく、するりと剣は角を根元から切り裂いた。

 そのままの勢いで、もう一本の角も半ばから切ってしまう。


 決着は一瞬だった。

 角が地面に触れるのと同時に、炎が晴れた。

 もう氷の壁は残っておらず、溶けた後の水すらもほとんど蒸発している状態だ。


 エドは魔獣の攻撃に備え剣を構え直すが、角を両方とも取られた魔獣は一度鼻を鳴らしただけで、幸運なことに後ろを向いて走り去っていった。

筆が乗るまでが遅すぎる!!!!

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