vs調停人/awake,alter,another/♡❤︎
一件大落着。
「終わったー……」
「パルマさん、お疲れ様です」
「アンナちゃんも、お疲れ様」
もう限界フラフラだったボクは、誘われるまま吸い寄せられるまま、アンナちゃんの膝枕に飲み込まれた。うなじがアンナちゃんのお腹に当たる、……ヘヴンスタイルと名付けよう。
「うぉ……すごい……」
なにがヘヴンかって。
「すごい、ですか?」
仰向けになれば、アンナちゃんのアンナちゃんの下側を堪能することができる。これが天国の光景でなくして、何が天国か。
そして。
「パルマさん? パルマさん……?」
アンナちゃんが少し屈めば、圧迫祭りの開催だ。窒息必至、天国への特急券。これで死ねるなら本望かも。
「……それはちょっとヒクなぁ」
「え? あ、あっ、パルマさんッ!」
ドン引きしたイザヤによって気付いたアンナちゃん。バッと立ち上がったので、放り出されたボクは頭を強めに打ってしまう。
『スワンプマン』も焼き切れていて、しばらく使えそうにない。ちょっとしたタンコブができていて、それがどこか嬉しい自分がいる。
「スミマセン……スミマセン……」
「……もう。次からはちゃんと言ってくださいね……?」
……ボクもう死んでるかもしれんね、ホントは。
◆◆◆
まだ夜も明けたばかりで、ギルドもどこも開いてないだろう。
ということで、一旦イザヤハウスに戻って休むことにした。
「むふふ……」
勝利の余韻に浸りながら歩いていると、心臓? え? 貫かれた? なにに?
「パルマ!」「パルマさん!」
遠くからのような、近くからのような、二人の声。
吐血。ボクが吐いたのか? ボクの血を?
とっさに胸を押さえた手には、影のような靄が貼り付いていた。
「ふくくっ」
耳障りな笑い声。
「――、…………、……」
調停人ケイム。
悪態の一つでもくれてやろうとしたけど、うまく喋れない。
「貴様のせいだ。貴様のせいでパルマ、わたくしは調停人の席を追われてしまう」
わけわかんない。
席とかどうとかも知らないし、お前がどうなろうと知ったこっちゃない。
「ここで死ね……お友達もろとも!」
男の手に握られた影が、鎌の形に変わる。
振り下ろされた悪刃は、しかしイザヤがナイフの鞘で受け止めた。
「パルマさん、しっかり!」
「ぁ――、ンナ、ちゃん」
アンナちゃんの糸が、ボクの傷を塞いでいく。
「死ぬな……」
あぁ、そっか。
イザヤにとっては、またイデアさんが死んじゃうのと同じなのか。そうなのかもしれない。
「【死ぬな、パルマ】!」
――。
えへへ。
イザヤの『統一言語論』はしっかり届いていた。
ありがとね。
ほどなくして、ボクの肉体は土くれになって崩れ落ちた。
はい、復活。
……。
…………。
………………なんで?
「パルマ!」「パルマさん!」
「なにっ」
なにっ、じゃなくて。
『ラプラスの魔』曰く。
ボクの身体を構築していた『スワンプマン』に、イザヤの『統一言語論』……正しくは『バビロニア統一言語論』が反応。とっさに掴んだケイムの影の杭を依代にして、『泥人形』を獲得した……らしい。
仮説空論与太話、とはよく言ったものだ。噂みたいに尾鰭がついて、知りもしない事実が作り上げられる。
そんなことができる、曖昧でめちゃくちゃな、ステンドグラスみたいな世界に、いまは感謝しておこう。
「もろともって言ったよね? じゃあまずはボクから仕切りなおしてよ」
「小娘がーッ!」
再び振り下ろされる鎌。それをボクは、同じく鎌に変形させた右手で斬り払う。
「ふざけるな……」
「それはこっちのセリフだ」
「オレは……オレは調停者だぞッ‼︎」
「だから、調停者ってなんだよ」
そもそも自分でそこから追い出されたって言ったんじゃん。
斧の形がしっくりきたので、そのように。振り下ろすと、薪を割るように、ケイムの体を断った。
血ひとつ流さず、ただ恨めしそうな表情を残して、影のような男は霧みたいに消えていく。
「よし。いやぁ、ご心配おかけしました……はは……」
「パルマさんっ」
アンナちゃんはともかくとして、イザヤもボクをベタベタと触って確認してきた。待て待て待て。そこら辺も触るなら、お前はもう少し照れながらにしろよ。それはそれで傷つくんだからな。
「よかったぁー……」
アンナちゃんの抱擁。これだけでなんか知らんけど生き返った? 甲斐がある。
「イザヤ、『エンキドゥ』って?」
「『エンキドゥ』……なるほど、そういうことか……」
顎に手を当て、一人納得するイザヤ。
イザヤの世界で一番古い物語に登場する、女神さまが作った泥人形の名前らしい。
突然そんなありがたいことになっても実感はわかないけど、生きているからヨシとしよう。
「あ、ねぇねぇイザヤ。お酒は? お酒はあるんだよね?」
「ないよ」
「なんだよもぉー!」
腕取れノルマ(変形)を意地でも達成したくて書きました。
画面やや下にブックマークとか☆☆☆☆☆マークとか感想とか色々あるので、ピンク髪ちゃんを褒める感じで触っていただけると、次回以降の参考になるので、よろしくお願いします




