vs波狼/グランドスラム
「【俺が相手だ】【ひれ伏せ】【パルマ、がんばってね】」
……もう、イザヤに名前を呼ばれるたびに心臓が沸騰しそうだ。
元の持ち主だけあって、『統一言語論』の効果も凄まじい。どうやら色々条件があって、世界が不安定なほど効果が増すらしいけど、それにしてもボクのとはキレが違う。ギソードくんも、リンさんも、ユアーロくんも、一様に膝をついてイザヤを睨み付けるばかりだ。
「せっかくの新しいヨグバ・クリードのお披露目だ。ゆっくりしていきなよ」
◆◆◆
夜明けまでってネタが割れた時点で、全部で21波って情報が開示された。助かるような、途方もないような。
16。
【ボクに従え】という命令をぶつけ、同士討ちにさせた。
17。
ギソードくんの刀技の真奥、音も光も追いつけない神速剣『零鳴』で撃破。ナマクラナイフでこれなら、あの立派な刀だとさぞやの絶技なのだろう。
18。
リンさん聖槍の一つ、『群れ成して吠え立てよ』。本来軍勢単位で使う技みたいだけど、的の大きいウロコイヌなら素手でも問題なく蹂躙できた。
19。
ユアーロくんの術式装弓から、『“孔雀“・火炎』。矢の数から弦の絞り、軌道に魔術で属性を付与させることで、モチーフにモチーフを重ねた上級魔術として成立させる……らしい。
弓も矢もなかったので、開いた手のひらのうち、人差し指と薬指を畳んで似せることで代用。一番よくわかんなかったけど、一番楽に一掃できたから結果オーライだ。
20。
その辺の瓦礫とか死骸を取り込んだ大質量パルマパンチで解決。もう二度とやりたくない。
21。
「やっと終わる……」
背中に、じわじわと陽の暖かさを感じる。
酷使に酷使を重ねた『ラプラスの魔』も、そろそろ限界だ。観測した情報を、ボクが処理しきれなくなってきてる。どれだけ水を汲んでも、底が空いていては仕方ないのだ。
「■■■……」
「■■!」
残り二匹……。
借りれそうな技も借り尽くした。使えそうな武器も使い尽くした。
「間」
はるか上方から、声。
「に」
朗らかな印象の、少女の声だ。
「合っ」
隕石かと見間違えるそれは、……え、なに? カタパルトでゲニヴ・ジースから飛ばされてきて、
「た」
盾で衝撃を受け流しつつ、ウロコイヌ一匹を押し潰した……⁉︎
「ー!」
……そうか。彼女こそ、今代の玄武の長者の。
「やぁ! 君が新しいヨグバ・クリード? ワタシは玄武の長者、なりたてホヤホヤの、アムテキレス・アヨロイルマ……です!」
アムテキレスちゃんはぺこりとお辞儀をして、さっきまで飛んでたものだから、そのまま地面を転げ回った。
「いてて……。あれ?」
「あ、ども。パルマ・アウローラです。ヨグバ・クリード、らしいです」
最後の一匹は怯んでいる。無理もない。こっちの増援がこんな形で登場するとは、いかに獣だろうと度肝を抜かれたのだろう。
「ごめーん! 助けにきたつもりだったんだけど……さっきので腕折れちゃった……」
「ウソじゃん!」
「マジだよー!」
なんかめっちゃ波長合うな、この子。
「えー……。うん。これが最後だし、挨拶がわりにボクが新しい魔王だってことを見せてあげるよ。……です」
「魔王?」
「そ。魔王。不本意だけどね」
「じゃあ任せるけど、」
どかっと座り込むアムテキレスちゃん。四方の防人ともなると、戦場でのメンタルも据わっているのか。
「どっちかっていうと救世主だよ、キミは」
「……アリガトゴザイマス……」
そっか。
救世主か。
……まぁ、がんばったしな、ボク!
もう一踏ん張りだ。
――鋭い爪を伴った、巨大な前足の薙ぎ払い。
「そう、そこだ!」
「お借りします――『我が盾の前に悪鬼なし』!」
アルキケダマの巣で借りたことのある技術の、その粋。向かってきた力の流れを支配して、何倍にもして相手に返す、攻防一体のカウンター。
受け止めるようにして構えた拳に触れた途端、ウロコイヌの体の中で凄まじいエネルギーが弾けるのを感じた。
「やった……」
日が昇る。
「やったー!」
「やったねパルマちゃん! あ、あれ? ごめんねパルマちゃん、お別れみたい。またねー!」
わちゃわちゃしながら、アムテキレスちゃんは揺らぎの中に消えていった。
他の防人たちも同様、イザヤの首を取るか取らないかのところで帰っていく。その表情は、心なしか安心したようにも見えて、それぞれの仲を窺わせた。
なにはともあれ。
全戦全勝、である。
ピンク髪ちゃんがチート技使ったらカワイイし強いしで完璧じゃないかって思って書きました
画面やや下にブックマークとか☆☆☆☆☆マークとか感想とか色々あるので、ピンク髪ちゃんを褒める感じで触っていただけると、次回以降の参考になるので、よろしくお願いします




