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ダメカワピンク救世主伝説/  作者: 人藤 左
30/35

vsシリウス/overcome all the enemy‼︎/♡

「シッ!」

 勇んで前へ出ようとしたボクを尻目に、二匹、三匹と、サーカスみたいな動きのイザヤが弱点を切って即死させていく。


「パル……デミィデア、あとどのくらいだ」


「あっ、うん! 5分後くらいに十匹、3分空けて七……八匹! だよ!」

「……わかった」


 そんなわけでボクは、『ラプラスの魔』を活かした戦局管理を任された。


「イザヤ、ボクも前に……」

「デミィデア、最近忘れっぽくなってない?」

「忘れ……?」


 次の群れまで時間があるので作戦会議。

 イザヤの指摘は、心当たりがなくもない。あまりにも疲れてたり酔い潰れたせいだと思ってたけど。


「『スワンプマン』のデメリットだ。あんまりひどい怪我をし続けると、治す途中で記憶の引き継ぎが上手くいかなくなる」


「……マジ?」


「よほどじゃないと、だから言わなかったけど……。うーん…………。頑張ってた、みたいだから」


 めっちゃ言葉選んでくれるじゃん。


 これは撫でられるか? いつも悪いところを撫でてくれるから、やっと頭か? 頭悪いみたいじゃん! いや、悪いんだけど……と期待したのだが、その両手には大振りのナイフが握られたままだ。残念。


「平気だよ。それがわかってれば、あとで確認すればいいだけだしね」


 左目を指しながらいうと、イザヤは呆れたような感心したような、曖昧な笑みを浮かべる。


「そうか。……じゃあ、お願い」

「任せてよ」

 あと六本ある予備のナイフのうち、一本を手渡された。


「さっきまでの俺の動きは視てたな?」

「バッチリ。見ててよ」


 第五波のご到着だ。


「えっとたしか……」

 『ラプラス』を切っ先に合わせてみると、これまでのイザヤの戦いが映像として流れ込んできた。今回だけじゃなく……いろんな……


 続いて戦場。こっちは新しめのイザヤの戦いだ。

 最後にウロコイヌ15メートル。身体の構造自体はフツーサイズと変わらない。ただ鱗が硬めなのと……なるほど。そうか。


「鱗の隙間なら――!」


 魔眼が示す最適解を、体になぞらせた。肉体は攻撃をすり抜けるように躍動(おど)り、刃は吸い込まれるように斬裂(きれ)る。


「おぉー!」

 我ながら素晴らしい捌きだった。頸動脈を切られ、大出血させられたウロコイヌは、その場に倒れ込み命を落とす。


「よし、次!」


 ボクが一匹やっつけるうちに、イザヤはもう五匹目を獲ったようだ。


◆◆◆


「……嬉しい報告があります」

 第十五波を凌いで、夜もとっぷり更けてきた。


 『ラプラスの魔』からの新しい観測結果が出たので、二十分はある休憩タイムでおしゃべりの時間をとる。


「夜明けになれば終わりだそうです……」

「夜明け、ですか……」


 少し安心した感じのアンナちゃん。アレだけの能力を使っていながら、すごい体力だ。


「なるほど。冬の大三角形……シリウスの権能か……」


 空を見上げて、一人納得するイザヤ。よくわかんなかったけど、ボクもわかったような顔をしておこう。


「あと、ボクから残念なお知らせがあって……。イザヤから借りたナイフ、もう使えそうにないです……」


 多少無理に突き刺したりしたのもあってか、最後の一匹だと思ったこともあってか、肉に食い込んだままへし折れちゃった。


「俺もだ。もう予備がない」

 え、どうすんの。

「え、どうすんの」

 声に出た。


「……こうするさ」

 折れたナイフで地面に丸を描くイザヤ。


 意外とがっしりしている体が淡く禍々しい光を放つと同時、同じ気配の輝きが北部統轄地区中から溢れ出る。


「これ……魔導陣……?」

 蜘蛛の巣で街を俯瞰していたアンナちゃんが呟く。


「この国土には、崩壊(カタストロフ)に対するカウンターとして、四方の防人全員を緊急強制転送する術式が仕込まれている。俺、ヨグバ・クリードが冗談でも滅ぼそうと思えば――」



 語るイザヤの首に、冴えた刀が当てがわれる。

 語るイザヤの胸に、清らな槍が突きつけられる。

 語るイザヤの背に、静かな矢を(つがえ)た弦が絞られる。


「何のつもりだ、朝倉イザヤ。いや、ヨグバ・クリード」

 青龍の覇者。東を守護する青年、ギソード・ルーツが問う。


「答え次第では、このまま胸を貫きます」

 白虎の聖者。西を見守る美女、リン・ヤスラが朗らかに笑う。


「まぁまぁみなさん、ここは落ち着いて。ね?」

 朱雀の賢者。南を導く少年、ユアーロ・ミーアがたしなめる。


「え、どういうこと?」

 あまりにもあまりの事態に、ボクの頭はパンク寸前だ。『ラプラスの魔』のおかげで、かろうじて話の流れがわかっている。


「デミィデア。いや、パルマ。新しいヨグバ・クリードとして、みんなに挨拶して」

「なんで⁉︎」


 敵意……とはいかないまでも、三人の刺すような警戒がボクに刺さる。


「朝倉イザヤ! やはりあの日討っておくべきだったな!」

 うわ怖っ……。自分が正しいってことに自信があるタイプの人だ、ギソードくん。


「呼び出した手前、こいつらは俺が抑える」

「なんで呼んだのさ⁉︎」

「パルマは『ラプラスの魔』で、夜明けまでウロコイヌの相手だ」

「ぅええ⁉︎ ……って、パルマ? パルマって呼んだ? ねぇ、ねぇ!」


「……言ったよ。パルマ。パルマ・コス=デミィデア・アウローラ。パルマ。がんばってね」

「……うん!」


 こうなったらもう、群れだろうが防人だろうが、全部ボクが相手してやる。


 あ、ちょっと言いすぎた。かも。

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