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ダメカワピンク救世主伝説/  作者: 人藤 左
29/35

vs北部統轄地区/weigh the anchor, way out anger/♡❤︎

「まさか……。しかし、契約は契約だ……」

 その言葉を残して、影からケイムの気配が消えた。


 …………。


 勝ったぜ。


「はっはははははは! ボクたちに勝とうなんて十年早いよ!」


 なんちゃって。呑まれた時マジで終わったと思った。あー、よかった……。


「パルマさんっ!」

 駆け寄ってきたパルマちゃんに抱きしめられ、今日何度目かになるへたり込み。


 弾け飛んだ肉片やらはアンナちゃんのドームで絡め取られ、野次馬への被害は最初のアレ一回。ありがとうね、アンナちゃん。


「ありがと、アンナちゃん」

 声に出そう。


「パルマさん、パルマさぁ−ん!」


 おいおいと泣きじゃくるお嬢さま。綺麗な顔も髪もドレスも台無しになるほど汚れちゃったけど、これはこれで眼福である。


「死んじゃ、っ、死んじゃったかとぉ」

「ボクだったから平気だったけど、アンナちゃんも結構やってたからね」


 めちゃくちゃ痛かったんだからね、ずっと切らてるの。言わないけど。


「ごめんなさぁああぁいぃいぃ」


 子供みたいに泣くなぁ、可愛いなあと思ってたら、どうやら15歳くらいらしい。マジ? 『ラプラス』がそういうならそうなんだろう。15歳でその胸は……肉付きは……イカンだろ。ありがとうございます。


「パルマさん……?」

「なんでもない。将来有望だなって」

「……?」


「アンナちゃんはまだわかんなくていいよ」

「はぁ……。……?」

 そのまま健気に育ってくれ。


◆◆◆


 蜘蛛糸のバリケードが解除された。

 ざわざわと、喧騒が耳に入ってくる。

 称えられる準備はできてるぞ。


「魔女め」

「え?」

 あれ?


「毒婦め」

 石を投げつけられた。まぁ足元にはいっぱいあるだろうし。


「なんだ……なんだよ!」

「なんだもなにもあるか」「あの化け物も、お前たちが連れてきたんだろ」


 なんだそれ。


 東部のときは部外者だから怪しまれるかもって思って……え? うそだろ。


「いたっ」

「アンナちゃん!」

 石つぶての一つがアンナちゃんの頭に当たって、血が流れた。


「おい、さっきの! 前に出ろこら! 謝れ!」


 ボクが怒鳴ると、人だかりの内少しが怯えたような声を上げて逃げ出した。


「パルマさん、わたしは大丈夫、大丈夫ですから……」

 ……なんだよ。


「出てってくれよ」「汚い格好だこと」「薄気味悪い髪だなぁ……」

 ……なんなんだよ。



 ――――刺すような、空気の震え。


 山の方からだろうか。


「■■■ーッ!」

 ウロコイヌの遠吠えだ。それも、一匹や二匹じゃない。犬だから……そりゃ、群れるか。あんなのが群れてたまるか。群れてたみたいなんだけどさ。


 夜……月明かりを反射し行進するその鱗は、光の波みたいだった。


 凄まじい足音を立てて、それは――それらは、数十頭の、突然変異種のウロコイヌだ。先頭だった二匹が到着し、ボクたちを見下ろす。


「次から次へと……!」


 これ全部倒さないと、街はめちゃくちゃになってしまう。人もたくさん死ぬ。石とか投げてくるけど、やっぱ死なれると後味悪いし。でもやっぱムカつくよなぁ……。


 仲間の肉片のにおいを嗅ぐ巨大ウロコイヌたち。もうちょっと息を整える時間はありそうだ。


 このままアンナちゃんを連れてトンズラするのも、悪くないだろう。これがケイムの『執行』であるなら、狙いはボクたちじゃなく街そのものだろうし。


 でもそれは、悪くないだけだ。良いわけじゃない。

 なんとかしてこの状況を切り抜けたら、そりゃ褒められたいのが普通だ。色々いい手がないか考えていると、一冊の魔導書に思い至った。


「【おい、ボンクラども】」


 『越権契約』の魔導書。

 ボクは魔術師じゃないから、本当は使えるわけじゃない。


 けど、魔術師は魔導書を読める・魔導書を読めれば魔術を使える。つまり、『ラプラスの魔』を介して魔導書を読めるボクは、魔術を使えるということだ。そうなってくれ。


「【これなんとかするから、あとでちゃんと謝って、そんでもって褒めろ、ばーか】」


 成功、である。


 アンナちゃんに合図をして、住人とボクたちの間に再びバリケードを張ってもらう。


「パルマさん、これ以上は……っ」

「できるだけ広くお願い! ボクのサポートは気にしなくていいから!」

「っ、はい!」


 さすがアンナちゃんだ。街一個を蜘蛛の巣ドームの中に収めて、中にいたボクたちが逆に外に出る形になった。


 これでよし。 

 あとはボクが――


 と、走り出した途端、二匹まとめてその場に倒れた。ちょっと遅れて首から噴水みたいに血を出して、ピクリとも動かなくなる。



「……イザヤ?」

「……そうだけど」


 ボクの前に降り立ったイザヤの手には、大きめのナイフが握られていた。まさか、これで首を掻き切ったというのか。


「なんで?」

「…………別に」

「っ、フゥー……」

「え、なに」


 困りイザヤを摂取したので、ボクはもう元気いっぱいだ。


「来てくれてありがとね」


「別に。それより、アレなんとかしなきゃ」

「うん。そうだね」


 まだ向こうから、数えきれないほどの魔獣が迫ってきている。


「さて。褒められちゃいますか!」

全35話で確定しました。

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