ダメカワピンク救世主伝説
ボクたちが何事もなく『庭』を突破したのは、夕方のことだった。
最初は感じてた目眩も気にならないくらいになっていて、いいカンジだ。
「……ここが、東……ですか?」
「どうだろう。ボクも来たことないから」
念のため『ラプラスの魔』を発動してみる。
「えっとね……東部統轄地区まで、あとちょっとらしい……んだけど……」
向こうのほうで黒い煙が上がっているのがそうなのだろうか。
……向こうのほうで、夕焼けよりも空を焦がしている辺りがそうなのだろうか。
「アンナちゃん! 馬車、急がせて!」
「はっ、はい!」
のんびり歩いてはいられそうになかったので、荷台に飛び乗ってアンナちゃんに頼む。馬が嘶いて、土煙を上げた。
◆◆◆
到着。
街は大騒ぎで、人々がこぞって東部統轄地区から逃れようとしていた。
中心あたりからだろうか。魔物らしき、おぞましい咆哮が轟いてくる。
「これなに⁉︎」
少し落ち着いたところで成り行きを見上げていた人に声をかける。
彼は、ほとほと疲れ果てたように答えてくれた。
突然変異種の地竜――。
馬車をアンナちゃんに任せて、事の渦中へ。
「うっわぁ……」
地竜なんてものも実物を見たことがないし、ましてやその突然変異だとか言われてもなぁ、とか思ってたけど、なるほどこれは……。
赤い鱗に覆われた大きいトカゲが、後ろ足と巨大な尻尾で立っている。
トカゲと言ったが、強靭な足腰と剛健な前足、どっしりとした体格。山のような巨躯は……20メートルってマジ? いや、『ラプラスの魔』が言うんだからそうなんだろう。周りのまだ崩れていない建物と比べても、大体そのくらいなのだろうとわかる。
「これは……どうしようもないかなぁ……」
見て見ぬふりをしたらあとで酒が不味くなると思ってここに来たけれど、これはなぁ。みんな避難してたし、ちょっと天気が悪かったことにして――崩れた家屋に挟まれて、逃げ遅れてしまった子供を見つけてしまって……
「いっちょ、感謝されちゃいますか!」
ボクは、無理矢理ボクを奮い立たせていた。




