オシャレピンクとバーニングお嬢様、ブティックと『庭』突破』/❤︎
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必要なもの、と言われても、馬車も水も食料も用意してくれる手前、なにがいるのかわからない。
ので。
「パルマさん、こちらの服はいかがでしょう!」
さすがにボロボロの服装はどうなのか、ということで、アンナちゃん行きつけのブティックに来ている。
北の大国であるゲニヴ・ジースからの品物も多数卸しているということで、めちゃくちゃオシャレな雰囲気がビシビシ伝わってくる。
「いかが、って……言われても……」
生まれてこの方素材の良さだけで生きてきたので、服飾とかには疎い。服が着てほしいと頼んでくるからだ。
しかしこの店の商品たるや、ボクとバチバチにやり合おうって気概が伝わってくるではないか。
「……じゃあ、これとこれで」
テキトーに目についたオシャレさんを手に、お会計へ。
アンナちゃんがなにやら抗議してるけど、着せ替えパーティーはまたのお楽しみにしてほしい。
◆◆◆
ノースリーブの黒いニットと、丈の長いダブルプリーツスカートにショートパンツ。スカートの方は左足に大きくスリットがあり、見た目より動きやすい。
あとはこれにヘアピンとチョーカー、フードでパルマちゃんの完成だ。
「ずーるーいーでーすー!」
「なにが」
店を出てから、アンナちゃんはちょっと拗ねている。お買い物を早く切り上げたこと……だけではないようだ。
「これ、イザヤさんからいただいたものですよね?」
ちょっと気に入ってきたフードを差された。
「このキュートなチョーカーも、この可愛らしいヘアピンも!」
「……そうだけど……?」
なになになに。怖い。
「わたしからのものも是非、一品だけでいいので身につけてください!」
少し震える手のひらには、金色のイヤリングが一つ。見ると、同じものがアンナちゃんの耳にも付いている。
「せ、せっかくなんだけど……耳たぶに穴を開けるのはちょっとなぁ……」
「そういうと思って、挟むタイプにしました! ぜひ!」
「…………」
さらに深く頭を下げるアンナちゃん。毎回思うけどこの子の圧はなんなんだ。
「わかった、わかったアンナちゃん。ありがとね。付け方わかんないから、お願いしてもいい?」
「フォォォオオオオォォーッッッ!」
なんなんだこの子マジで!
◆◆◆
お昼過ぎ。
「はぁー……ッ! はっはっはっ、はぁ、ぁーッ」
そんなわけで、出発である。
いや、そんなわけじゃないが。
アンナちゃんが左耳だし、せっかくだからボクは右がいいって言ってからずっとこうだ。
ファチロさんもすごい心配してくれて、代わりの手綱持ちを用意しようとしてくれたけど、アンナちゃんは荒いというには荒すぎる呼吸のまま大丈夫だと胸を叩いた。大丈夫なわけあるか。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……!」
「アンナちゃん、つらかったら休んでいいからね……」
アンナちゃんよりはるかに穏やかな息遣いの馬の隣を歩く。そんなボクの気遣いをよそに、彼女の目はギンギンに血走っている。
「ダイジョブ……大丈夫、です、……フッ……ん……」
一瞬ツったのかと思うくらいの勢いで背筋を正したアンナちゃんは、一つ吸って平静を取り戻した。
「それより、パルマさんは大丈夫ですか? 馬車には乗らないのですか?」
「あー、うん……。馬車は苦手なんだ」
正直、まだ怖い。乗らなくて済むなら乗りたくない。
彼らにとってはとても緩やかに歩く、そんな馬の頬の辺りを撫でてみる。とても嬉しそうに目を細めて、歩きながらにでも応えてくれた。ファチロさんたちから大切に育てられたのだろう。
「キャラバンかぁ……」
このまま行くと、ボクは行商人になるわけだけれども。
行く先々でチヤホヤされるわけだけれども。
色々あって、ボクもボク自身の分相応ってものがわかってきたつもりだ。前のパーティには悪いことをしたな、とか。甘えてたなぁ、とか。でもしかしゲゴはよくないなぁ、とか。ボク1人だと、キャラバン経営も上手くいきそうにないなぁ、とか。
「アンナちゃん。ボクがキャラバンやるって言ったら、手伝ってくれる?」
「……キャラバン、ですか?」
わからないことを聞かれたような返事だった。そんなにボクじゃダメか?
「どうでしょう……。パルマさんと一緒なら喜んで、といいたいところですが……」
「うん。ごめんね、変なこと聞いて」
「いえ、こちらこそすみません」
妙な空気を漂わせて、ボクたちはそのまま『庭』を抜けた。
ダブルプリーツスカートをピンク髪ちゃんにキメてほしくて書きました。
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