面接
「特技? うーん……顔がいい?」
どんな仕事が紹介できるか、ということで、まず特技を聞かれた。
ボクはこの通り顔がいいので、フラっとその辺を歩いてれば数日は困らないくらい色々なものをもらえる。はず。
ちなみにこの顔面はボクもちょっと努力をしているので、苦手な不労所得とは別口である。大体は知らない人からだし、その場限りの関係だし。甘え、とは少し違うのでセーフなのだ。
「顔は……確かにいいが……。パルマ、君はもう死の淵に立ったことがあるだろう」
「……あるけど」
あまりいい思い出ではない。死にかけていい思い出だったって言うヤツがいたら会ってみたいけどね。つらかっただろうし。褒めてあげなきゃ。
「そういう人間は、顔を見ればわかる。においや雰囲気、立ち振る舞いからも。君のその……周りからチヤホヤされる才能、というのを活かして働くには、それは致命的だ」
紳士は真摯だった。
真っ直ぐ、対等に、話をしてくれている。
「その淵でなにを拾った? どうやって帰ってこれた?」
「そうだなぁ……淵っていうか、『庭』なんですけど、多分ボク自由に出入りできます」
「――『庭』を?」
「うん。『猫の庭』を」
「それだよ!」
耳が痛い!
「これは何かの運命だ、パルマ! いや、浮かれるのは早いな……しかし……」
なにやら紙にペンを走らせるファチロさん。
「これ……魔導陣?」
特定の魔術を発動させるものだ。これさえあれば誰でも使える反面、使い切りっていう勿体無さもある。
「通信魔術の術式だ。馬車を貸そう。『庭』を渡り、東部統轄地区に着き次第、これを使ってくれ」
「急だなぁ!」
「善は急げ、だ。往復分の食糧も用意しよう。それから必要な装備もあれば、できるかぎり準備させてもらう」
「上手いなぁ」
「だろう?」
こうなれば、ボクはファチロさんとシトナイン家からひとまずの寝床と食べ物、ちょっとしたお小遣いを受け取らざるを得なくなる。オトナの貫禄だ。
「何日かかる? ゲゴのキャラバンは20名弱で……行きが三日、帰りは西経由で三ヶ月だ」
西経由というのは、山を隔てた西の大国、ロッコス・バンニギルを通るルートだ。『庭』を迂回する分リスクは減るが、それ相応に時間も労力もかかる。
えーと……ボクが降ろされたのが二日目くらいで、そこらへんにイザヤの家があって、そこから小一時間だから……
「行って帰ってくるだけなら二日? くらいかと……」
「二日⁉︎」
「あぁいや待って! 三日……いや、四日! 念のため四日にしとく! です!」
二日でもだいぶ余裕を持って答えたんだけど、こうも驚かれると不安になってきてしまう。
そもそもボクは東に行ったこともないし、当然『庭』を縦断したわけでもない。多分できるだろう、という確証があるだけなのだ。やってみないとわかんない。
「そ、そうか……。では四日分の必需品を馬車に積ませよう。パルマも準備があるなら整えておいてくれ」
「そうだそうだ、ファチロさん。御者の人ってどうしたらいんです?」
もちろんボクは馬車の手綱を握ることはできない。……もしかしたら『ラプラスの魔』で真似ることはできるかもしれないけど、消耗を減らせるならその方がいい。
「わたしに! 任せてください!」
庭園の花を愛でていたアンナちゃんがあらわれた。
「これで二人っきり、四日の旅ですね! パルマさん!」
「二人?」
「すまないパルマ。シトナインの人員も限られている……。君たち二人で足りるのなら、それでなんとか……」
それでなんとか、と本気で思っている人間に頭を下げられちゃ仕方ないか。
「わかったよファチロさん。です。よろしくね、アンナちゃん」
「はい!」
何も知らんような顔してできるけど? って態度のピンク髪ちゃんは絵面的に腹立ってカワイイな……ということで書きました
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