スパイダートリック
「行こっか、アンナちゃん」
「はい」
昨夜の暴走はどこへやら、アンナちゃんは普段通りのお上品な感じに戻った。こっちが普段の顔だと信じたい。
「出入りにはコツがあってね、上手くやると、『庭』に繋がってるとこならどこでもいけるんだよ」
「はぁ、コツ……ですか」
コツというか、仕掛けというか、裏ワザというか。ありがたいことに黒猫のヘアピンは、ボクだけでなく同行者にも恩恵があるらしい。そういえばコティも着いて来れてたし、そうじゃなかったらヤバかったな。セーフセーフ。
「はい、はい出たー」
「おぉー」
昨日いろいろ世話になったアルキケダマの巣だ。訂正、ゲゴ所有の洞穴である。
「道にも迷いませんし、魔物にも会わずに済むんですね」
「すごいでしょ。魔物にはこれから挨拶するんだけどね」
群れのボスに就任したボクは、彼らに手を振り、入口あたりにその辺で摘んだ花を供えて、北部統括ギルドを目指した。
◆◆◆
「ボクはこのままクエスト受けに行くけど、アンナちゃんはどうする?」
「そうですね……ジュリーさんに報告するとして、そのあととなると……」
思案するアンナちゃん。
ギルドに向かう道中、ゲゴお抱えの礼服たちがちょろちょろしているのを見かけた。彼らはボクらを見るなり、悟られないよう努めて立ち去った。
……ちょっとヤな感じだな。
「じゃあさアンナちゃん、しばらく一緒にいたいんだけど……ダメ?」
きゃるん♪ とおねだりしてみる。
「パルマさん」
「なに⁉︎ なになになになに⁉︎」
ナイフのようなオーラをたぎらせて、アンナちゃんはどこからともなく取り出したロープでボクを拘束し、担いで走り出した。
「待ってアンナちゃん! ギルド、ギルドはそっちじゃない!」
あとちょっと、まだ力任せに運ばれるのは怖い!
「……そうでしたね。えっと……」
足先がギルドの方へ向き直る。
お互い好きな食べ物の話とかしながら歩いて、到着。
「ジュリー姉さん、ただいま」
「パルマちゃん……! ケガは? 痛いとこない?」
「もう。ボクも一人前なんだから、そりゃたまにケガもするよ。大丈夫大丈夫、ノーダメージ」
「そうですか。それで本日は、どういったご用件で?」
突然スンってされた。でも、いまやこれも少し嬉しくもある。いわゆる一人前とやらを相手にするからこそ、事務的な対応をするのだろう。そうだったらいいな。
「はい。わたし、アンナ・ドネドミネがお受けいたしました、ゲゴさまの依頼の達成報告に参りました」
と、アンナちゃん。とても丁寧な報告で、いいものを見せてもらった気分になる。
「はい……こちらですね。ちょうどゲゴさまもいらっしゃっておりますが、すぐお会いになりますか?」
「え、アイツ来てんの?」
我ながら雑な言葉が出たものだ。まぁ粗くもなろう。
「えぇ。定期視察にいらしております」
「ぜひお願いいたします」
「うん。お願いしまーす」
馬車(生贄になったとき乗せられたので)と持ち上げられる(アルキケダマにめちゃくちゃにされたので)がちょっとトラウマになってたり、圧の強い軽装ドレス巨乳お嬢様に圧倒されるピンク髪ちゃんが書きたくて書きました
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