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ダメカワピンク救世主伝説/  作者: 人藤 左
11/35

煩悩、煩悩、子煩悩と猫/♡

「子供じゃないんだからさ」

 呆れ果てて、イザヤが言う。


 魔導書を読んだあと、洞窟を出ると夕方になっていた。


 改めてギルドに戻って依頼を請けて報酬をもらうとなると、野宿は確定になってしまう。アンナちゃんが宿とご飯を用意してくれると、それはすごい圧で迫ってきたが、辞退してしまった。また明日会おう……って別れた方がカッコいいかな? って思っちゃったあの時の自分を恨む。


 そんなわけで、『庭』にあるイザヤのとこに戻ってきたわけだ。


 いつも通りイザヤは安楽椅子に、ボクはその傍らの床に腰を下ろしている。今朝はなかったクッションがあったので、拝借。


「それで、みんなには褒めてもらえたの?」

「……まだです」

 イジワルな質問だった。


「一応世話になったし、最初はイザヤに褒められたいかなーって」


「…………」


「そんなに困ることある?」

「別に」

「頑張ったんだぞボク。腕はぐちゃぐちゃにされるしめっちゃ体重くなるし」

「なんだって?」


 イザヤの背筋が伸びる。 


「だから、――」

 コティとの激闘、つまりボクの武勇伝を語ってあげた。


「……腕はなんともない?」

「うん。ぜんぜんへーき」

「体に違和感は?」

「ないって。あ、でも、疲れにくくなってる? かも」

「……そう」


 ハイハイこの人はこういう人でしたね、と不貞腐れようとすると、イザヤが手招きしてきたので、嬉しくはないが、嬉しくはないが! 嬉しくはないが、座ったまま近寄る。


 右手を取られ、肘から手の甲までを撫でられた。


「……、なるほど」

 なにがなるほどなんだよ。


 何度も何度も、イザヤの見た目より大きな手の平が、ボクの腕を撫でつける。


 そのまましばらく、されるがままに撫でられ続けてしまった。


 部屋には暖炉で薪が弾ける音、肌の擦れ合う音、深く穏やかな呼吸が二人分。やけに強く打つ鼓動が聞こえていないか、少し不安だけど、聞いてほしい気持ちもあるというか。


 ……。

 …………。


「パルマさん! 見つけましたよッ!」

「うぉアァア⁉︎」

 なになになになに⁉︎


 突然闖入者が大きな声を出したので、思わず跳ね上がってしまった。


 軽装のドレスに金髪、巨乳のお嬢様といえば、アンナちゃんしかいないだろう。けど、アンナちゃんがここにいるはずもない。


 油断してた……油断してたってなんだよ。そういうのではなく、うん。


「……知り合い?」

 対し、動揺を見せないイザヤ。ボクの腕を撫でるのを一旦やめろ。やめなくていいけど。


「……うん。アンナちゃん。今回一緒にやってくれた、」

「ご挨拶が遅れました。わたし、パルマさんのご友人のアンナです。突然の訪問、失礼しました」

 貞淑に挨拶をするアンナちゃん。その胸で貞淑な態度は無理があるだろ……とは言うまい。


「アンナ、アンナ……知らない名前だ」

「はい。はじめまして」

 少し険しい表情のアンナさんは、ボクの左隣に行儀よく座り、ボクの左二の腕を揉みはじめた。


「え、なに」


「怪我をされてらっしゃるようだったので、手当を」

「もう治ってんだけど。イザヤも、もういいから。大丈夫だから」


 あれ? なんでアンナちゃんが左腕のこと知ってんだろ。まぁいいや。……揉み方がやらしいな!


「お、おぉ? 客だな? 見覚えがあるのがパルマで……知らない方は知らないな。なんだこれは」

 奥の部屋から、マオちゃんがにゃんと現れる。


「マオちゃん、助けて」

 両手を取られたボクは、間違いなく中立であるはずのマオちゃんに助けを求めた。


「フム」


 急ぎ足で奥に戻り、今度はハサミを手に再登場。

「なにがあったかわかんないけれども、後ろ髪が乱れているな? 両手にご主人と客人、猫の手も借りたいということになるな? なるだろうなるだろう。にゃるだろう」


 そうして怪猫は、ボクの髪を切り揃えはじめた。


「………………」

 なんか言えよ。


「ハァ……ハァ……な、舐めてみてもよろしいですか……ッ?」

 ダメに決まってるだろ。アンナちゃんは少し黙ってて。


「痒いところはないですかー?」

 まだその工程じゃないでしょ。


 ――ちやほやされたいとは、たしかに、常々そう飢えてはいるけど、こうも過剰だと……


「ヤになったら言ってね、デミィデア」


 …………すごくイイです。

 この後ちょっとピンクの頭には難しい話をされたり腕爆破ノルマとかがあるので、せっかくなので甘やかせるだけ甘やかしとこうと思って書きました


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