エルダと魔獣
2体の魔獣を引きつけながらカタリナの部隊は順調に街を北に向かっていた。
途中、見かけによらない魔獣の素早い攻撃に危うい場面もあったが、フォローに徹していたカタリナが魔獣の気をひくことで誰一人負傷することなく現在に至る。
魔獣は、なかなか捕まらない人間に怒りを心頭させ、今まで以上に躍起になって襲いかかってきた。
2体のうち1体が建築物を破壊しながら細い通りにまで強引に入ってきた。
「エルダ!」
カタリナが叫ぶ。
細い通りに逃げ込み、魔獣からの追跡を別の隊に引き継ぐはずが、魔獣の強引な追跡により未だ逃れられなくなる。
魔獣が狙う人物はエルダであった。
残された1体の魔獣は細い通りに入ることなく、大通りの向こうに進んだ陽動に今まで通り引きつけられて走り出す。
順調にいっていた魔獣の陽動が、ここで二手に別れてしまったのである。
エルダは、自分だけを執拗に追って来た魔獣に恐怖したが、細い通りなら小柄な自分が追い付かれることはないとたかをくくり、街の外までのルートを新しく考えてそのまま一人で走り続ける。
「エルダ・・・無理するんじゃないよ・・・」
カタリナはここにきて初めて顔を歪めると、妹分の無事を祈った。
エルダは1人細い路地を走り抜ける。
身体能力だけなら[Cランク]ハンター並をほこるエルダは凄まじい速度で街の外を目指し駆ける。
連携のために仲間に合わせることをしなくていい、仲間に気遣わなくていい。
枷が外れたエルダはただ早く走ることだけに専念して駆けた。
それを追う魔獣は、時折建物にその巨体を当て失速するがエルダから視線を外すことはない。
(行ける!この先は屋根がいくつも通りに飛び出していてアイツは満足に走れやしないッス!)
それは油断であった。
エルダはそのまま背後を気にせず真っ直ぐ走ってしまったのである。
その油断が彼女を危機に追いやることになった。
轟音。
エルダの目の前に粉塵があがり、木片や土礫が容赦なく当たる。
「うわあッ!?」
エルダは倒れることはなかったもの、その場に立ちすくみ、しばらく目を開けることが出来ない。
やがて、エルダが何とか目を開けるとそこには生温かい息を眼前に吐き掛ける、黒く巨体な獣がいた。




