ハンター3
ここに居る連中は全員が[Cランク]及び[Dランク]のハンターであり、さらにその中でも特に戦技に長けた猛者ばかりである。
いわゆる戦士と呼ばれる彼等は、一人一人が赤や黒、白などのいろいろな色の装飾品や、革や鉄、獣の骨などの様々な材料から作られた鎧や籠手などの個性的な装備品で身を固め、剣や槍、斧に鈍器等の多種な武器を持ち、自分達の戦いの出番を今か今かと待っていた。
「難しいことを考える必要はありません、目の前の敵を油断する事なく全力で叩き潰して下さい」
総勢40人にもなる戦士達は、隊長であり[Cランク]でもある[二刀]のスルストの声に次々と了承の声をあげる。
「よっしゃあー!今日で俺様はCにランクアップだぜい!」
1番若いだろうか、20代前半に見える赤髪の青年も握り締めた右手を開いた左手に打ちつけ、周りに遠慮することもなく吠える。
「テッド、ランクなどは上げようとせずとも実力があれば上がるものですよ」
スルストがそんな青年に優しく語りかける。
「だがよ、スルスト!魔王がいなけりゃ勇者は生まれねえし、戦がなければ英雄は現れねえ!ハンターだって魔獣がいなけりゃ[Cランク]以上は必要ねえだろが?」
隊長スルストの言葉に反応して、でかい声でそう言い、ガハハハと笑い出したのは同じ[Cランク][巨腕]のザックである。
[巨腕]の2つ名どうり、ここにいるハンターの誰よりもでかく、彼のたくましい腕は女の腰より太い。
スルストの言葉にあからさまに不満顔をしていたテッドは、ザックの言葉に破顔して同調する。
「そうだよ!毎回ゴブリン狩りばかり続けていたってランクばかりか、腕も上がるわけない!」
テッドが言うゴブリンとは、魔獣ではないが国が指定している危険な亜族で、国からハンター組織に常に駆逐の依頼が出されている。
力も弱く知恵も無いため、駆けだしハンターの良い資金源だ。
[Eランクハンター]なら仲間を募りパーティで、テッドのような[Dランクハンター]なら一人でも余裕で狩れる。
本当ならもっと報酬が低い難度なのだが、ゴブリンの繁殖力が厄介で、国は多少報酬を上乗せしてハンターに依頼を出すのだ。
報酬が少ないと言われ、ハンターに狩ってもらえない自体になると大変まずいのである。
「向上心があるのは良いことですが、欲が過ぎれば身を滅ぼしますよ」
老練なスルストはみかねてテッドに警告することにする。
「私はこの歳になるまでこの仕事で沢山の巡り合いがありましたが、その中で死んでいくハンターのほとんどが油断や、うぬぼれが原因です」
「相手の強さだけでなく、自分の強さも測れない未熟者は、死ぬ為にハンターになるようなものなのですよ」
この言葉にはいつしか聞き耳をたてていた周りの猛者の中からも息を呑む音が聞こえた。もちろんテッドも思わず息を呑んだ。
スルストは齢60を越える老戦士で、髪は白くなり力が衰えても、錆びる事なく熟練していく剣の腕は、まさに戦士ではなく剣士と呼ばれるのに相応しい。
王都で南1番の剣士と噂される彼は、聞くところによると貴族の子弟が通う学校からも指南役にスカウトされたことがあるほどだ。
「警戒心はあとからつくものではありません、警戒心があるから生き延び、経験し、成長できるのですから」
テッドは深く深呼吸した。
空気ではなく、スルストの言葉を呑むように。
笑ってみていたザックは、真面目な顔になり頬をかきながら呟く。
「警戒心ねえ、不器用で頭の悪い俺様には無縁だがなあ」
ザックの言葉に、スルストは微笑みながら言葉をかける。
「あなたは周りの仲間を信頼して、自分の力を仲間に貸し与えることを躊躇しません」
「だからこそ仲間も全力を捧げあなたを支えるわけです」
「それは簡単に誰にでも真似できるようなことではない長所なのですよ」
仲間を心から信頼し命を預け、共に協力することで自分の短所を補ってもらう。
簡単にみえて実際にはなかなかできないことだ。
強い者ほどまず他人を警戒して行動する。
ハンターはそういう世界なのだ。
「よく分からんな、そんなもんか?」
「あなたには野性の勘もありそうですがね」
スルストはもう一言喋ると、ザックはまた笑い出す。
「おう!それなら俺の得意分野だぞ!」
ザックが自身満々に言ったその時だった、凄まじい魔獣の咆哮が立て続けに三度あがる。
スルストに全員の視線が集まった。
彼は一度うなづくと、
「もう一度同じことを言いましょう」
「難しいことを考える必要はありません、目の前の敵を油断する事なく全力で叩き潰して下さい」
街の中心部でカタリナの合図である魔獣の咆哮を待ち構えていた彼等は、スルストとザックを先頭に北へ、魔獣のもとへと走り出す。
魔獣の咆哮は、魔獣がまるで何かに怒りをぶつけるような気にあふれており、彼等に作戦が始まったことを教えたのだった。




