眷属2
ずっと目を瞑り南の門に寄りかかる男は、さきほどより街周辺の気配をさぐっていた。
北の魔獣の荒々しい気が消え、西と東の門を襲おうとしていた大量の気も消える。
男は、ギルドマスターのマクダイと同じで魔獣の気が消えても襲いかかろうとした眷属に疑問をだく。
だが男が考え、答えを出す前に、答えのほうが男に向かって来たのである。
それは南からこちらにゆっくり歩いてくる、全く気配を感じさせない人型であった。
「お、やばいな・・・目を開けなかったら気づかなかった」
南の門に寄りかかる男、ドンは慌てて体を起こすと、こちらに向かって歩いてくる人型に全神経を使う。
全身が魔獣と同じ黒い毛で覆われ、頭が人間よりふた回りは大きい。
目は毛でよく分からず、紅い灯火がちらちら漏れるだけ。
唯一はっきり見える口が耳元まで裂けていた。
両者の距離が50mほどに縮まったところで、ドンは人型のある特徴に気付く。
近づいた人型の紅い目は魔獣のそれであったが、ドンが気づいたのはそれではない。
(何の冗談だ?あれは角じゃねえか!)
ドンが、人型の額に生えた角に驚愕する。
稀に魔獣には角が生える。
それはただの飾りではない。
魔獣が1段階進化した証であり、魔獣として格が上がることを意味する。
もちろん強さも普通の魔獣とは比較にならない。
「ああ、そういうことか・・・」
「思えば最初から変だったんだよな、魔獣はただ中心部に向かうだけで途中視界に入った一般人をわざわざ追って狙ってまでは殺しはしなかった」
「単調に、近くにいた者や、邪魔をするものを襲うだけ」
「俺が魔獣を蹴飛ばした時も本来ならそのまま飛びかかって来ず、戦意を失って逃げただろう」
「お前、魔獣を3体も眷属にして操ってやがったな?」
ドンはそう言うと目の前の人型を睨みつける。
眷属なるものは、自分より格下の獣を操り手下にしたものである。
複雑な命令は出来ないが、力の強いほど複数操れた。
50m先まで近づいてきた人型は、刹那消える。
「うおわっ?」
気づけばドンの前にいたそれは、ドンの頭を狙って手で攻撃をしてきたのだ。
ドンが両手を上げて回るように避けた。
先ほどの魔獣戦でみせた美しく流れるような動きではない。
ズガアーンと派手な音がし、南の門は鉄でできていたにも関わらず、吹き飛び無くなっていた。
ドンはそれを振り返り見ると、
「お前はどこのスーパーマンだよ!!」
と、叫ぶ。
そこから人型とドンの死闘が始まった。




