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眷属

マクダイは、水晶で北門の最後の魔獣がガイア達に倒されたのを見届けると、目の前に広がる光景に眉を寄せた。


マクダイが守る東の門に向かって2、300匹は居るだろうか、黒い波のようにゴートウルフが駆けて来るのがわかる。


おそらく、さきほどの魔獣の遠吠えが合図だったのであろう、魔獣の眷属が襲ってきたのだ。


(何故、こいつらは止まらない?)


通常、眷属は、主である魔獣が倒されれば混乱し、その場から離散する。


それがない場合は、単純に考えれば魔獣がまだ生きているか、・・・他に居る場合である。


(まさか・・・4体目がいるとでも?)


マクダイは考えるが、


「まあ、ここでやることに変わりはないね」


そう呟やいて、杖を両手で掲げた。


目を閉じ、集中したマクダイはやがて魔言を唱える。


「大地に宿る魔力よ、大気に満ちる魔力よ、その偉大なる力で我が敵を討ち滅ぼせ」

「駆ける速さは風のごとく、滅する姿は焔のごとく・・・」


突如、風が無いのに風が起こり、冷たい朝の空気が熱を帯びる。


「全てを焼き尽くせ、ファイアストームッ!!!」


東の門を少し離れた外の草原一帯が、一瞬で赤く染まり、凄まじい轟音が轟いた。


前方の草原が突然火の海と化し、火はやがて膨れるように大きく巻き上がり上昇するとそのまま大きな火柱になり数も次々と増えていく。

まるで炎の嵐になったそれは、辺りを這い回ると次第に薄れ消えていった。


炎が収まり、ゼクトの街の東にあった草原は煙が少し立つだけで何も無い光景になっていた。


もちろん獣は骨すら残っていなかった。


マクダイは、ほぼ使い切った魔力で足もとがふらつきながらもなんとか街の外壁に寄りかかると眼を閉じて身体を休めた。



西の門を守護するザックは、遠く西の森のほうより走ってくる獣達を見やり、


「来やがったぞ、野郎ども!」


と叫んだ。


数は200と少しだろうか、恐らくゴートウルフだろう黒い獣がこちらを目指して駆けてくる。


「ノルマは1人5体ちぃっとか?この程度軽くのしてやれや、おめえら!」


おう!と、周りが応えると40人近くが思い思いにゴートウルフに向かって走って行く。


彼等ハンターはFからAまでランクがあり、ザックを除くと皆が3段階目のDランクなのだが、そのDランクは決して低いわけではない。

登録したてのFは見習いではあるが、その次のEは既に一人前として扱われており、Dとなるとハンターとして功績を積まないと成れはしない。

つまりDとは、ハンターとして既に一流と言ってよく、獣程度がいくら襲いかかろうが返り討ちにできる腕前の猛者ばかりなのである。


「8ッ!・・・こいつで9とさらに10〜ぅ!」


テッドが軽やかにゴートウルフを倒して回る。


今年で25になる彼はハンター達のなかでもかなりの腕前ではあるのだが、[Dランクハンター]に昇格したのはもう5年も前であり、[Cランクハンター]にはまだまだ及ばない。

本人はすぐに[Cランクハンター]に、と意気込んでいたのだがそんなに甘い世界ではなく、結局は食べるのに必要な金を稼ぐため黙々と街周辺の獣を狩る日々だった。


近隣で魔獣の目撃情報があり、ハンターギルドが騒然になった時にテッドは1人ほくそ笑んだ。


やっとチャンスが回ってきたと思ったのだ。

[Cランクハンター]に成れないのは自分に名声が無いだけだと勘違いしてうぬぼれていた。


しかし、今回の魔獣戦で精鋭ハンター達の動きを自分の目で実際に見たテッドは自分のうぬぼれを恥じることになった。


目の前であっさり死んだハンターは、自分との腕前に大差がなかったし、たいしたことないと1人魔獣に突っ込み返り討ちにされたハンターと、今まで調子に乗っていた自分がかぶって見えたのだ。


さらに中心人物として戦った[Cランクハンター]と自分の差は、あきらかに歴然だったから。


まずは目の前の敵を最小限の力で、最小限の動きで、出来るだけ早く仕留めよう、テッドはそう考える。

派手な攻撃だけが目に入ったが、実は繊細な動きもできる[Cランクハンター]のザックの動きを盗み見て。


ちなみに、15歳で[Dランクハンター]になったエルダは例外だ。

師であるカタリナに付きっきりで生きる術を教えてもらっていたので才能を既に開花している。

[Cランクハンター]に付きっきりで教えてもらうなんてまずはあり得ないことなので異例だといえる。


いつの間にか、周りのほとんどの獣達は動かなくなり、あとは屍をさらすのみになっていた。


ハンター達は疲れも見せずに互いの無事を確かめ合う。

ザックもテッドと視線が合うと親指を立てて笑いかけた。


[南の巨人]の先鋭ハンター達は、難なく見事に西の門を守り切ったのである。

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