表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/40

Cランクパーティーが99階層まで到達してしまいました!

【90】


数字を見ていると、なんだか不思議な気分になった。


ダンジョンに入ったばかりの頃は、45階層が目標だった。


それが今は90階層。


ちょうど二倍だ。


「お兄様」


「ん?」


ルナが扉を叩きながら言った。


「早く開けましょう~!」


……感慨に浸る時間もくれないのか……。


ガイルさんが前へ出た。


「待て」


彼は地図と記録をもう一度確認した。


「90階層から先は、本当に情報がほとんどない。残ってるものも大半が何十年も前の記録だ」


セリアさんも頷く。


「それに、ここから先へ下りた人の中には、帰ってこなかった人も多いって聞いてるよ」


ルナが少しだけ静かになった。


「……じゃあ、もっと気をつけないといけませんね」


おおっ。


今回はちゃんと分かったのか?


「じゃあ私が先頭で全部吹き飛ばします~!」


「そういう意味じゃない!」


ガイルさんがすぐに叫んだ。


俺たちは結局、扉を開けた。


ギィィ……。


扉の向こうは暗かった。


とても暗い。


これまでの森や雪原のように、天井が光っているわけでもない。


果てしなく続く黒い岩場。


そして地面のあちこちから、淡い青い光だけが漏れていた。


「……夜みたいですね」


ルナが言った。


「足元に気をつけろ」


ガイルさんが小さな魔導灯を取り出した。


だがルナが手を上げる。


「私がやります」


「ん?」


ルナは魔法の名前を何も口にせず、指を軽く持ち上げた。


すると俺たちの頭上に、小さな光の球がいくつも浮かび上がった。


周囲が一気に明るくなる。


「……」


ガイルさんがルナを見た。


「どうしました?」


「いや……なんでもない」


何か言いたそうな顔だけど。


90階層は黒い洞窟と崖が入り混じった地形だった。


道も一方向には続いていない。


上へ登ったと思えば、


また下へ降り、


細い石橋を渡らなければならない場所まであった。


そして、魔物も明らかに変わっていた。


91階層に現れたのは巨大な黒い獅子だった。


肩の高さだけでも、人間を何人か積み上げたくらいありそうで、


全身からは黒い炎のようなものが揺らめいている。


「ダークフレイムレオ……」


ガイルさんが呟いた。


「ランクは?」


「……Aランクの魔物だ」


ルナがそいつを見つめた。


「格好いいですね~!」


……今回は好みらしい。


ダークフレイムレオが大きく吠えた。


「グオオオオオ!!」


洞窟全体が震える。


そして口から黒い炎が噴き出した。


ルナが杖を持ち上げる。


「《アクアバリア》!」


巨大な水の壁が広がった。


炎と水がぶつかり、大量の蒸気が一気に立ち込める。


俺はその中を突っ切って前へ走った。


ダークフレイムレオが顔を向けた瞬間、


俺は奴の顎の下を拳で殴り上げた。


ドォン!


巨大な体が後ろへ倒れた。


「……」


ガイルさんが言った。


「剣も使わず拳一発か……。だんだんAランクの魔物が可哀想になってきたな」


「私もちょっとそう思う」


セリアさんが答えた。


92階層。


黒い水晶がびっしりと生えた洞窟だった。


その水晶の間から、魔力を吸収するクリスタルマンティスが現れた。


ルナは魔法を使おうとしたが、


奴が魔力を吸収すると聞いて杖を下ろした。


「じゃあ、お兄様の番ですね~」


……ずいぶんあっさり任せるんだな。


93階層では地下湖が現れた。


水は底まで見えるほど澄んでいたが、


その底では巨大な影がいくつも動いていた。


「あれ、魚ですか?」


ルナが身を乗り出す。


「近づくなよ」


「近づきませんよ~」


その瞬間。


ザバァン!!


湖から巨大な口が飛び出した。


ルナはすぐに後ろへ下がった。


「……近づかなくてよかったですね」


「そうだな」


湖の中にはジャイアントアビスフィッシュが何匹もいた。


結局、ルナが湖面を凍らせて道を作った。


俺たちは氷の上を歩き、素早く通り抜けた。


94階層。


95階層。


ここまで来ると、一つの階層を越えるだけでもかなり時間がかかる。


道は複雑になり、


魔物も強くなった。


だが逆に、戦闘そのものは長引かなかった。


ルナが道を塞ぐ魔物を魔法で倒し、


俺が近づいてくる魔物を処理する。


ガイルさんとセリアさんは道探しと危険な地形の確認に集中した。


こうして役割を分けると、移動速度はかなり上がった。


そして95階層を越えたあたりで、


地形がもう一度大きく変わった。


黒い洞窟が終わり、


今度は巨大な石造りの遺跡が現れた。


天井は高すぎて、ほとんど先が見えない。


両側には壊れた石像がずらりと並んでいた。


「うぅ……ここは何なんですか……?」


ルナがゆっくり周囲を見回した。


ガイルさんが首を振る。


「俺にも分からない」


「記録にもないんですか?」


「ほとんどな」


セリアさんが壁を調べた。


「文字みたいなのはあるけど……読めないね」


壁には見覚えのない文字や紋様が刻まれていた。


かなり古そうだが、


誰が作ったのかは分からない。


ルナが手を伸ばした。


「触ってみても――」


「ダメ」


俺とガイルさんが同時に言った。


「……まだ触ってませんよ」


「まず手を下ろせ」


「はい……」


96階層では、鎧をまとった巨大な石像が三体動き出した。


一体だけでも、人間の身長の四倍以上はある。


ガイルさんはそれを見て、しばらく言葉を失った。


「……これはゴーレムって呼べばいいのか?」


「倒してみてもいいですか?」


「……ああ」


ルナが杖を前へ向けた。


「《アクアプレッシャー》!」


ゴオオオオ――!


凄まじい水圧の水流が、ゴーレムたちを正面から襲った。


最初のゴーレムが後ろへ押され、二体目と衝突する。


さらに三体目までまとめて巻き込まれた。


ドン! ドォン!


重い石像三体が、そのまま壁へ叩きつけられる。


表面の石の鎧には、あちこちに亀裂が走っていた。


「おお……」


俺は思わず声を漏らした。


「水って、あんな使い方もできるんだな」


「水を強くぶつければいいだけじゃないですか?」


ルナが当然みたいに首を傾げた。


……そんな簡単な話なのか?


……父さんは一体、ルナにどれだけの魔法を教えたんだろう。


97階層では、魔物はほとんど現れなかった。


その代わり罠が多かった。


床が抜け、


壁から槍が飛び出し、


天井から岩が落ちてくる。


むしろガイルさんとセリアさんが最も活躍した階層だった。


「止まれ!」


ガイルさんが突然手を上げた。


ルナが足を止める。


「どうしたんですか?」


「お前の前の床を見ろ」


よく見ると、石の色がわずかに違っていた。


ガイルさんが小さな石を投げる。


コツ。


次の瞬間。


ドォン!!


床が丸ごと崩れ落ちた。


「……」


ルナが静かに一歩後ろへ下がった。


「ガイルさん……」


「なんだ?」


「ここでは先に歩いてください」


「……分かった」


98階層。


ここからは、不気味なくらい静かだった。


魔物もほとんどいない。


罠もない。


ただ巨大な石の道だけが、真っ直ぐに続いていた。


「……おかしいな」


ガイルさんが言った。


「何がですか?」


「何もなさすぎる」


セリアさんも弓を構えたまま周囲を見回す。


「私もそう思う。むしろ不安になるくらい……」


俺たちは歩き続けた。


かなりの時間歩いたが、本当に何も現れない。


そして、その先に――


巨大な石の扉があった。


【99】


「……」


今回はルナもすぐには駆け寄らなかった。


ガイルさんとセリアさんが立ち止まる。


俺も数字を見つめた。


99階層。


30年前、


Sランクパーティーが到達したという場所だ。


「……ここが」


ガイルさんがゆっくり口を開いた。


「30年前、Sランクパーティーが最後に到達した階層だ」


ルナが扉を見上げる。


「その人たちは、ここまで来て戻ったんですか?」


「記録上はそうなってる」


「どうしてですか?」


「俺が知るわけないだろ」


ガイルさんが短く答えた。


「生きて帰った奴らも、理由についてはほとんど語らなかったらしい」


セリアさんが扉を見つめた。


「そして、それからは……ここまで再び到達したパーティーもいない」


急に、その扉が今までとは違って見えた。


ここまで何枚もの扉を開けてきた。


でも、この扉だけは――


なぜか簡単に触れてはいけないような気がした。


ルナもしばらく何も言わなかった。


やがて。


「……それでも」


ルナが俺を見る。


「ここまで来たんですから、確かめないとですよね?」


俺は頷いた。


「ああ」


ガイルさんが俺たちを見る。


そして少し考えたあと、口を開いた。


「分かった」


彼は剣を握った。


「でも、少しでもおかしいと思ったらすぐに退くぞ」


「はい!」


今回ばかりは、ルナもふざけた返事をしなかった。


俺たちはゆっくりと99階層の扉へ近づいていく。


ギィィィ……。


30年間、誰にも再び開かれることのなかった――


99階層の扉が、ゆっくりと開き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ