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ついに52階層を突破しました!

「ほら、あれを倒しに行ってみましょう~!」


「………そうだな……」


ルナが指さした方向を見る。


巨大な木々の間を、何かがゆっくりと動いていた。


51階層で見たホーンドエイプよりも、さらに大きそうだ。


ズン……。


一歩動くたびに、地面がわずかに揺れる。


ガイルさんが手を上げて俺たちを止めた。


「待て。いきなり近づくな」


「どうしてですか?」


「まだ何なのかも分からないだろ」


「近づけば分かるんじゃないですか?」


「そうやって確かめるのが危ないって言ってるんだ!」


ルナが首を傾げる。


セリアさんは笑いをこらえながら弓を手に取った。


「とりあえず少し回り込んで確認しよう」


俺たちは木々に身を隠しながら、ゆっくりと前へ進んだ。


52階層は、本当に51階層とは雰囲気が違う。


一本一本の木がずっと太く、高さも凄まじい。


地面には腰の高さまで伸びた草が生えていた。


空気も湿っている。


少し歩いただけでも、肌に湿気がまとわりつくような感覚がした。


そして何より……。


生き物がでかい……!


さっき木の上を通っていった虫なんて、俺の手のひらくらいあった。


ルナはそれを見た瞬間、俺の後ろに隠れた。


「……ルナ?」


「なんですか?」


「さっきホーンドエイプも嫌がってただろ」


「あれとは次元が違います……」


「何が?」


「虫じゃないですか!」


……ちゃんとした基準があったんだな。


俺たちはそれから間もなく、巨大な影の正体を確認した。


「……あれは!」


木々の間に立っていたのは、巨大なサイのような魔物だった。


体は濃い緑色の分厚い皮に覆われていて、背中や脇腹には草や苔まで生えている。


頭の前には、俺の腕より太そうな角が三本も突き出ていた。


ガイルさんが小声で言った。


「グリーンアーマーライノ……!」


「強い魔物なんですか?」


「Bランク上位の魔物だ。全身を覆ってる皮は鎧みたいに硬い。それに、突進を真正面から受けたら盾役の冒険者でも耐えるのは難しいって言われてる」


「ふーん……」


今回はルナも少し興味を示した。


「あれは平気なのか?」


俺が聞くと、ルナは答えた。


「虫でもないですし、気味の悪い魔物でもないですから。たとえばゴリラみたいな」


そんな基準だったのか?


グリーンアーマーライノは、まだ俺たちに気づいていないようだった。


ガイルさんが言う。


「わざわざ戦う必要はない! 回り込んで通り過ぎよう」


「はい」


俺はすぐに答えた。


ルナも意外なことに素直に頷く。


「分かりました!」


おおっ。


今日はどうしたんだ?


俺たちはグリーンアーマーライノを避けるため、右へ回り込んだ。


その途中。


ルナの鞄についていた金属の飾りが枝に引っかかった。


チリン。


ほんの小さな音だった。


けれど……。


「……」


グリーンアーマーライノが顔を上げた。


目が合った。


「……」


「……」


しばらく沈黙が流れる。


ルナが小さく言った。


「バレましたね~」


「そうだな……?」


「走れ!」


ガイルさんが叫んだ。


「ブオオオオ!!」


グリーンアーマーライノが地面を蹴った。


ドォン!


あの巨体でどうしてそんなに速く動けるんだ?


正面にあった太い木が、そのままへし折られる。


バキバキッ!


「速さも力も、なかなかですね~!」


ルナが感心したように言った。


「あれはちょっと格好いいかもしれません~」


「感心してる場合か?!」


ガイルさんが叫んだ。


グリーンアーマーライノが方向を変え、今度はセリアさんへ突っ込んでいった。


「セリア!」


セリアさんが横へ跳びながら矢を放つ。


ヒュッ!


矢は首元に刺さったが、深くは入らない。


「皮が厚すぎる!」


「それなら私が――」


ルナが杖を構えた。


「待って」


俺は前へ出た。


「俺が止める」


「リオン!」


ガイルさんが驚いて俺を見る。


「さっき言っただろ! 今までの魔物とは違う! 正面から受けたら――」


グリーンアーマーライノが突っ込んできた。


ズン!


ズン!


ズン!


俺は両足を地面にしっかりとつけた。


そして、奴の頭が目の前まで迫った瞬間――


両手で角を掴んだ。


ドォン!!


足元の土が後ろへ大きく削られる。


「ほお~」


さっきのストーンドラゴンよりは、力があるな。


「ブオオオ!!」


グリーンアーマーライノがさらに力を込める。


俺も少しだけ力を増した。


そして――


止まった。


「……」


「……」


ガイルさんとセリアさんが呆然と俺を見つめている。


ルナは隣で拍手していた。


「お兄様の勝ちです~!」


「まだ終わってないって……!」


俺は角を掴んだまま横へ力を加えた。


「ふんっ!」


グリーンアーマーライノの巨大な体が、そのまま横へ回る。


奴はバランスを崩し、横倒しになった。


ズゥゥン!


「ブオ?!」


地面が大きく揺れた。


俺は剣を抜いた。


すると、またルナが声をかけてきた。


「お兄様!」


「ん?」


「皮を傷つけないでくださいね!」


……。


前は肉ばかり気にしてたのに、今度は素材になったのか……。


「分かったよ」


俺は剣を鞘へ戻した。


そして倒れているグリーンアーマーライノの頭の横へ近づく。


「悪いな」


ゴッ!


拳で一発。


奴の体から力が抜けた。


「……」


セリアさんが言った。


「結局、また剣を使わなかったね」


「そうですね」


ガイルさんは額を押さえていた。


「Bランク上位の魔物なんだけどな……」


ルナはもう、グリーンアーマーライノの背中に生えている苔を眺めていた。


「お兄様、本当に背中から草が生えてますよ!」


「むしるなよ」


「むしりませんよ! 私を何歳だと思ってるんですか……」


ガイルさんの説明によると、グリーンアーマーライノの皮や角はかなり高価な素材らしい。


問題は……。


「大きすぎますね……」


ルナが言った。


今回も全部持っていくことはできない。


俺たちは結局、角一本と皮の一部だけを切り取って持っていくことにした。


ルナは切り取った素材と巨大な死骸を交互に見つめた。


「もったいないです……」


「仕方ないだろ」


「アイテムボックス……」


「またその話か?」


「本当に欲しくなってきました!」


……まあ、少しは気持ちも分かる。


このダンジョンに入ってから、持って帰れずに置いていく素材が多すぎる。


するとガイルさんが言った。


「アイテムボックスなら、本当に手に入れられるって話はあるぞ」


「本当ですか?!」


ルナがすぐにガイルさんのところへ駆け寄った。


「ガイルさんも知ってたんですか?!」


「噂くらいだけどな」


「焼き鳥屋のおじさん、嘘ついてなかったんですね~!」


「……焼き鳥?」


ガイルさんが唐突すぎると言いたげな顔をした。


「まあ、とにかく詳しいことまでは俺も知らない。エルフが関係してるらしいって話くらいだ」


「エルフ……」


ルナが呟く。


目が輝いた。


……あとで絶対、調べに行こうって言い出しそうだな。


とにかく、俺たちは再び52階層を進み始めた。


グリーンアーマーライノのあとにも、何度か魔物が現れた。


木の上から襲いかかってくるブレードバードが三羽。


毒を吐く巨大なプラントリザード。


そして、木に擬態していたツリークローラーまで。


特にツリークローラーは、本当に見分けるのが難しかった。


ガイルさんが寄りかかっていた木が、いきなり動き出したんだから。


「うわああっ?!」


「ガイルさん!」


セリアさんが矢を放ち、ルナが氷魔法で脚を拘束する。


俺は奴を木々の間から引き剥がし、そのまま遠くへ投げ飛ばした。


ズゥゥン!


ガイルさんが冷や汗を拭う。


「……このままだと森が嫌いになりそうだ……」


「私は楽しいですけど?」


ルナが言う。


「それはお前だからだよ……」


そうして長い間、森の中を進み続けた末に――


俺たちは巨大な木の根の間に石の階段を見つけた。


「階段だ!」


ガイルさんの声が明るくなる。


上の階層ではいくらでも見かけた階段なのに、


森の中で見ると、こんなに嬉しいものなんだな。


階段の下には小さな石の扉があった。


【53】


「53階層!」


ルナが真っ先に駆けていく。


「今日の目標は達成ですね!」


「俺の目標は52階層を確認するところまでだったんだけどな……」


ガイルさんが言った。


「でも、52階層を突破できたのは良いことですよ!」


「……そうなのか……?」


セリアさんが笑った。


俺たちは扉の前で少し休憩することにした。


水を飲み、干し果物も少し口にする。


ルナはガイルさんが持っている地図をじっと見つめながら聞いた。


「53階層はどんな地形なんですか?」


ガイルさんが記録を確認する。


「うーん……悪いけど、ほとんど情報がない」


「本当ですか?」


「ああ。書いてあるのは『52階層より植生の変化が大きい』ってことくらいだ」


「植生……の変化?」


ルナが首を傾げた。


「それって何ですか?」


「簡単に言えば、この辺りに生えてる植物の種類や姿が大きく変わるって意味だ」


ガイルさんが周囲の木々を指さした。


「たとえば51階層が普通の森に近かったとすれば、52階層は木がずっと大きくなって、湿気も増えただろ?」


「あ~!」


「53階層では、それよりさらに変わるかもしれないってことだ。今までなかった植物が急に増えたり、異常なくらい巨大になってたりな」


セリアさんも付け加える。


「毒を持った植物とか、動く植物が出てくることもあるかもしれないよ!」


「動く植物ですか?」


ルナの目が輝いた。


「面白そうですね!」


ガイルさんがため息をつく。


「だからって、珍しいからって勝手に触るなよ」


「は~い!」


……その返事、なんだか不安なんだけど。


俺はもう一度、石の扉を見つめた。


このままずっと森が続くのか?


それとも、本当にガイルさんの言った通り、まったく違う植物が待っているんだろうか。


「一回、開けてみるか?」


俺が聞くと、ルナが勢いよく頷いた。


「はい!」


ガイルさんがため息をついた。


「……じゃあ、入口を確認するだけだからな」


俺たちは扉を開けた。


ギィィ……。


その瞬間、扉の向こうから、


暖かく湿った風が頬を撫でた。


目の前には、まだ森が広がっている。


だが52階層とは明らかに違った。


人よりも大きな花。


不自然なほど鮮やかな色をした植物。


俺の背丈を超える巨大なキノコ。


太い蔓が木から木へと絡みつき、


地面の近くには、薄紫色の霧まで漂っていた。


「……!」


ルナはしばらく何も言わずに眺めていた。


そして、小さく呟く。


「ガイルさん……」


「どうした?」


「植生の変化っていう意味、今のでよく分かりました……!」


「だろ?」


「はい……!」


ルナは巨大な花の一つを見つめた。


その花の、まるで口のような中心部分がゆっくりと開いていく。


「……あれには、あんまり近づきたくないですね……」


……ルナが先にそんなことを言うなんて。


どうやら53階層は、


今までの森とは少し違うらしい。


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そして、27話のアンケート(?)にも、ぜひ答えていただけるとありがたいです!


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