目標を達成したのに、もっと下へ行きたいです!
*****今回のあとがきには大事なことを書いてありますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです!*****
40階へ続く階段を降りた先には、これまでよりずっと広い空間が広がっていた。
天井も高い。
壁のあちこちに埋め込まれた光る鉱石のおかげで、奥の方までよく見えた。
そして広場の中央には……。
「……でかい!」
思わずそう呟いた。
巨大なトロールが一体、立っていた。
さっき見たミノタウロスよりもさらに大きい。
分厚い鉄の鎧を体のあちこちに身につけ、両手には俺の胴体ほどもある鉄槌を一本ずつ持っていた。
「40階の階層守護者、アーマードトロールだ……」
ガイルさんが剣を抜きながら言った。
「再生力がとんでもなく高い。中途半端に傷をつけても、すぐに治っちまう」
「再生するんですか?」
ルナの目が輝いた。
どうして面白い玩具でも見つけたみたいな顔をしてるんだ?
「ルナ」
「はい?」
「今回はいきなり吹き飛ばしたりするなよ」
「どうしてですか?」
「ガイルさんとセリアさんも戦う準備してるだろ」
「あ……」
今気づいたのか。
セリアさんが小さく笑った。
「気を遣ってくれてありがと」
ガイルさんが剣を前へ構えた。
「今回は四人でやろう」
「分かりました」
「はい!」
アーマードトロールが俺たちに気づいた。
「グオオオオオオ!!」
ズン!
奴が一歩踏み出しただけで、床が揺れた。
そしてそのまま片方の鉄槌を大きく振り回す。
「散れ!」
ガイルさんが叫んだ。
俺たちは左右へ分かれた。
ドガァン!!
鉄槌が床を叩き、石の破片が四方へ飛び散る。
すごい力だな……!
「セリア!」
「うん!」
ヒュッ!
二本の矢が同時に飛んだ。
一本はトロールの顔。
もう一本は、鎧の隙間にある肘へ正確に突き刺さる。
トロールが反射的に顔を庇った瞬間、ガイルさんが横から飛び込んだ。
「はあっ!」
ザシュッ!
剣がトロールの太腿を斬った。
かなり深い傷だ。
だが。
グニッ。
「えっ……?」
傷口が目に見える速さで塞がり始めた。
「本当ですね……!」
ルナが興味深そうに言った。
「感心してる場合じゃない!」
ガイルさんが叫ぶ。
トロールがガイルさんへ鉄槌を振り下ろした。
俺はその間へ飛び込む。
ガァン!!
剣で鉄槌を受け止めた。
腕に少し重い衝撃が伝わってくる。
くっ……!
さっきのオーガよりずっと力が強い。
「リオン!」
「大丈夫です!」
俺は鉄槌を横へ押し返した。
その瞬間、反対側の鉄槌が飛んでくる。
身を屈めて避け、そのままトロールの胸元へ剣を振った。
ザシュッ!
鎧ごと切り裂いた。
「グオオオ!!」
トロールが大きく後ろへ下がる。
だが、鎧の裂け目から見える傷もまた、少しずつ塞がり始めていた。
「再生って面倒ですね……」
俺が言うと、ルナが杖を持ち上げた。
「じゃあ、動けなくしちゃえばいいですよね?」
……ちょ、ちょっと待て。
嫌な予感がするんだけど……?
「ルナ、待っ――」
「《アイシクルランス》!」
もう遅かった。
ルナの周囲に、巨大な氷の槍が三本現れる。
シュシュシュッ!!
氷の槍はトロールの両腕と脚のすぐそばの床へ深く突き刺さった。
体そのものには当てていない。
代わりに氷が一気に広がり、トロールの手足を床へ固定していく。
「グオッ?!」
トロールが体を捻る。
だが、簡単には抜け出せない。
ルナが俺を見た。
「お兄様!」
「うん」
「今です!」
俺は前へ走った。
トロールの目の前まで近づき、
剣を横薙ぎに振るう。
ドガァン!!
剣の峰がトロールの側頭部を強く打った。
巨体がそのまま傾く。
ズン!!
トロールが床へ倒れた。
しばらく待ってみたが、起き上がってくる様子はない。
「……」
ガイルさんが倒れたトロールを見つめた。
「階層守護者を……峰打ちで倒したのか」
「素材が傷みにくいじゃないですか」
「……まあ、そうだけどな」
セリアさんが笑った。
「もうガイルもあんまり驚かなくなったね?」
「ここまで一緒に来て、いちいち全部驚いてたら俺が先に疲れる……」
40階の階層守護者を倒すと、広場の反対側にある扉がゆっくりと開いた。
その先には、41階へ続く階段が見える。
ガイルさんはその階段をしばらく眺めた。
「ひとまず目標は達成だな!」
「はい~!」
ルナが満面の笑みを浮かべる。
「40階を越えました!」
セリアさんも満足そうだった。
「前回の記録も更新したね」
ガイルさんは黙って頷いた。
少し嬉しそうに見える。
だが……。
「ガイルさん」
「なんだ?」
「じゃあ、次は45階まで行くんですか?」
ルナが聞いた。
「……」
やっぱり聞くと思った。
ガイルさんは少し考えてから言った。
「まず全員の状態を確認する」
俺とルナ、そしてセリアさんを順番に見る。
「怪我してる奴は?」
誰もいない。
「かなり疲れてる奴は?」
セリアさんが少しだけ手を上げた。
「ちょっとは疲れてる。でも、まだ大丈夫」
「俺も問題ない」
「俺もです」
「私はまだまだ元気です!」
ルナが杖を勢いよく持ち上げた。
それは見なくても分かるけど。
ガイルさんがため息をつく。
「分かった。じゃあもう少しだけ下へ行こう」
「わあ~!」
「ただし!」
ガイルさんがすぐにルナを指差した。
「45階までが元々の予定だ。そこでまた状況を確認する」
「は~い!」
そうして俺たちは41階へ降りた。
そこから先は、確かに魔物もさらに強くなった。
鎧を身につけたオークの戦士。
頭が二つある狼。
岩を投げつけてくる巨大な猿型の魔物まで現れた。
だが……。
「《フレイムバースト》!」
ドォン!!
「グアアッ!」
……ルナが焼き払い。
「はっ!」
ドゴッ!!
俺が吹き飛ばす。
ガイルさんとセリアさんは逃げようとする魔物や、隙を見せた相手を確実に仕留めていった。
思ったより進む速度はほとんど落ちなかった。
44階。
45階。
そして……。
「階段ですよ!」
ルナが言った。
ガイルさんが足を止める。
壁には数字が刻まれていた。
【46】
「……」
「ガイルさん?」
「ちょっと待て」
ガイルさんが水を一口飲んだ。
「ここで一度休もう」
俺たちはその場で少し休憩することにした。
元々、45階で改めて判断する予定だった。
ガイルさんが口を開く。
「正直に言えば……ここで引き返しても十分だ」
セリアさんが静かに彼を見る。
「俺たちはもう目標を達成した。それも、予想よりずっと早くな」
ガイルさんが続けた。
「40階を越えて、45階まで来た。誰も怪我してない」
声は落ち着いていた。
昔なら、もっと先へ行こうと言っていた人だと聞いている。
なのに今回は、ガイルさんの方から先に帰る話を出した。
セリアさんが少し笑った。
「ずいぶん変わったね」
「……」
ガイルさんが頭を掻いた。
「俺も、自分がこんなことを言うようになるとは思わなかったよ」
俺は少し考えてから尋ねた。
「でも、まだ大丈夫なら、もう少しだけ進んでもいいんじゃないですか?」
ガイルさんが俺を見る。
「!! なんでだ?」
「この先がどうなってるのか気になるので」
「お兄様!」
ルナがすぐ隣へ寄ってきた。
「私もです~!」
「特に50階の階層守護者が気になります!」
……それが目的だったのか。
セリアさんが笑った。
「どうする、リーダー?」
ガイルさんは少し考えた。
そして深くため息をつく。
「……50階までだ」
「本当ですか?」
「ただし条件がある」
ガイルさんの表情が真剣になる。
「さっきも言った通り、少しでも危険だと思ったらすぐに引き返す」
「はい」
「約束できるか?」
「分かりました」
ルナも勢いよく頷いた。
「約束します!」
「よし」
ガイルさんが立ち上がる。
「じゃあ、50階までだけ確認するぞ」
俺たちは再び歩き出した。
46階。
47階。
48階。
49階。
そして、しばらくすると……。
「あった!」
ルナが前へ走っていく。
「ルナ、走るな!」
「は~い!」
全然聞いてないじゃないか。
階段の前の壁には、大きな数字が刻まれていた。
【50】
「……本当に来ちまった……」
ガイルさんが呆然と呟いた。
セリアさんも乾いた笑いを漏らす。
「朝に入ったばかりなのに、もう50階なんてね」
俺もその数字を見上げた。
一週間ほどを想定して入ったダンジョン。
それなのに、初日から50階だ。
……俺たち、ちょっと速いのかもしれない。
そしてその時。
50階の奥から、巨大な振動が響いてきた。
ズン……!
ルナの目が輝く。
「お兄様!」
「うん」
「今回の階層守護者、かなり大きくて強そうですよ!」
……どうしてそんなに嬉しそうなんだ?
こうして俺たちは、
50階の扉の前に立った。
あの……絶対にストーリーに入れたりするわけではないのですが……。
もしリオンに彼女ができるとしたら、どんな女の子が似合うと思いますか……?
皆さんの意見を聞かせていただけると嬉しいです!
(もちろん、絶対にストーリーに入れるというわけではありません!)
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