表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/40

Bランク上位の魔物も一撃でした!

「ルナ、子供を頼む!」


「はい! お兄様はお肉をお願いします~!」


……それは倒してから考えよう。


ヴェノムドレイクが大きく口を開けたまま、こちらへ襲いかかってきた。


体格はサンダーレオよりも大きく、足を踏み出すたびに地面が激しく揺れる。


背中に生えた黒い棘の間からは紫色の毒液が流れ、太く長い尻尾の先にある毒針は、大木一本くらいなら簡単に貫けそうなほど鋭かった。


「リオン! 正面から受けるな!」


バルクさんが叫んだ。


「ヴェノムドレイクはBランク上位の魔物だ! 鱗は鋼鉄よりも硬く、血や唾液にも強力な毒が含まれている!」


「そうなんですね」


俺は剣を軽く持ち上げた。


ヴェノムドレイクが目の前まで迫ってくる。


奴は巨大な前脚を持ち上げ、そのまま振り下ろした。


ドォン!


俺は横へ一歩動いて攻撃を避けた。


黒い爪が地面へ突き刺さり、土と石が四方へ飛び散る。


「避けた!」


ドランさんが叫んだ。


俺はそのまま奴の脚を駆け上がり、身体の上へ跳び乗った。


ヴェノムドレイクは遅れて頭を振り向かせたが、動きがあまりにも遅い。


父さんの尻尾を避けながら修行していた頃と比べれば、止まっているように見えるほどだった。


俺は奴の頭の上へ着地した。


「ここを斬ればいいのかな?」


剣を握る手に力を込める。


「待て! 鱗が硬すぎて、普通の剣では……!」


カルドさんが叫んだ。


俺は剣を軽く振り下ろした。


スパッ。


黒い鱗ごと、ヴェノムドレイクの首がそのまま切り落とされた。


「……え?」


ドランさんの口から、力の抜けた声が漏れた。


ヴェノムドレイクは走ってきた勢いを止められず、そのまま数歩進んだ。


そして、頭を失った巨大な身体が前へ倒れた。


ズズゥン!


地面が大きく揺れた。


森の中に舞っていた土埃が、ゆっくりと収まっていく。


調査隊の人たちは、誰も言葉を発しなかった。


俺はヴェノムドレイクの身体から飛び降り、剣に付いた血を払った。


幸い、血はそれほど飛び散っていない。


首を一度で切り落としたからか、胴体も綺麗なままだった。


何だか、アーマーボアより簡単だった気がする。


今回は最初から真面目に戦ったからかな……。


これからもふざけず、さっさと終わらせる方がよさそうだな~。


「い、いや、ちょっと待て」


ドランさんが、ゆっくりと盾を下ろした。


「も、もう……終わったのか?」


「はい」


「Bランク上位の魔物だぞ!?」


「そうだと聞きました」


「一回斬っただけだぞぉ!?」


「首を斬られたら、普通は死ぬんじゃないですか?」


「そ、それはそうだが……」


ドランさんは、ヴェノムドレイクと俺を交互に見た。


バルクさんも、弓を引き絞った姿勢のまま固まっている。


セラさんが呆然とした顔で呟いた。


「私たち、どうして十人も来たのかしら……」


「え? 調査に来たんですよね?」


俺が答えると、セラさんは頷いた。


「ああ、そうね。調査はしたわね。はは……」


メルヴィンさんは、手のひらに作っていた炎を静かに消した。


「僕はまだ一度も魔法を使えていないのですが……」


「次に使えばいいじゃないですか」


「次は、僕の出番があるのでしょうか……?」


ものすごく悲しそうな顔だ。


理由は分からないけど、何だか悪いことをした気分になってきた。


その時、ルナの腕の中から小さな鳴き声が聞こえた。


「キュウ……」


サンダーレオの子供が、ゆっくりと目を開けた。


前脚を染めていた紫色の毒気は完全に消え、深かった傷もわずかな痕だけを残して塞がっている。


「治りました!」


ルナが子供をそっと地面へ下ろした。


子供は少しふらついた後、成体のサンダーレオへ向かって走っていった。


「キュウ!」


成体のサンダーレオは身体を低くし、子供の顔や身体を何度も舐めた。


その姿を見ていた調査隊の緊張も、少しずつほぐれていった。


「よかった」


カルドさんが安堵の息を吐いた。


「もしあの子供が死んでいたら、成体のサンダーレオが我を失い、町の方角へ走り出していた可能性もあっただろう」


サンダーレオは子供の状態をすべて確認すると、ルナを見た。


身体にはまだ多くの傷が残っていたが、先ほどのように威嚇する稲妻は発生させていない。


むしろ、ゆっくりと頭を下げた。


「お礼を言っているみたいです~」


ルナも向かい合って頭を下げた。


「今度はお母さんも治してあげますね!」


ルナが成体のサンダーレオへ近づいた。


サンダーレオは少し警戒しているようだったが、子供がルナのそばに寄り添っているのを見て、大人しく身体を伏せた。


ルナの手から白い光が流れ出した。


脇腹の深い傷が急速に塞がり、血で濡れていた青い毛も、元の鮮やかな色を取り戻していく。


「あれほどの傷を、あんなに簡単に……!」


メルヴィンさんが再び衝撃を受けた顔をした。


「魔力は大丈夫なんですか?」


「はい~。このくらいなら、ほとんど使いません」


「…………」


メルヴィンさんは、それ以上尋ねるのをやめたように口を閉じた。


治療が終わると、サンダーレオは力強く立ち上がった。


青い毛の間から、電流が軽く弾ける。


だが、今度は攻撃するための稲妻ではなかった。


奴は子供の首元を、傷つけないよう慎重に咥えた。


そして立ち去る前に、俺とルナを交互に見た。


「もう別の場所へ行くみたいだな」


「元気でね~!」


ルナが大きく手を振った。


「次は怪我をしないでくださいね!」


「キュウ!」


子供が短く鳴いた。


サンダーレオは子供を咥えたまま、森の中へ走っていった。


青い光が木々の間で数回閃いた後、完全に見えなくなった。


バルクさんは、しばらくその方向を見つめてから言った。


「ふう~。今回の事件の原因は、これで片づいたようだな」


「ヴェノムドレイクがサンダーレオの子供を襲い、二頭が争ったことで、クリムゾンボアとアーマーボアの群れが森の外へ追い出されたのでしょうね」


セラさんが周囲の痕跡を調べながら言った。


「足跡と血の流れも一致していますし、他の魔物の痕跡もないようです」


俺は安堵の息を吐いた。


「それでは、もう町へ戻るんですか?」


「ああ」


「本当によかったです!」


ルナが両手を合わせた。


「市場へ行けますね~!」


「お前は、この状況で真っ先に市場のことを考えるのか?」


ドランさんが尋ねた。


「はい!」


ルナは少しも迷わなかった。


「お兄様が髪飾りを買ってくださると約束してくれたんです~」


調査隊員たちの視線が俺へ集まった。


「まあ……約束しましたから」


俺が答えると、セラさんが笑った。


「その部分だけは、普通のお兄ちゃんみたいね」


「……? 俺はもともと普通ですよ」


「ええと……それは違うと思うわ」


問題は、ヴェノムドレイクの死体だった。


体長があまりにも長く、そのまま運ぼうとすると周囲の木々に引っかかってしまう。


バルクさんと調査隊員たちは、運搬方法について話し合い始めた。


「ひとまず尻尾と頭を切り離すか?」


「だが、切り方を間違えたら毒が広がるかもしれない」


「ギルドから解体担当者を呼んだ方が安全じゃないか?」


俺はヴェノムドレイクを両手で持ち上げた。


「普通に持っていけばいいんじゃないですか?」


調査隊員たちが一斉に俺を見た。


「それを?」


「はい」


「一人で?」


「はい」


胴体が木々の間に引っかからないよう、縦に立てて肩へ担いだ。


「こうすれば通れそうですね」


誰も返事をしなかった。


ドランさんは盾を背中へ背負い、力なく呟いた。


「もう驚くのにも疲れた……」


俺たちはヴェノムドレイクを運び、町へ戻った。


北門の前へ到着すると、警備兵たちが驚いて槍を構えた。


「ま、魔物だ!」


「大丈夫です! 死んでいます!」


俺が言うと、警備兵たちは俺の肩の上を見上げた。


「あ、あれはヴェノムドレイクか?」


「Bランク上位の魔物らしいですよ……」


「またお前が倒したのか?」


「はい」


「どのくらい戦った?」


「普通に一回斬りました」


警備兵はしばらく俺を見つめた後、仲間へ言った。


「ギルドへ知らせろ!」


「何と言えばいい?」


「リオンの奴が、また何かとんでもないものを持ち帰ったと伝えろ!」


門を通り抜けると、噂は瞬く間に広まった。


人々は昨日と同じように、通りへ集まってきた。


「今度は蜥蜴だ!」


「昨日の奴より大きくないか?」


「また一人で持っているぞ!」


子供たちも走ってきた。


「リオンお兄ちゃん! すごく大きいのを捕まえてきてって言ったら、本当に捕まえてきたんだね!」


「そうだな~」


「次は、もっと大きいのも捕まえてきてよ!」


「これ以上大きいと、持ち運ぶのが大変そうなんだけど……」


「え~? 問題はそこなの?」


「うんうん。そうとも。とても大事な問題だ」


ギルドの前へ到着すると、ガルムンさんが駆け出してきた。


彼はヴェノムドレイクを確認すると、その場で固まった。


「こ、これをどこで倒した?」


「北の森です」


「どうやって倒した?」


「首を斬りました」


「それは見れば分かる。何人で仕留めた?」


「俺一人です」


ガルムンさんは黙ったまま、首の切断面を調べた。


そして深いため息を吐いた。


「鱗ごと剣で切断したのか……」


「高く売れますか?」


「お前は毎回、その質問から入るな!」


「うーん……やっぱり一番大切なので」


ガルムンさんはヴェノムドレイクの死体を改めて確認した。


「鱗、毒袋、毒針、爪、魔石まで、すべて高級素材だ! 特に、これほど綺麗な状態で残っている死体は滅多にない」


「お肉は?」


ルナが尋ねた。


ガルムンさんは何とも言えない表情になった。


「ヴェノムドレイクの肉は食べない」


「どうしてですか?」


「当たり前だ! 毒があるからだ」


「きちんと処理すれば、食べられるんじゃないですか?」


「食べられるとしても、俺は食べたくないぞ……」


ルナはとても残念そうな顔をした。


「え~。こんなに大きいのに……」


「その代わり、精算額は相当なものになるぞ」


「どのくらいですか?」


「正確な鑑定が必要だが、少なくとも金貨百枚以上になる可能性は高いだろう」


「金貨百枚!」


今度は俺とルナが同時に叫んだ。


昨日倒したクリムゾンボアよりも、遥かに高かった!


「それだけあれば、市場のお肉を全部買えますか?」


ルナが真剣な顔で尋ねた。


「全部は買うなよ……」


「少しだけにします~」


ルナの言う「少し」は、まったく信用できないけど……。


鑑定と精算には時間がかかるというので、俺たちは先にギルドを出た。


調査隊の報告は、バルクさんとカルドさんが引き受けてくれることになった。


俺たちの目的地は市場だ。


「お兄様、あそこです!」


ルナは昨日見かけた装飾品店へ、真っすぐ走っていった。


店には色とりどりの紐や首飾り、腕輪、髪飾りが並べられていた。


ルナはその中から、青い宝石が付いた銀色の髪飾りを手に取った。


「わあ~! これはどうですか?」


銀色の髪のそばへ当ててみると、とてもよく似合っていた。


「おお~。可愛いな」


「本当ですか?」


「ああ! それにしよう」


「値段も聞かなくていいんですか?」


「もうお金持ちだからな~」


昨日まではお金を使うたびに悩んでいたのに、もう金貨百枚を超える額を稼いでいる。


店主は髪飾りを丁寧に包んだ。


「銀貨三枚です」


俺は代金を渡した。


ルナはすぐに、髪へ付けてほしいと言った。


俺が慣れない手つきでルナの髪に髪飾りを付けると、ルナは店の鏡を見ながら明るく笑った。


「似合っていますか~?」


「ああ。ものすごく」


「これで本当に、人間の町の女の子みたいですか?」


「もともとそうだっただろ?」


「えへへ~」


その笑顔を見ていると、買ってあげてよかったと思った。


俺たちは、その後も市場を見て回った。


ルナは肉の串焼きを三本と、蜂蜜を塗ったパンを二つ食べ、初めて見る果物も買った。


俺は丈夫な新しい剣の鞘と、旅用の外套を購入した。


「他の町や都市へ行く時に必要になるだろうから、先に買っておかないとな~」


「え? 他の町ですか?」


俺の言葉を聞いたルナが、果物を食べながら尋ねた。


「ああ。ずっとここにいるわけにもいかないだろ?」


父さんの許可をもらい、山を下りた時から、俺たちの目的は人間の世界を見て回ることだった。


レーベンの町は、最初に到着した町にすぎない。


世界には、もっと多くの町があり、ここよりも遥かに大きな都市もあると聞いている。


そして、どこかには、その中でも最も大きな王都がある。


「次はどこへ行くんですか?」


「ギルドで聞いてみよう」


俺たちが宿へ戻ろうとした時、マリアさんが市場まで俺たちを捜しに来た。


「リオンさん、ルナさん!」


「どうしたんですか?」


「副ギルド長がお二人をお呼びです」


「精算が終わったんですか?」


ルナが期待に満ちた顔で尋ねた。


「精算のこともありますが、別のお話もあるんです!」


「別のお話ですか?」


マリアさんが頷いた。


「レーベンから歩いて三日ほどの場所に、『ラグナ』という大きな都市があります。そこのギルドが最近、魔物討伐を手伝ってくれる腕の立つ冒険者を探しているそうです」


「大きな都市!」


ルナの目が輝いた。


「市場も、ここより大きいんですか?」


「比べものにならないほど大きいですよ。店も多いですし、飲食店やギルドもずっと大きいです」


「お兄様!」


ルナが俺の腕を掴んだ。


口に出さなくても、何を言いたいのかは分かった。


俺も少し楽しみだった。


いや、ものすごく、ものすごく楽しみだった。


新しい都市。


新しい食べ物。


そして、新しい魔物たち。


「その都市へ行けばいいんですか?」


俺が尋ねると、マリアさんは笑った。


「まずは副ギルド長のお話を聞いてください。ちょうど明日の朝、ラグナへ出発する商隊もありますから」


思っていたよりも、この町を離れる日は早く訪れそうだ。


だが、また新しいものに出会えると思うと、俺の気持ちは次第に高鳴っていった。


ついに兄妹が新しい都市へ旅立ちます!


これからの展開が気になる方は、ぜひブックマークと評価をお願いいたします!


ありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ