第18話 ーー『銀河企業との取引』
ザイロス-7からアルテミス-7への旅は、約四時間かかった。
凪彦はその時間を使って、ヴェラディス貴族家とギャラクシーの大企業についてのデータを調べた。クララが彼の隣に座り、その物理的な体は落ち着いた存在感を放っていた。
「ヴェラディス貴族家」クララはホログラフィックスクリーンを操作しながら言った。「封建帝国で最も古い家の一つです。南部セクターを五百年以上にわたって支配しています。彼らの富は鉱業、貿易、そして――一部の情報源によれば――あまり合法的でない活動から来ています」
「あまり合法的でない活動?」凪彦は眉を上げた。
「噂では、彼らは違法武器取引に関与し、競合他社を弱体化させるために略奪者グループに資金提供していると言われています」クララは一瞬間を置いた。「しかし確固たる証拠はありません。彼らは非常に慎重です」
凪彦は頷いた。「つまり、我々は狡猾な貴族と向き合っているわけだ」
「その通りです。しかし心配する必要はありません」クララは微笑んだ。「いくつかの交渉戦略を用意してあります。そしてもし彼らが危険なことをしようとしたら……」
「イヴンタイドが守ってくれる」
「その通りです」
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アルテミス-7ステーションは以前と同じように見えた――賑やかで、様々な種族の船で満ち、絶え間ない交易活動に溢れている。
しかし今回は、何かが違っていた。
カメリア・オプスがドッキングベイに着陸すると、凪彦は金と白の高級船が彼らの隣に駐機しているのを見た。その船には複雑な紋章が描かれていた――六枚の翼を持つ竜が星を囲んでいる。
「ヴェラディス家の使者の船です」クララは言った。「予定より早く到着しています」
「彼らは会いたくてたまらないようだな」
「あるいは、我々を監視したくてたまらないのでしょう」
凪彦は微かに微笑んだ。「彼らが何を望んでいるのか見てみよう」
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アルテミス-7の会議室は、凪彦の想像よりもはるかに豪華だった。
部屋は黒と金の大理石で装飾され、クリスタルのシャンデリアが輝き、遠い惑星からの希少な木材で作られた長いテーブルが置かれていた。テーブルの向こう側には、六枚の翼を持つ竜のエンブレム――ヴェラディス家の紋章――を付けた、全身黒ずくめの男が背筋を伸ばして座っていた。
その男はハイエルフで、長い銀髪と鋭いエメラルドグリーンの瞳を持っていた。冷たく貴族的なハンサムな顔立ちで、まるで望むものは何でも手に入れることに慣れているかのようだった。
「志堂凪彦様」彼は滑らかで計算された声で言った。「私はヴェラディス貴族家の正式な使者、セネシャル・アルドリック・ヴェインと申します。お会いいただき感謝いたします」
凪彦はテーブルの向かいに座り、クララが優雅に彼の隣に座った。
「お会いできて光栄です、セネシャル・アルドリック」凪彦は礼儀正しく言った。「どのようなご用件でしょうか?」
アルドリックは微笑んだ――その微笑みは目にまで達していなかった。「あなたのことを色々と聞いております、志堂様。あなたの船、イヴンタイド・オプスは、特定の界隈で話題になっています。その戦闘能力……非常に印象的です」
「ありがとうございます。ただ仕事をしているだけです」
「非常に優れた仕事です」アルドリックは言った。「特にザイロス-7での略奪者グループの対処については。あなたが単独で彼らの艦隊すべてを撃破したと聞きました」
凪彦は冷静さを保った。「最善を尽くしたまでです」
アルドリックは椅子に寄りかかり、計算高い目で凪彦を見つめた。
「遠回しな言い方はしません、志堂様。ヴェラディス家はあなたに協力契約を提案したいのです。我々はこのセクターでの利益を守るために、イヴンタイド・オプスのような能力を持つ船を必要としています」
「どのような保護が必要なのでしょうか?」
「交易コンボイの護衛、重要な船の警護、そして時には……より機密性の高い任務です」アルドリックは微かに微笑んだ。「もちろん、報酬はそれに見合ったものになります。月額50,000 UCに加え、成功した任務ごとにボーナスをお支払いする用意があります」
凪彦は眉を上げた。月額50,000 UC――非常に大きな額だ。しかし彼は急いではいなかった。
「それは非常に魅力的な提案ですね、セネシャル。しかし検討する時間が必要です」
「もちろん、もちろん」アルドリックは頷いた。「しかし真剣にご検討いただけるようお願いします。ヴェラディス家は……忠実な者には非常に寛大です。そして拒否する者には非常に不愉快な存在でもあります」
凪彦はその言葉に脅しのニュアンスを感じ取った。しかし恐怖は見せなかった。
「十分に検討いたします」彼は落ち着いて言った。「他に何か?」
アルドリックは微笑んだ。「いいえ、それだけです。あなたの返事をお待ちしております」
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会議室の外で、凪彦とクララは通路を歩いていた。
「あれは暗黙の脅しでした」クララは低い声で言った。「断れば、敵と見なされる」
「分かっている」凪彦は頷いた。「しかし彼らの話し方は好きじゃない。滑りすぎだ。何かを隠している」
「どうするつもりですか?」
「待つ。何が起こるか見る。その間に……」凪彦は立ち止まり、クララの方を向いた。「他にも我々に興味を持っている企業があると言っていたな?」
クララは頷いた。「はい。大企業です――カイン・インダストリーズ。数時間前にメッセージが届きました。製造分野での協力の可能性について会いたいとのことです」
「カイン・インダストリーズ?それは何だ?」
クララは手首のホログラフィックスクリーンを操作した。「カイン・インダストリーズはギャラクシー最大のコングロマリットの一つです。テクノロジー、製造、そして惑星間貿易を手がけています。本社は封建帝国の中心惑星にあります」
「そして彼らが我々に興味を持っているのか?」
「彼らはイヴンタイド・オプスの製造能力について聞いたようです――おそらくギルドの報告書か他の情報源から」クララは微笑んだ。「そして彼らは会いたがっています。CEO自らが来るそうです」
凪彦は驚いた。「CEO自ら?それは本格的だな」
「その通りです。会議は明日の朝、アルテミス-7で予定されています。確認は既に取っています」
凪彦は微笑んだ。「よし。彼らに会おう」
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翌朝、凪彦とクララは再びアルテミス-7を訪れた。
今回は、別の会議室に案内された――よりモダンで、宇宙空間の景色が見えるガラスの壁が特徴的だ。部屋の中では、一人の若い女性が既に彼らを待っていた。
その女性は高くてスリムで、長い黒髪が肩に流れていた。瞳は金色――珍しく印象的な色だ。服装はエレガントだが実用的で、黒いビジネススーツに襟と袖口に金のアクセントが付いている。胸には、星の形をしたバッジがあり、中央に「KI」の文字が刻まれている。
彼女は凪彦とクララが入ってくると微笑んだ。その微笑みは温かかった――アルドリックの冷たい微笑みとは違っていた。
「志堂凪彦様」彼女は柔らかだが自信に満ちた声で言った。「私はジェメラ・カインです。カイン・インダストリーズのCEOです。お会いいただきありがとうございます」
凪彦は丁寧にお辞儀をした。「お会いできて光栄です、カイン様。こちらはクララ・ヴェイル・アーチェン、私のアシスタントでありパートナーです」
クララは優雅に頷いた。「初めまして」
ジェメラは興味深そうにクララを見つめた。「カイン・インダストリーズはイヴンタイド・オプスとその製造能力について多くのことを聞いております。私は特にあなた方の持つテクノロジーに非常に興味があります」
「どのような点に興味をお持ちですか?」凪彦が尋ねた。
ジェメラは微笑み、小さなホログラフィックスクリーンを取り出した。そのスクリーンには、イヴンタイド・オプスの汎用製造プラントに関するデータが表示されていた。
「イヴンタイド・オプスがほぼすべての種類の部品や装備を生産できるという情報を得ています。船の部品から軍事グレードの武器まで」彼女の目が輝いた。「それは非常に稀な能力です、志堂様。封建帝国でさえ、そのような能力を持つ施設はごくわずかです」
凪彦は眉をひそめた。「どうやってその情報を?」
ジェメラは神秘的な微笑みを浮かべた。「カイン・インダストリーズは広範な情報ネットワークを持っています。しかしご安心ください――その情報を悪用するつもりはありません。ただ協力を提案したいだけです」
「どのような協力ですか?」
「カイン・インダストリーズは特殊部品を製造できるパートナーを必要としています――自社の施設では製造できないテクノロジーです」ジェメラは身を乗り出した。「高額でお支払いする用意があります。そしてその代わりに、我々の交易ネットワーク、市場情報、そしてあなたを傷つけようとする勢力からの保護へのアクセスを提供します」
凪彦は一瞬クララを見た。クララは微かに頷いた――この提案に可能性があると見ている合図だ。
「検討する時間をいただけますか?」凪彦は尋ねた。
「もちろんです」ジェメラは微笑んだ。「しかしあまり長くお待たせしないでください。このオファーは永遠に続くわけではありません」
「48時間以内にご回答いたします」
「結構です」ジェメラは立ち上がり、手を差し出した。「ご協力を楽しみにしています、志堂様。これが相互に有益な関係の始まりになると信じています」
凪彦は彼女の手を握った。「私もそう願っています、カイン様」
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会議室の外で、凪彦とクララは速足で歩いた。
「どう思う?」凪彦が尋ねた。
クララは素早くデータを処理した。「ジェメラ・カインは誠実に見えます。しかし注意が必要です――カイン・インダストリーズのような大企業は常に隠された目的を持っています」
「しかし彼女たちの提案はヴェラディス家より良いか?」
「はるかに良いです。ヴェラディス家は保護契約を提案しました――それは本質的に我々を彼らの奴隷にすることです。カイン・インダストリーズはパートナーシップを提案しています――我々は独立を維持し、製品とサービスを提供するだけです」
凪彦は頷いた。「同意する。しかし警戒は怠らない」
「もちろんです」クララは微笑んだ。「カイン・インダストリーズをより深く調査します。その間……」
「何だ?」
「一つ気になることがあります」クララは立ち止まり、鋭い目で凪彦を見つめた。「ジェメラ・カインは広範な情報ネットワークを持っていると言いました。そして彼女は我々の汎用製造プラントについて知っていました。それはつまり……誰かが情報を漏らしたということです」
凪彦は眉をひそめた。「誰だ?」
「分かりません。しかし突き止める必要があります」クララはため息をついた。「最近、あまりにも多くの勢力が我々に興味を持っています。最初はヴェラディス家、今度はカイン・インダストリーズ。どうやらイヴンタイド・オプスが望まない注目を集め始めているようです」
凪彦は微かに微笑んだ。「それは我々が正しい軌道に乗っている証拠だ」
「あるいは、大きな危険への道を進んでいる証拠かもしれません」
「両方かもしれない」凪彦は窓の外の星々を見つめた。「しかし今さら引き下がれない。もう遠くまで来た」
クララは微笑んだ。「いつものようにね、凪彦。あなたはいつも最も困難な道を選ぶ」
「しかし君はいつもそばにいる」
「いつでも」
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その夜、凪彦とクララはイヴンタイド・オプスに戻った。
仕事部屋で、凪彦は目の前に広がる二つの提案を見つめていた――一つはヴェラディス家から、もう一つはカイン・インダストリーズから。
「クララ」彼は言った。「決断した」
「何を?」
「カイン・インダストリーズと協力する。ただし条件付きで」
「どのような条件ですか?」
「第一に、我々は独立を維持する。彼らに支配されることはない。第二に、我々が同意した契約のみを受ける――強制はない。第三に……」凪彦は微笑んだ。「収入の一部をエヴァンドリア近くの惑星に拠点を築くために使う」
クララは眉を上げた。「まだそれを考えているの?」
「いつも考えている」凪彦は決意に満ちた目でクララを見つめた。「いつか、エヴァンドリアに戻る。そしてその時、自分が家と呼べる場所を持ちたい」
クララは温かく微笑んだ。「手伝うわ、凪彦。あなたが必要とするものは何でも」
「ありがとう、クララ」凪彦は微笑み返した。「さあ、カイン・インダストリーズに回答を送ろう。そして冒険の次の章に備えよう」
クララは頷いた。「あなたの望みのままに、艦長」
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次回 第19話 ーー『帝国領への航路』
次回予告:
凪彦とクララはカイン・インダストリーズからの協力提案を受け入れ、封建帝国の領域への新たな旅を始める。そこで彼らはギャラクシーの貴族制度を直接目の当たりにし、様々な種族や文化に出会う。凪彦はこのギャラクシーが自分が想像していたよりもはるかに複雑であることを理解し始める――政治、陰謀、そして複雑な同盟関係と共に。その一方で、イヴンタイド・オプスに関する情報は拡散し続け、様々な勢力――潜在的な味方も敵も――の注目を集める。帝国領への旅は凪彦とクララに新たな機会と脅威をもたらすだろう。
次章に続く。




