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50.拾い物をしてみよう

 忙しさにかまけてかなり間が空きましたが、アイデアが尽きたとか、やる気がなくなってはいません。

 主人公に感情移入するお話ではなく、自分ならこういうキャラで、こういうふうに関わりたい、と思っていただけたらな、と思いながら毎回書いております。

 

 読んでいただいた方に、何かを残せたなら嬉しい限りです。


 50.拾い物をしてみよう


 雲間から咲きこむ陽の光に、青々と茂った葉の上に乗る水珠が宝石のように輝き、零れ落ちた雫が波紋の和を生み出す。

 久しぶりの水分に、乾いた大地は喜び勇んで我が身へと吸い込ませ、それでも飲み干すことは出来ずに、所々泥濘みや水たまりを描き、残りをゆっくりと飲む事にしたようだった。

 湿った空気が陽光に暖められ蒸し暑くなる前に、葉の先を掠めて抜ける涼風の襟元を撫でる感触に、眉根は不快に寄るどころか心地良さに眉尻も下がる。


 手をかざし空を覆っていた黒雲が、もう次の仕事場へと、急いで駆けて行くのを見送っていると。

 突然の雨音に抑えられていた、鳥の歌や虫の合奏が再開し、目の前に輝き広がる草原へ出てくるようにと、楽しげに誘い掛け。

 思わず駆け出したく成る衝動を、胸いっぱいにすんだ空気を吸い込んで、ゆっくりと吐き出しながら、腹の底へと沈めていく。


 突然の雨に襲われたのが、戦闘中でなく移動中であったのは幸運だった。


 もし戦闘中であったなら、こうして雨宿りなど出来ず、ずぶ濡れになりながら視界の悪い戦闘で、酷く体力と精神力を削られただろう。

 何しろ雨の中での戦闘では、火系の魔法は暴発が怖くて使えなくなる程に、成功判定にペナルティが付き、威力も万全の状態からは見る陰もないほどに、悲惨な代物に成り下がる。

 逆に水系には、成功判定にも威力にもアドバンテージが付くのだが、場所柄今回狩りのメインで狙っているMOBはリーチ――即ち巨大な蛭のバケモノである。


 その為、水系はダメージの通りが悪く、アドバンテージを得ても本来の火系の足元にも届かず、メインで使うべき火系を封じられて……となると、戦闘は長引き予想外の事態やトラブルが起こりやすく、かなり危険な状態と言えた。

 そういった観点から冷静に分析しても、通り雨に振られた時に戦闘中でなかった事は、幸運といえるようだった。


「やはり、シルヴィとPTを組んで動いているときは、ツイている気がする」


 伸びをしただけでなく、そのまま屈伸運動をするのは、青い髪を三つ編みにした長袍姿の青年。

 上背が有り細面の少し線の細い感じはするものの、間違いなく美男子と呼べる青年は、いかにも主人公という風貌、立ち姿でありながら、その特徴的な服には何の装飾もなく、かろうじて袖の折り返しと襟元に白が覗く以外は黒一色と、簡素なデザインと地味過ぎる色合い。

 それが何を示しているかといえば、実に単純明快に、レベルが低いのである。


 端正な顔に貧弱な装備という、駆け出しの頃には誰しも通る道ではあるが、その姿は見る者に笑いを通り越して物悲しさを感じさせた。

 その上、ファンタジーな世界観であるBABELで、中華風な服装といういかにも場違いで悪目立ちする外見とあいまって、嫌でも人の目にも記憶にも止まり、本人の自覚はあまりないが低レベル帯ではなかなか有名人である。

 だが、本人は物悲しさなど欠片も感じていないのか、立ち上がったのと同様大股で元気に、大樹の葉の下から陽光の元へと歩み出て……慌ててその場に身を伏せる。


 雨上がりの泥濘んだ地面で身を投げ出せば、結果は子供でもわかる泥まみれ。


 そのまま首をひねって仲間の方へと顔を向け、掌を下に押すようなジェスチャーを繰り返す。


 彼は確かに一緒にいて楽しい男で、気取ったところもないので二枚目半も演じることは有る、だがこんな喫驚な行動で、無理矢理に笑いを取りに行くような人ではない。

 少なくともPTメンバーには、そう思われるだけの信頼と理解を得ていた。


「……フェイ?」


 控えめに声を掛けたのは、藁沓でも履いていれば雪ん子と言われて信じてしまうほど、周りより随分と小柄で厚着の――此方も同様に簡素な服が余りにも似合わない――美少女。

 フェイと呼んだ青年に近寄って、ミトンを嵌めた手を伸ばすが、そのまま青年に腕を捕まれ、引きずり込まれるよう泥濘みに身体を押さえつけられた。

 一人でやっている分には、どんな奇行でも誰も文句は言わないが、流石に他人――それも可愛らしい美少女――を泥まみれにすれば、残りのPTメンバー達も疑問や確認よりも、感情的に怒りが込み上げて来る。


 だがフェイは真剣な表情で唇の前に指を一本たてて見せながら、その指で前方の一点を指し示す。


 文句を言おうと開いた口は、向けられたあまりに真剣な眼差しに、取り敢えず文句を呑み込みて閉じ。

 少女はずり落ちて視界を塞ぐフードを押し上げながら、真正面の遥か先に何かが動いているのを見つけ、目を凝らす。

 最初はリーチなのかと思ったが、どうもそうではないらしい、双眼鏡を『取り出し』て除いた先には小さな子供がいた。

 白いドレスを来て、銀の髪を陽光に輝かせながら、態々水たまりにむかってぴょーいとジャンプしては、派手に泥をはねてドレスを染みだらけにしている。


「……子供?」


「違うシルヴィ、アレはただの子供じゃない」


 低く抑えられた声色に、何でこんなに遠くにいるのに、小声で話す必要があるのだろう?と疑問を口に出すよりはやく、双眼鏡の先でぴこっと長く尖った耳が跳ね、双眼鏡越しにシルヴィと相手の視線がまっすぐにぶつかった。


「『竜の巫女姫』……マズいです、目が合いましたっ」


 レベルが低いということは、経験値が足りないということである。

 それはシステム的にも、プレイヤーの認識や意識的にも。


「偶然だろ、双眼鏡で見る距離で、目が合ったりするもんかよ」

「フェイが言った通りにツイてんじゃん、捕まえようぜ」

「それより早く立たないと、下着まで泥の染み付いちゃうよシルヴィ」

「ドワーフが土妖精でも、流石に女の子何だから気にしようよ」


 ワイワイと好き放題言いながら、腰を屈めもせずに近づいて来て、どれどれ?と双眼鏡を『取り出し』た残りの四人は、次の瞬間驚きながらも弓を構え、矢をつがえて――腰より上を失った。


「頭が高ぇんだよ頭が、でそっちの二人のそりゃ……あれか?五体投地とかなんとか言う、うちの姫さんに対する敬意と服従の証か?」


 衝撃の光景に目の端が痙攣するのを無理にも抑え、やけにのろのろと上げた視線の先に、豪奢な鬣を靡かせながら、シャラシャラと涼やかな金属音を、全身を飾り立てる豪華装飾品から響かせ、二人を見下ろす巨大な馬が凄んでいた。

 ずどんっと豪太い脚をフェイとシルヴィの鼻先を掠めるよう振り下ろし、二人が手に持っていた双眼鏡を踏み砕きつつ、巨大な馬が違うとわかっている問いかけを口にする。

 こんな状況に放り込まれた時、相手がどんな反応を示すのかを、試して遊んでいるのだ……馬のくせに人が悪い事この上ない。


「八本脚の馬……スレイプニルッ」


 驚愕のあまり思わず口から零れ落ちた言葉に、完璧なドヤ顔を見せつけながら、ライトの口から出てくるのは、あぁ?と言う実にガラの悪い声。


「そーだよ、神馬様だよ?で、お前ぇはなに神馬様前にして、覗き見洒落込んでんだ?」


 神馬と名乗りながら、完全に神々しさも清らかさも母親の腹の中に置き忘れたとしか思えない、べらんめぇ口調で因縁付け始める。

 他の四人は弁明する機会すら与えられず、一瞬で蹴り殺された以上、ほぼ間違い無く自分も殺されるだろう、そう腹を括ると不思議と心は落ち着いた。

 つまり今、目の前にいるスレイプニルは――人語でコミュニケーションが取れ、規格外に強力な為に勘違いしそうになるが――エンカウントしたアクティブなMOBなのだ、と。


 更に言うならば、『竜の巫女姫』の事を『うちの姫さん』とスレイプニルは言った。

 つまり、冒険者が勝手に『竜の巫女姫』と呼称し、シルヴィもそう呼んだ幼女は、スレイプニルと言う人語でを解する神馬にとってすら……姫と呼ぶほどの存在で。

 冒険者……それも低レベルのフェイ達には、見ることすら許されないどころか、視界内で立つことすら不敬と謗られる、遥か天上の住人なのだ。


 今のこの状態は、散々噂に成っていた『竜の巫女姫』関連のイベント。

 その導入部分だろう……と、ライトのお遊びで、完全に誤解したまま納得した。

 

「いい子で此処から立ち去りゃ見逃してやんよ、見世物みてぇに覗いたアホ共より、ちったぁ礼儀もわかってるみてぇだしな」


 さっきの冒険とピクニックを履き違えたアホ共はともかく、こんな貧弱装備の駆け出し殺すの


 弱い者いじめみてぇで……俺様の美学に反するんだよな。


 ☆ ☆ ☆


 一方、正真正銘ピクニックに来ていたベルティータは、水たまりにジャンプする遊び(?)から、既に次の遊びへとうつっていた。


 しゃがみこみ、レースの手袋をはめた手で泥をかき集め、まるまるこねこねと、かき回しこね回し創りだしたのが泥団子。

 完成かとおもいきや、そこに『取り出し』た赤い石を埋め込んで目を作り、ちまい指で線を引いて口を描き、ピンと立った長い耳らしきものをやはりアイテムで作った途端、ファンシーな外見に似合わぬ禍々しいオーラを身にまといつつ、ふわりと浮かび上がった。


 その光景に目をキラッキラに輝かせ、まるまるこねこね、と今度は長く垂れるような耳を取り付けると、此方も禍々しいオーラを放ちながら宙へと浮き上がる。

 三体目の作成に取り掛かろうとしたベルティータをみて、流石に待ったが掛かった。

 このまま放っておけば、ベルティータは飽きるまで際限なく続ける。

 実害は特に無い様に思えるが……発言の主は、ベルティータの行うことが、予想の遥か斜め上の事態を引き起こすと、実体験で思い知らされているのだろう。


「可愛いけど……たくさんは、お世話……するの、大変だよ」


 直接止めるのではなく、一般論を絡めた上で大丈夫?と伺う様な、隣に立つ黒ローブの言葉に納得したのか、コクコクと頷き泥をかき集める手を止め、立ち上がってぐるっと回りを見回す。

 遅れてふわりと長い銀の髪が広がり、それに撫でられた泥ウサギ(?)が、雑な造形はそのままにぱちくりと瞬きし、てててと走りだすベルティータの後を、ふわふわ浮いたままついてまわりだす。


「なんて……デタラメな。姫様は……デタラメ、過、ぎる」


 泥にまみれるのも気にせず、バルダークが膝をついて、本を持っていない右腕で頭を抱えた。


 泥人形が禍々しいオーラを放ち、浮くのまでは……まだなんとかギリギリわかる。

 埋め込んだのが、以前解体した『呪われ装備』の端材で、それ故に『簡易呪物』と化したのだろう……と言う事までは、魔法などというものがあるファンタジーな世界だ、辛うじて受け入れてもいいかと、妥協も出来なくはない。

 埋め込んだのが何の変哲もない、何処にでも有る泥濘みの泥だったのは、むしろベルティータより、そんな物で『簡易呪物』になった方に、お前そんなことでいいのか!?と問いただしたく成るが。


 取り付き、呪いを掛け、対象を不幸へと突き落とす……そんな恐怖と怨嗟を呼ぶ代物が、特別な素材も儀式もなく、スキルによって生成された訳でもなく。

 『呪われ装備』の欠片を埋め込まれたとはいえ――泥団子に子供の落書きのような口を描かれ、耳をつけられただけで、いとも簡単にひょいひょい生み出された。

 とどめが、ベルティータの髪に撫でられた途端、呪物から擬似魔法生物へとあっさり生まれ変わった件だ……ベルティータにその気がなかった以上、彼女が生み出したのではなく、勝手に生まれてきたとしか言い様がないが。


 ……意味が……解らない。


 簡易魔法生物なら、バルダークも創りだすことが出来る、所謂ゴーレムやストーンサーヴァントと言われる代物で、それを生成し使役する魔法も、当然ながら使った事がある。

 それらは、たしかに核となる魔石を利用し、その場に有る土や石を利用して生み出す、擬似魔法生物であり――その説明だけでは、たった今ベルティータがやったことと、同じ事のようにも思えるが――複雑な魔法陣を準備して行う『魔術』、即ちシステム的に実行力を保証された現象であり。

 ベルティータが今やってみせた……と言うよりは、彼女の行動に付随して発生した現象は、バルダークの言うとおり、デタラメでまったく意味が分からない。


 これがバグだというなら、ベルティータの存在そのものが、システムにとってはデバッグ出来ない質の悪いバグだろう。

 イルフィシアはこんなことをやろうと思わない、仮に同じことをやっても、多分こんな結果にはならない。

 うまく言葉にして説明できない部分で、バルダークは確信し、その結果混乱と頭痛がおさまる目処がまったく立たない。


 バルダークが予測し恐れていた通り、予想の斜め上遥か上空の事態を引き起こし、現在の所未だ事態は終息を見せず進行中という有り様で。

 ベルティータただ一人だけが、それが実際はあり得ない現象であることを理解できず、こういうものなんだーと素直に受け入れ、ゲームだからねーと何の疑問も持たずそのまま楽しんでいる、という現状。


 コレこそ、まさに悪夢というべきか……真なる魔法と、呼ぶべきか……悩ましい。


 そんなふうに悩んでいた為に、バルダークはライトの接近を、すぐ近くで声を掛けられるまで気付けなかった。

 それは完全な油断で、いかなピクニックと云えども、ベルティータという超重要人物が近くにいる状況において――原因がその超重要人物による混乱ではあるが――明らかな失態といえた。

 

「遊んでるところわりぃ、見逃してやるからとっとと帰れっつったんだけどよ。コイツらなんか姫さんに、お願いしたいことが有るんだって言い出してな。死に戻りさせちまってもいいんだが……一応確認だけしときてぇと思って。

 勝手にオレ様の判断で殺しちまって、後で姫さんに怒られんの嫌だからよぉ」


 ベルティータが立ち止まり振り向く先には、武装解除され親衛隊の七人に剣を突きつけられた状態の、フェイとシルヴィの二人が両手の平を頭上に上げた状態で、ライトの後ろに立っている。

 ライトの浮かべる申し訳無さそうな表情と対称的に、フェイの顔に浮かんだ表情は確信を得たかすかな笑み、だが隣に立っているシルヴィは怯えと困惑と、三人が三人共お互いの表情を浮かばせる根源の思考に気付けていない。


 両手の指先を頭の上で重ねるようにして、大きな丸を示したベルティータに、ライトが馬の口から安堵のため息を漏らし、バルダークは何かを言いかけて言葉を呑み込み、黙っったままベルティータの左後方へと我が身を移す。

 本来であれば盾に成る可く前方に出るべきだろうが、親衛隊七人に囲まれた相手が何か出来るとも思えず、あえて後方へと控えることにしたのだ。

 その行為により、バルダークにだけ見える物によって、ベルティータの思惑を誰にも気付かれず受けることに成功したのは、偶然とは言え混乱から立ち直る特効薬でもあった。


「さっさと、言って……立ち去るか、死ぬかすれば良い……これ以上、姫様の時間を、浪費させる前に」


 普段のどちらかと言えば、気だるげな声とはまったく違う、闇の奥底から響くような不気味な低い声で、妙に演技がかったバルダークの言葉に、フェイの表情が笑みを深める。


「貴女は、どっちの味方なのか教えてください。王宮内に誰にも気付かれず侵入することが出来るのに、誰一人殺すこともなく済ませた。『アーヴンヘイムの大迷宮』でも今も、実際冒険者を手に掛けたのは、貴女自身ではなく貴女を守るものだ」


 左右に首を傾げる度、銀の長い髪がさらさらと流れ、バルダークに向け人差し指をクロスしてみせた。

 それにやけに大仰に腰を折りながら傅き、バルダークが矢鱈と演技がかった仕草でフェイに向き直ると、再び重々しく口を開く。


「盟友の塒を荒らす、下賎な盗人共が……何故、助けてもらえるなどと……考えるの、やら」


「んだよ、そんなつまんねー事聞くためかよ。事故だろうが何だろうが、姫さんの命狙ったバカ共に、味方なんかするわきゃねぇだろ、頭沸いてんのか手前ぇは?

 敵だの味方だのって、そんなふうに見てもらえると思ってるとか、随分お目出度てぇ頭してんのな。お前達は害虫だ害虫、蚊だの蜂だのがよってくりゃ、叩き落として踏み潰すだろ?それとおんなじだ」


 口汚なく罵ってはいるが、言っている内容はいたって正論、感情的にも心情的にも頷きやすい前半と、とても素直に受け入れられない相手側の認識である後半。

 自分が、ゲームの中だからといって、世界に選ばれた特別な存在でない事も、特別な存在になれない事も既に思い知らされていたが。

 冒険者即ちプレイヤーキャラクター達すべてが、『ただの害虫』呼ばわりされたことに、フェイのみならず隣で聞いていたシルヴィも、強い衝撃を受けていた。


 交渉し味方につけて、闇の軍勢と戦う協力的な仲間として、今度は此方から攻勢を仕掛けるトリガー。


 フェイが考えていたそんな予想はあっさり覆され、だがそれ故にBABELらしいイベントと、納得してしまった。

 ユーザーフレンドリーと対極に位置するBABEL運営が、自分が考えていたような甘っちょろいイベントをするわけがない、と言われてしまえば思わず頷くほどに、今までさんざんやらかしてきたのだ。

 まだ低レベルとは言え、フェイ達も散々その手の噂を聞き、その片鱗を今までそこら中で見てきてもいた。


「オレも仲間に入れてもらえませんか、確かに只の人間で凄い力もなにもないけど……」


 突然そんなことを言い出すフェイを、ライトが鼻で笑い、尻尾で頭をぴしぴし叩いた。


「確かにオメェは、いきなり攻撃しかけようとしたアホ共よりはマシだよ。だがダメだね、動機が『他の奴らと違った事をしたい』なんて、自己顕示欲の塊みたいな奴ぁいらねぇ」


「そんなっ……」


 反発し声が大きくなるフェイを抑えながら、体を入れ替えるように、今まで黙っていたドワーフのシルヴィが、一歩前に出て両膝をつき、ベルティータに視線をまっすぐに向ける。




「仕事を、くれませんか?私達は冒険者なので、依頼人の秘密は絶対漏らしません。

 私もフェイもまだ弱く、それだけに誰の注目も浴びていませんから、多少おかしな事をしていても、警戒はされないと思います。なので多分、お姫様の手が届かない所を、ちょっとだけお手伝いできると思うんです」




 シルヴィのふくよかな笑みに、ベルティータはもう一度両手の指先を頭の上で重ねるようにして、大きな丸を示して見せた。


 2017.10.01

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