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異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第五章「魔法士試験と魔導気象士」

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第98話 魔導気象士


 魔法士C級の登録の日、資格院の受付で、私はまた止められた。


「――レオン殿。職業欄です」


 若い書記だった。彼はもう、私を見ると書類を二枚用意するようになっていた。一枚は通常の登録、一枚は備考用。


「魔法士C級の登録で、職業欄に『魔法士』を追加します。……ですが、システムがもう一つ、表示しています」


 私はステータスを開いた。


【資格シナジー検出】

 『気象観測士(C級)』×『魔法士(C級)』×『気流制御 Lv1』

 = 複合職業『魔導気象士』を解放


「……魔導気象士」


 私はそれを読み上げた。書記も読んだ。彼は王国職業台帳を開いた。分厚い台帳で、革の背が割れている。「ま」の行を指で辿った。


「……ありません」

「……はい」

「『魔法士』もあります。『気象観測士』もあります。ですが、『魔導気象士』はありません。……そもそも複合職業というものが、台帳にありません。台帳は、資格一つに職業一つです」


 彼は台帳を閉じた。革の擦れる音がした。


「……備考欄に書きます」


 備考欄。『分類不能:プロジェクトマネージャー』の下に、『分類不能:魔導気象士』。二つになった。


「レオン殿。……上に聞いたのですが」


 書記は少し声を落とした。


「備考欄の分類不能が二つ以上になった者は、資格院の記録にいないそうです。一人もいません。……上の返答は、『規定がないので、放置せよ』でした」


 放置。


 私は少し笑った。規定がないので放置。それはこの世界で一番誠実な対応の一つだった。嘘をつかれるより、ずっといい。


 学院に戻ると、ヴィルヘルムが廊下で待っていた。

 彼は教本を抱えていなかった。両手が空いている。それを見るのは、これで二度目だった。


「……魔導気象士、と聞いた」

「はい。複合職だそうです」

「気象観測士と魔法士を掛け合わせた職業。……六十年学院にいて、聞いたことのない職業だ」


 彼は廊下の窓の外を見た。遠くに、観測所の丸い塔が見えた。学院の丘からは、屋根の群れの向こうに、頭だけが出ている。


「ドリスに会ったか。観測所の」

「はい。試験官でした」

「あれは、私の同期だ」


 私は驚いた。ヴィルヘルムは笑わなかった。


「六十年前、二人で学院に入った。私は教本を選んだ。ドリスは風を選んだ。……ドリスの報告書を、私は六十年読まなかった。魔法士に天気は要らんと思っていた」


 彼は私の木札を見た。魔法士C級。


「……要ったな」


 それだけ言って、彼は教本のない手で私の肩を一度叩いた。ガルムよりずっと軽い手だった。だが、六十年分の重さがあった。


「魔導気象士。……教本に載せる方法を考える。載せられんかもしれん。だが、考える」


 彼は歩き去った。教本を取りに戻ったのかもしれない。


 その夜、私は板に書いた。『魔導気象士。備考欄、二つ目。規定なし、放置』。

 書いて、その横に、『ヴィルヘルムと、ドリス。六十年』と足した。


 繋がらないことも書く。前世からの癖だ。


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