↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第三章「初級魔法士試験」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/157

第74話 順位表と、二位の隣


 三人の夜は、静かだった。


 実技場の床に、三つの陣。私の、風の煙突。アンナの、手のひらに縮めた、その写し。そして、エルフィーナの――


 彼女の陣は、私のとは、まるで、違った。円ではなかった。木の枝のような、曲線の、連なり。古代エルフ語の文字が、枝の先に、葉のように、ついていた。


「エルフの術式は、描くものではない。育てるものだ」


 彼女は、床の枝を、指でなぞった。


「五百年、同じ形を、身体に刻む。刻んだ形が、魔力の通り道になる。私の炎は、この枝を、通って出る。……だから、私には、お前の三角形が、なかった。枝には、空気の通る場所が、ない」


「作れますか。枝に、空気の通り道を」

「作っている」


 彼女は、枝の、根元に、新しい線を、書き足していた。曲線。下から、上へ。


「気に入らん。五百年の形に、人間の理屈を、継ぎ足している。祖父が見たら、卒倒する。……だが、継ぎ足せる。継ぎ足せるということは、この枝は、完成していなかったということだ」


 彼女は、木炭を、置いた。


「三千年、完成していると、思っていた」


 その声には、怒りも、悲しみも、なかった。ただ、事実を、確かめている声だった。私は、何も、言わなかった。言えることが、なかった。


 アンナが、自分の陣の前で、蝋燭を、灯した。風を、流した。炎が、伸びた。彼女は、それを、毎晩、五十回、繰り返した。五十回目に、炎の揺れが、少し、減った。


「レオン。一つ、聞いていいですか」

「ああ」

「レオンは、なんで、私に、これを教えたんですか。……順位表で、私が上がれば、レオンの二位が、危なくなるのに」


 私は、少し、考えた。考えて、本当のことを、言った。


「俺一人が、二位でも、証明にならないからだ」

「証明?」

「俺の魔力は、資格で、増えた。特別なんだ。だから俺が二位でも、『あいつは特別だ』で終わる。……魔力四のアンナが、十二位になって、初めて、『空気だ』が、証明になる」


 アンナは、蝋燭を、見ていた。


「……私は、証明の、道具ですか」

「――違う」


 思ったより、強い声が、出た。自分でも、驚いた。


「違う。証明は、ついでだ。俺は、アンナが、治癒士になれるかどうかを、知りたかった。魔力四で、なれるかどうか。……なれないなら、この学院の、平民枠は、屋根裏の、飾りだ」


 実技場が、静かになった。エルフィーナが、枝の前で、手を、止めていた。


「……飾り、か」


 彼女が、呟いた。


「人間の制度は、腐っていると、祖父は言った。腐臭を嗅ぎに来た。……腐臭ではなかった。飾りの匂いだ。飾りは、腐らない。腐らないから、誰も、捨てない」


 彼女は、枝の根元の、新しい線を、木炭で、太くした。


「捨てさせるには、飾りではないことを、証明するしかない。お前の言い方を借りれば、な」


 その夜、順位表とは、別の、紙が、実技場の壁に、貼られた。ヴィルヘルムの字だった。


『初級魔法士(D級) 学院内検定 二週間後。全一年生、受験のこと。受験料、学院負担。課題、「炎の維持」』


 炎の、維持。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。