↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第二章「魔力八の壁」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/152

第67話 酸化の魔法陣


 その夜から、実技場の床が、私の板になった。


 木炭で、床に、術式を、書く。この世界の術式は、魔法陣である。円と、線と、古代文字。魔力を、どこに流し、どこで、何に変えるかを、図形で、指定する。教本の火魔法の陣は、単純だった。円の中心に、魔力を流す。中心で、炎に変わる。それだけ。


 私は、その陣の、外側に、もう一つ、円を、書いた。


「外の円は、風の陣だ。……ただし、風を、前に吹かせない。下から、上に、吹かせる」


 エルフィーナが、床の陣を、見下ろしていた。アンナが、その隣で、木炭の粉で、手を黒くしていた。


「風を、上に? 炎を、上に、吹き飛ばすのか」

「違う。炎の、下だ。炎の根元の、少し下に、風の出口を作る。風は、炎の下から、上へ、抜ける。抜けるとき、炎を、通る」


 私は、内側の円と、外側の円の間に、線を、引いた。線は、下から、上へ、向かっていた。


「煙突と、同じだ。囲炉裏の煙が、屋根の隙間から抜けるとき、下から、風が入る。囲炉裏の火は、その風で、燃える。煙突を、高くすれば、火は、強くなる。……この陣は、炎の周りに、見えない煙突を、作る」


「煙突……」


 エルフィーナは、陣を、長いこと、見ていた。それから、しゃがんで、外側の円の、古代文字を、指でなぞった。


「この文字が、違う。人間の風の術式は、『押す』風だ。エルフの風は、『流れる』風だ。……ここは、流れる、にしろ」


 彼女は、木炭を取り、文字を、一つ、書き換えた。私には、その文字が、読めなかった。古代エルフ語。図鑑の『古代エルフ語通訳士』の頁を、私は、まだ、開いたことがなかった。


「……ありがとう、ございます」

「礼は、いい。動いたら、言え」


 私は、陣の、中心に、立った。手のひらを、下に向けた。詠唱。教本の、火の詠唱に、エルフィーナが書き換えた、風の一語を、繋いだ。


 魔力が、流れた。


 内側の円で、炎が、灯った。蝋燭だ。いつもの。


 外側の円で、風が、動いた。床から、上へ。炎の、根元を、通って。


 炎が、伸びた。


 蝋燭が、拳になった。拳が、私の顔の高さまで、伸びた。伸びて、揺れて、それでも、消えなかった。実技場の天井に、炎の影が、揺れた。


 アンナが、後ずさった。エルフィーナは、動かなかった。動かないまま、目だけが、炎を、追っていた。


 私は、魔力を、止めた。炎が、消えた。ステータスを、開いた。


MP:11 → 8


 三。消費魔力、三。蝋燭と、同じ。


 同じ魔力で、炎は、五倍だった。


「…………」


 誰も、何も、言わなかった。木炭の陣が、床で、黒く、静かに、あった。


「もう一度」


 エルフィーナが、言った。声が、少し、掠れていた。


「もう一度、やれ。……今度は、私が、風の陣だけ、動かす。お前は、火だけを」


 私が、蝋燭を、灯した。彼女が、風を、流した。炎は、また、伸びた。彼女の風は、私のより、滑らかで、炎の揺れが、少なかった。


「お前の風で、五倍。私の風で――」


 彼女は、自分の炎を、灯した。九十五の、魔力の炎。的が、消滅する、あの炎。彼女はそれを、蝋燭ほどに、絞った。絞って、自分の風を、流した。


 炎は、絞った状態から、私の顔の高さを、超えた。天井に、届いた。


 消費魔力、二。測定器が、そう告げた。


 エルフィーナは、手を、下ろした。天井の焦げ跡を、見上げた。見上げて、長いこと、黙っていた。


「……気に入らん」


 彼女は、それだけ、言った。言って、床の陣の隣に、しゃがんで、自分の木炭で、陣を、書き写し始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。