↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第五章「銀のスライム亭」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/156

第50話 下水口の落書き


 東三番通りの、溝の掃除役は、五日で、路地の全部に、広がった。


 子どもたちが、手伝った。泥食いスライムを、溝の底から、素手で――私が『魔物鑑定Lv1』で毒なしを確かめたものだけ――拾い、私が指定した場所に、放す。草の束を、置く。ルナが、一番、上手だった。彼女は、スライムを、怖がらなかった。


 三日で、路地の匂いが、消えた。マーサの店の客が、増えた。「あの通り、臭くなくなったな」と、荷運びの男が言った。


 問題は、溝の、行き先だった。


 東三番通りの溝は、路地の外れで、石造りの、大きな下水口に、流れ込んでいた。上町の、石造りの下水路の、末端である。上町の汚水は、この下水路を通って、下町の外れに、吐き出される。吐き出された先が、東三番通りの、その先の、窪地だった。


 その窪地が、この一帯の、匂いの、本当の源だった。


「あそこは、無理だよ」


 ミラが、言った。


「上町の下水が、全部、あそこに来るの。女将さんが、子どもの頃から、あそこは、ああだって」


 私は、下水口の前に、立った。


 石造りの、アーチ。大人が、屈めば通れる。中は、暗く、そして、匂いは、溝の百倍だった。私は『危険気体察知Lv1』を、意識した。下水清掃士の教本にあった、悪い空気。火をつけたぼろ布を、先に。私は、ダグの答案を、思い出した。


 ぼろ布に、厨房の火を、移した。アーチの中へ、棒の先で、差し入れた。火は、消えなかった。


「入る」

「……レオン、それ、駄目な気がする」

「五匹、放してくる。下水口のすぐ内側に。それで、窪地に流れる前に、少しは、食ってくれる」


 私は、アーチを、屈んで、潜った。


 中は、思ったより、広かった。石を、綺麗に、積んである。ハルムの井戸の石より、ブレナの領主庁の石より、精密だった。天井は、丸く、アーチを描き、壁は、湿っているが、崩れていない。何百年も、前に、誰かが、ここを、作った。


 私は、五匹を、放した。放して、立ち上がり、ぼろ布の火を、壁に、近づけた。


 壁に、字が、あった。


 石に、刻んだ、字。苔と、汚れで、半分、埋まっている。私は、袖で、それを、拭いた。拭いて、火を、近づけて、読んだ。


 読めた。


 読めたことに、私は、その場に、膝をついた。


 この世界の文字ではなかった。古代エルフ語でもなかった。ハルムの村人が読めず、ブレナのヘルガが読めず、資格院の書記が読めない、文字。


 日本語だった。


 漢字と、仮名で、こう、刻んであった。


『ここは俺が作った。 ――ハル』


 ぼろ布の火が、揺れた。


 私は、その八文字を、何度も、読んだ。何度読んでも、日本語だった。私の、前世の、母語。この世界に、私以外に、それを読める者は、いないはずだった。書ける者も。


 いた。


 いつか。ここに。上町の、石造りの下水路を、作った、誰か。「ハル」と、名乗る、誰か。


(神様は、俺を、「今度は」と、言った)


 白い空間の、去り際の、声。「今度は、ちゃんと水洗いしなさいよ」。今度は。あの言葉を、私は、フグのことだと、思っていた。


 今度は。前回が、あった。


 外で、ミラの声が、した。「レオン! 大丈夫!? 火、消えてない!?」


 私は、立ち上がった。字を、もう一度、見た。そして、袖で、もう一度、拭いて、苔を、落とした。誰にも読めない字だ。だが、私には、読める。それを、残しておきたかった。


 アーチを、潜って、外へ出た。ミラが、心配そうに、私の顔を見た。


「……何か、あった?」

「字が、あった」

「字? 読めるの?」

「読める。……読めるんだ、俺には」


 ミラは、首を傾げた。私は、それ以上、説明できなかった。説明する言葉が、この世界には、まだ、なかった。


 夕暮れの、東三番通り。溝の匂いは、消えていた。路地の壁際で、ルナが、椀を、抱えていた。椀の底に、木炭で、拙い字が、書いてあった。『ルナ』。三日目の、ミラの字だった。


 春期最終週まで、あと十二日。気象観測士。三千G。


 そして、あの八文字。


 私の第二の人生の、最初の春が、終わろうとしていた。保有資格、五。冒険者ギルド、F級。分類不能の職業、一。読めるはずのない字、八文字。


==================================================

【人生ステータス】(第一部終了時点)

名前:レオン・シラハネ  年齢:15歳  種族:人間

Lv :8  職業:剣士見習い/村人/清掃員/プロジェクトマネージャー

HP :96 / 96  MP :20 / 20

【基本能力値】

筋力:16 / 敏捷:13 / 魔力:8

知力:37 / 魅力:9 / 運 :14

【保有資格】5 / 12,000 + 冒険者ギルド登録(F級)

 村人E/雑草判定士E/剣士D/下水清掃士E/スライム鑑定士E

【固定スキル】資格神の祝福/資格図鑑/試験分析EX

【ギルド認定】動物語通訳(見習い)

【習得スキル】剣術Lv2/受け流しLv1/後の先Lv2/物理予測Lv3/動物語Lv1

 消毒Lv1/危険気体察知Lv1/鑑定Lv1/毒草判定Lv1/魔物鑑定Lv1

 農事暦Lv1/計画立案Lv1/記憶強化Lv1/学習効率向上Lv4/試験集中Lv5

【複合技能】環境管理(中級) 【称号】畑の見張り番

【人生評価ステータス】

挑戦力:42 / 共感力:15 / 幸福度:36 / 社交性:6

==================================================


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。