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異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第四章「王都への街道」

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第39話 受験料一覧表


 王立資格管理院の受付は、上町の門の手前、二重目の城壁に接した石造りの広い建物にあった。


 下町の側から、受験者はここに来る。上町へ入るには、通行証が要る。だが受付は、下町の側に口を開けていた。合理的だ、と私は思った。受験料を取る口は、金を持って来る側に、向いている。


 建物の正面に、巨大な板が掲げられていた。


 黒く塗られた板に、白い文字で、資格の名と、受験料と、試験日が、びっしりと並んでいる。図鑑の一覧を、そのまま壁に貼ったようなものだ。だが、図鑑と違って、この板には、人だかりができていた。受験生が、板を見上げ、指を折り、ため息をつき、あるいは、黙って去っていく。


 私も、見上げた。


【王立資格管理院 春期試験 受験料一覧(抜粋)】

 剣士(D級)        3,000G

 初級魔法士(D級)    6,000G

 魔法士(C級)      15,000G

 商人(C級)        12,000G

 簿記士(B級)      80,000G

 治癒士(B級)      80,000G

 魔導会計士(A級)    500,000G

 王国公認会計士(S級)…… 3,000,000G

 勇者(S級)        3,000,000G ※志願者募集中

 ―――――――――――――

 下水清掃士(E級)    500G

 雑草判定士(E級)    500G

 スライム鑑定士(E級)…… 500G

 農業士(C級)      15,000G ※志願者募集中


 魔法士C級。一万五千G。


 懐の中の、三千二百G。指を折るまでもなかった。五分の一。


 勇者の三百万Gの横に、「志願者募集中」と書いてある。農業士の横にも。募集しなければ、誰も来ない資格。その隣に、三百万払って受ける会計士の行があり、そこには「募集中」の文字はない。


 板の下で、若者が二人、話していた。


「魔法士、受けんの?」

「無理だよ。予備校の講座代で、受験料が消えた。……来年、二万になる前に、って思ってたのに」

「うちの村、こないだ領主庁が試験やめたからさ。ここまで来るしかなかったんだ。来ても、これだもんな」


 彼らは、去っていった。板を、もう一度、見上げてから。


 私は、しばらく板の前に立っていた。


 前世で、私は、受験料で試験を諦めたことがない。高い試験もあった。だが、一か月分の食費を削れば、届く額だった。届く額の試験を、私は「難関」と呼んでいた。


 この板の前で、「難関」の意味が、変わった。


 問題の難しさではない。受験料を払えるかどうか。ヘルガの言った「学ぶ機会そのものが、金で、消える」が、ここでは、黒い板と白い文字で、堂々と掲示されていた。


(……それでも、取る)


 私は、下の段を見た。五百G。E級。


 三千二百Gで、E級なら、六つ受けられる。E級の資格は、番付の下の段にすらない。「取っても意味がない」と、下町の子どもですら言うだろう。


 だが、天からの光の量は、E級もD級も同じだった。私は、それを、ブレナの広間で知っている。そして――と、私は板の隅の『スライム鑑定士』を見た。合格率、八十一パーセント。試験内容、「スライムの種別と毒性の判定」。


 下町の溝には、スライムがいた。門を潜ったとき、溝の底で、半透明の塊が、ゆっくり動いていたのを、私は見た。


(E級を積んで、資格の数を増やして、その資格で、金を稼いで、C級の受験料を作る)


 前世で、資格手当を積み上げて次の受験料にしたのと、同じ理屈だ。遅い。だが、届く。届くなら、やる。


 板を離れ、受付の列に並ぼうとして、私は、足を止めた。列の先の受付の窓口に、見覚えのある顔があったからだ。


 髪をきつく後ろで束ね、袖を肘までまくった、四十がらみの女。


 ヘルガだった。彼女は、昨日ブレナで別れた時と寸分違わぬ手つきで、受験票を検め、金額を声に出し、帳簿に書いていた。ブレナからここまで、彼女は、私より早く着いていたのだ。


 目が合った。彼女は、ほんの一瞬、羽根ペンを止め、それから、何事もなかったように、次の受験者を呼んだ。


 列は、長かった。三日待ち、とガルムは言っていた。私は列の最後尾に、並んだ。


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