↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第四章「魔物調理師試験と、スープ一杯」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
136/152

第136話 毒腺を可視化する


 目を閉じたまま、私は板を思った。


 『毒判定Lv1』。衛生管理士で得たスキルだ。私はそれを解体場の山の部位に使ってきた。毒の強さを木札に書くために。毒の「有無」と「強さ」を判定するスキル。


(……位置は、判定できるか)


 使ったことはなかった。毒が「どこにあるか」を判定したことは。使う必要がなかった。山の部位は丸ごと、毒か毒でないかだ。


 だが、肩肉は違う。肩肉の大半は毒ではない。毒は糸二本分の腺の中だけにある。

 毒の「どこにあるか」が分かれば――


 目を開けた。


 肩肉を見た。


 見えた。


 淡い線だった。赤い、細い線。肩の骨の下から筋の間を斜めに、首の付け根へ。二度、曲がって。

 ドルフの左手の絵と同じ形が、肉の上に浮かんでいた。私にしか見えない線だ。『毒判定』が、毒の濃い場所を赤く示していた。


 壁は見えなかった。壁は糸の皮ほどだ。だが、線の縁は見えた。赤が途切れる場所。そこが壁の外側だ。


 包丁の刃を、その赤の途切れる場所に当てた。


 触って当てるのではない。見て当てる。

 触った位置と見た位置が重なった。二十日と一瞬が、重なった。


 右手は震えていた。


 三分。残り、七分。


 貴族商会の料理人たちは全員終えていた。彼らは手を拭いて、私を見ていた。予備校の受験者も半分は終えていた。汚染した者も、していない者も。


 私だけが、まだ刃を当てているだけだった。


 試験官が私を見た。魔導ランプの脇で。

 彼の目は私の震える右手を見ていた。この手は、二か月の間、切る時はずっと震え続けている。


(……震えを、止めなくていい)


 板の言葉。ドルフの言葉。ミラの包丁の音。


 止まらないなら、止まらないまま使う道を探す。


 私は息を吐いた。吐きながら、右手の震えを見た。

 震えは小さく、速く、上下に動いていた。刃が壁の外側に当たって、離れて、当たって、離れて。一ミリより大きい幅で。


(……この動きは)


 私はそれを見た。刃が上下に震えている。それは震えだった。だが、別の言い方もできた。


 刻んでいる。


 鋸のように。刃が小刻みに上下している。一ミリより大きい幅で上下している。

 だが、その幅は「刃が肉に入る深さ」ではなかった。「刃が肉の上で動く速さ」だった。


 深さを一定に。動きを震えに任せる。


 震えを、刻む速度に変える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。